僻みに対しても適切な応対をする幼なじみのユウリはやっぱり大人だなあ、と感慨に浸るばかりだ、僕は
自転車で駅を出発してから1時間近くかかってようやく目的の護国八幡神社に着いた。神社の鳥居の近くには駐車場と一応食堂謙売店があり、店員も2人いる。2人とも女性。それで2人ともかなりの年配。
「いらっしゃい、ようこそ」
「こんにちは」
店員から声を掛けられ、社交的なユウリがソツなく応対する。僕は会釈だけする。
「高校生? 修学旅行、じゃないわよねえ」
「隣市のセタ高校です。学校帰りに寄りました。一度参拝しようって思ってたもんですから」
「そう。ようこそお参りくださいました。最近じゃ地元の氏子さんたちでさえあまりお参りくださらないものですから」
「あんたら、散策コースで変なことするつもりじゃなかろうね」
もう1人の店員も店から出てきてこんな意地悪なことを言う。
「いいえ。わたしとこの子はただの幼なじみでそんな変な仲じゃありませんから。それに、神聖な場所でそんなことしちゃダメだってぐらいの常識は持ってますので」
「ふん。この間なんか、お社の横でちちくりあっとったから、どやしつけてやったよ。罰当たりが」
「そうですか。散策コースって結構長いんですか」
「往復で4kmほどだね」
「わかりました。ありがとうございます」
僕とユウリの自転車を駐輪スペースに停めて売店を離れた。
「はあ。年取ると僻むもんなんだねえ。わたしも気をつけよっと」
そう言ってユウリは店に入って行く毒舌店員の背中に、いーっ、と舌を出した。