妹のイタズラ
体が重い。目が覚めて初めての感想がこれだ。何か通常の2割増しで重い。主にお腹の辺りが。薄目を開けて原因を探ると視界にはピンクの御下げをフリフリと揺らしながら此方をご機嫌そうに見ている我が妹の姿が。ああ、嫌な予感がひしひしと。この子がご機嫌な時は大抵ろくな事がないのに。
「あーおはよ。心結ーみゆー。出来ればお腹から退いてくれないかな?」
「おはよーだゾお兄。出来ないから退かないゾ。」
「いやいや、出来ないわけないでしょうが。はい、退く。」
心結の小柄な体を持ち上げ床に下ろす。再び登って来る前に起き上がり目覚ましを見る。9時15分。はて、何か忘れてるような?今日は祝日で学校は休みだし。首を傾げていると妹がパジャマの袖をくいっと引っ張った。視線を向けると可愛らしい八重歯を覗かせて笑いながら告げる。
「お兄、冬姉との約束は?」
血の気が一気に引いた。今、鏡で自分の顔を見たら真っ青になっていることだろう。
「あぁぁぁあ!!」
完全に忘れていた。いや、しかし、昨日確かに目覚ましをセットしていた筈!そこでふと気づいた。ま、まさか、まさか!
「心結?」
「ふふふ。」
やりやがったこんちくしょう!
「と、取りあえず着替えるから部屋を出て!」
「ん?ここでじっくりと監察するゾ。」
「何でさ?!」
「それは私がお兄にゾッコンLOVEな変態だからだゾ。」
思わず頭を抱えていた。この妹、成績も運動も優秀だが欠点を抱えている。それは超絶なブラコンとイタズラ好きだと言うことだ。特に僕に女の子が関わってくると悪化する。幼馴染みでさえこれだ。見ず知らずの女の子ならもっと酷いことになっている。
「あーもう!じゃあ、見ててもいいから邪魔はしないで!」
「勿論だゾ!お兄の生着替え、はぁはぁ!」
どうしてこんな変態に育ったのか。今は亡き父とグータラな母に尋ねたい。
一悶着ありながらも僕は約束の場所へと向かう。
この先に僕の運命を変える事件が待っていることを知らないまま。