事実、現実、疑いないってことを別に誰にも証明できなくってもまあ構わないよ、ユウリと僕は分かり合ってるから
気がついたら、というんじゃない。
僕とユウリはさっきまでの光景をはっきりと記憶しており、ごうっ、という竜巻の音がする前の瞬間と後の瞬間との連続性をちゃんと認識している。
夢オチなんかではあり得ない。
「ヒロオ、臭い」
「あ・・・ごめん」
僕はゲロの匂いが染み付いたTシャツをユウリの前で脱ごうとした。
「だからそれはセクハラだって! いいよ、脱がなくても」
「うん」
僕とユウリは石段を登り切った護国八幡神社の境内の石畳にいた。立って石段の下を見下ろすと、麓に売店が見えた。
散策コースを通ってここまできたはずだったけれども、実際には売店からすぐに石段を登る位置関係だった。散策コースは社殿の背後から続いている。
「お参りしよう」
「・・・そうだね」
僕とユウリは並んで社殿に進み、お賽銭を入れた。
鈴を鳴らし、二礼二拍手する。
『南無八幡大菩薩』
心の中で僕らは唱えた。
『あなた様のご意向のままに』
ディーゼル電車に乗り込んだ後、僕は、あっ、と声を出した。
「ど、どうしたの?」
「jdに会わなきゃ」
「jd?」
「女子大生」
すぱん、とユウリが僕の後頭部をはたく。
「この、腑抜け男子が!」
「ち、違うよ。ガトリングコミッティー・ストライクス・アゲインの作者に僕らの見たことを伝えないと」
「ん?・・・」
「ほら、彼女はもう、『タイシとシナリ』ってタイトルで小説の構想を練ってるんだよ! 早く事実を伝えてあげないと」
「あ・・・そっか」
「『殴ってごめんなさい』は?」
「ほんとにごめん」
「心がこもってないなあ」
「っていうか、わたしもjdに会うからね」
「え? なんで?」
「よその女と不用意な接触はさせらんないから」
「さっきまでの意思強固な僕を見てたでしょ?」
「異世界の虚構だったかもしんない」
「この・・・ゲロ、擦り付けるぞ!」
「わー、やっぱりゲロオだ!」
「うるさい、黙れ!」
「臭いから、蓋をしよう」
意味不明だけれども、そう言ってユウリは僕の唇を齧る真似をした。
おしまい




