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穏やかな日常と悲惨な光景

「遅刻。」

「ご、ごめんなさい。」

我が妹のせいで僕は幼馴染みである藤堂 千冬ーとうどう ちふゆーの前で正座をさせられる羽目になった。因みに下はアスファルトである。小石がめり込んで地味に痛い。

「はぁ。また、妹さん?」

「えっと、寝坊しただけだよ。」

「ダウト。」

あっさりと看破されてしまった。千冬に対して嘘をついてもすぐばれてしまう。何故だろう?

改めて目の前の幼馴染みを見る。

小柄な体躯。薄い水色の髪。キリッとした瞳は眼鏡越しから僕を見つめている。怒っているからか眉が僅かに上がっているけどそれ以外は感情を感じさせない。彼女は幼い頃から感情表現が苦手だ。そのせいで周りから冷たい印象を持たれているらしい。本当は優しくて面倒見の良い女の子なんだけどなぁ。

「何?」

「え?」

「人の顔をジロジロ。」

「あ、ご、ごめん。いや、今日の服装可愛いなぁって思っただけだよ。」

「そう。」

千冬の服装は空色のワンピースだ。普段はもう少しカジュアルな服装だけど。

「行こ。」

「そうだね。今日は何を買うんだっけ?」

「色々。」

「なるほど。」

お分かりかもしれないがこれはデートなんかではない。僕は荷物係として誘われただけだ。妹はデートと勘違いしてるらしいけど。

「ん。あれはー」

何か興味を引かれたのか千冬が近くの店へ向かっていく。僕はその後をついていく。



二時間後ー

「ん。いっぱい。」

「そうだね。」

僕の手には紙袋が5つと袋が5つ計10袋の荷物を持っている。これまた大量に買ったものだと感心する。

「重い?」

「大丈夫。結構鍛えてるから!」

「・・・知ってる。」

千冬が目を伏せる。どうしたのかと思っているといきなり顔を上げて抱きついてきた。驚いて荷物を落としそうになった。

「ど、どうしー」

最後まで言い切れなかった。彼女の悲しげな瞳に言葉を奪われてしまった。

「あまり、無茶はしないで。」

「っ。」

彼女は僕の持つ『異能』を知っている。だからこそ無茶はするなと釘を刺して来たのだろう。僕は笑いかけて大丈夫だと告げると歩き出す。そうそうあんな事は起きないー

「ぐっ?!」

そう思っていると左目に痛みが走った。まさかと思い目を閉じる。


見えてきた光景は悲惨なものだった。

僕たちの居るデパートが火の海になっている。

周りには幾つかの遺体が転がっていて僕の目の前では見知った少女が屈強な男に組み敷かれて犯されている。千冬だ。そして、男はゆっくりと手に持っていた斧で彼女の顔を潰した。何度も何度も。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も潰した。

一瞬、意識が薄れて僕は現実に戻った。びっしょりと汗をかいていた。僕は歯軋りをして不安そうな顔をしている千冬を見る。

この子を死なせない僕は密かに決意を固めていた。

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