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入学式

『生徒の皆様は、学年、年齢に関係なく運動場に集合してください。まもなく入学式を開催します。保護者の方は、観覧席へ移動してください。繰り返します』

 入学式は小中高を含めこの学校の伝統である運動場で行われた。

小中までの校舎は運動場を中心に東に位置し、北には学食や売店、体育館などの特別教室が設けられている。

西には高大の校舎が設けられていて、南は本稿の特徴である、共通学年の学びやがあり、レクレーションセンターや案内、もろもろの設備が充実している。広さや利便の多様性は一番充実している。入り口もここで、より一般の方に近い位置を内実ともに取っている。

ちなみに、校舎の周りは広大な土地で囲われ、緑を基調に広場、農場が運営されている。

 能力者のランクは希望により学年を変更できる試験を受けることで調整を図ることができるように、多様な活かし方を模索するために、単発的なイベント授業なども行われている。

 このようなことは、生徒を尊重して行われるが、入学式なども生徒主体だ。

よって活躍するのは生徒会という図式になる。

 さきほどからアナウンスがな鳴り響いているが、これは生徒の声だ。

 運動場は広く、一個のドームほどの広さがあり、生徒も多い。

 集合した生徒は、おおむね中心に集まるようにしているがちらほらと、保護者や報道関係者も目立つ。

 蒼白第一高校の知名度はそれほどに高い。

「ふぃ=・・・」

 ノートパソコンと旧時代のPCを開いている瑠璃は、人目をはばからずため息をついている。

 運動場の図がスクリーンに映し出され、瑠璃の能力によって参加者、それ以外で色分けしてある。

「そろそろね」

 生徒会ようのテントで最前列に並ぶ、いかにも気が強く足を組み、リーダーですって体の生徒会長、鈴木明日香も気を高めている。

 長く美しい蒼色の髪は一つに結ばれ、普段とちがうここぞという結びに変えていることからも、周りのメンバーにも伝わっている。

「瑠璃。どう?」

 そろそろ開会式を始めるという意味合いだ。

「更新しますぅ」

 と、言う。瑠璃。

 意識を集中させPCを覗き込み、出力。スクリーンに映し出された数を、再度計測するPC。

「新入生、参加者予定数は確認できました。配置できます。ただ、在校生が一名、そのぉ遅刻していますぅ」

 誰といわれるまでもなく、知っていたのは秘密だが、誰と言われ素直に答える。

「神楽夜レンさんですぅ」っぽ

・・・やれやれとどこがいいんだあんなやつ・・という雰囲気が生徒会メンバーを包む。

さすがの明日香も気づくところだ。

『暗いし、口下手で人を避けるような異常な格好、わざとやっている猫背に成績は優秀と勘にさわる意味不明なキャラ設定。成績だけでいきていけるとでもいうの?ったく、どこがいいのよ』

「はい?」

「なんでもないわ、ったく、はじめられないじゃない!」

 ガンっ!と机を叩く明日香。

 能力を使っていない、机も壊れていないが振るわれた時の惨事を一度は目にしている生徒会メンバーは思った。

「「「「「はやくこいよぉおお!」」」」」


レンのそのころ。

「あの!あ、ありがとうございました!!」

「いえいえ!」

「あ、あのわたしはその!」

「えっとそっちの子に聞いてね!ごめんね!」

「「「あ!!!」」」

 ふぅ、なんだ!みんなもう運動場見えてるのに!


「やばい。遅刻しそう!!今日に限ってやけに声かけてくるんだもん! 新入生だから無視するわけにもいかないし! 在校生代表として!」

 ちょっとしたことでも人を避けてきたレン。これまでに声をかけられることもなかったことが、今日はかなり声をかけられた。

 それも嫌な感じではなく、普通に。それがこんなに嬉しい!・・・とまではいかないが、無意識に心を弾ませているのは認識していたが、調子に乗った。

 明らかに在校生もいたのに教えてあげるのは、時間のロスだった気がする。

 走りこんで運動場にはいったときはちょうど開始時刻!

 礼先生がほっとしてるかな・・・いや怒ってるな。10分前って言ってたからなぁ。




「まだなの?時間になったらはじめるわ。・・・もし来なかったら、在校生代表挨拶は、瑠璃がしなさい」

「ふぇ!?」

「原稿はあるっす!」

「冗談よ」

「あ!! きましたぁ!レンさんだと思います!」

「思うじゃなくて、まさかの最後の入場者とか、なめてるわね。礼・・・はじめて」

「はい、お嬢様」

「こ、これより照合を開始し転送開始しますぅ」

「瑠璃ちゃんのおかげで助かるわ、どうしたの?」

「い、いえぇ」

 言葉だよ!てのはいえないメンバーだ。

 礼の黒髪がふわりと持ち上がっていく。

 転移の能力者。ランクSの実力が見れるメンバーが息を呑む。

それを当然というように目もくれない明日香はまっすぐ生徒を見ていた。

 というのも・・・・

「うわぁ!」

「え!?!?」

「こ、これが転移・・・・すごいぃ」

 運動場にただ集まっただけの生徒がいっせいに強制整列させられている。

 生徒も、観覧席の保護者もみなざわつくのもしょうがない。

 ただし、それを許さないのが・・・同じくSランクになった鈴木明日香だ。

「みなさん・・・」

 一言、それは妙に静かで力強く、物理的に両頬を掴まれたような感覚。

 鈴木明日香は強化系の能力者だ。なのに、言葉には明確に他能力者にはない、力がこもっていた。

 明日香自身、明確にはそれを知らないのだが、こういう本番になるといいほうに作用するとは自覚している。

 皆が皆、一様に明日香に捕らえられていた。

「入学、そして、進級おめでとうございます。蒼白第一高校、生徒会長、鈴木明日香です。本校の入学式は生徒の尊重を促すために生徒だけで行っています。式自体は、わたくしからの入学式の宣言もとい生徒会長よりの祝辞と在校生の歓迎の言葉、最後に新入生代表による挨拶で終了と短いです。こんなに楽な式はないでしょう? 整列までしてもらえるなんて。何より、校長や理事、来賓そんなありがたいお言葉はないのですから。あ、これは失言ですね。皆さん、私がミスをしたのですから、楽にしてください」

 言われてどうかと・・・皆、気づけば固まっていたことに気づく。

 少し緩やかな空気が流れ始めて、明日香は顔を厳しくさせた。

「祝辞。生徒となった皆さん、誠におめでとうございます。この数分で感じた驚きと開放感ともにあなたがたの努力によって勝ち取ったものと信じています。しかしながら、わたしからの祝辞は、厳しさです。

 この式には椅子がありません。

 天井がありません。

理由は二つ。椅子に座る余裕がないときにできた学校であるため。

もう一つは、精神的自立のためです。

パンフレットに書かれているのは、いち早く学校として優遇されただの、伝統の青空の下で可能性を・・・などと書かれていますが。それは成功したものが振り返って書いたものです。今からあなた方が感じることは、ただただ、井の中の蛙、天の高さを知る。その希望的な言葉ではなく絶望的な差。そして己の小ささ。狭き門の本当の意味です。

 皆さん、忘れないで下さい。今のこの私の辛らつな言葉を。

 そして思い出してください、今、あなたたちは、ここにたっています。

 努力されてきたと思います。

 ここからは自分で立ち歩き始めます。

 誠におめでとうございます。

あたたちが今、生まれた赤子の様に、ひたすらにできうることを求め、立ち、立派な人になることを願いまして。わたしの祝辞とします。厳しいことを言いましたが、簡単なことです。苦難をものともせず楽しんだり、泣いたり、とにかく本気で頑張りましょう」

 明日香はそこまで言うと一礼し、今日はじめての心からの笑顔を送る。

 生徒会メンバーがそれを合図に、おめでとうの花火をあげる。

 一気に歓声をあげる生徒、さすがとうなる来賓席に保護者。

「お嬢様素敵です!!」

 礼も立場を忘れ、式を盛り上げて、開会した。




「打ち合わせとちがう、いや、違わないけどひどすぎる。去年の参考にならないんじゃ・・・。いきなりハードル上がった」

 在校生代表挨拶。代表、神楽夜レンは、顔が引きつるのをどうにか手で押さえる。

 ただでさえ、自分の前に並ぶおなじみのクラスメートが僕を見てハードルをあげるのに。

ひそひそやめて・・・

「うそ、変態じゃない・・・・」

「むしろ・・・」

 などたまに聞こえる声が救いだけど・・・。

どんな風に見られてきたか・・・既に変態扱いだったのね。

「在校生代表挨拶。在校生代表、神楽夜レンさん、壇上へ」

 瑠璃ちゃんの声が裏返っている。さんって言っちゃってる。

 る、瑠璃ちゃんも頑張ってるんだ。僕も頑張らないと・・・

すぅと息を吸い込み一呼吸する。

 この呼吸でまったく緊張を感じなくなった自分がおかしいとか、少しは気づいているが、今は目の前の壇上に上がるのみ。

 高等部では最年長者であることで有名だし、総合成績一位であることが伝統である在校生代表。クラスはもちろんのこと、高等部では誰もが知った顔だ。

 しかし、今日の自分はいつものと見てくれがちがう。

 まともだからだ。

 それにしても視線がすごい気もするが・・・今は考えない。

身長も猫背をやめるとこんなにちがうんだなと分かる見晴らし、歩きやすさ。

 さぁ・・・いざ・・・。僕の高校デビューだ。ってちがうか・・・




 まとも?というよりかっこいい・・・

男女ともに、生徒、保護者、全ての人が思う感想だった。

 頭も蒼白第一高校1位ということは、三年生を上回る偉業もちなのは確定。

 総合成績一位ということは嫉妬を許されるほど甘い成績でないほどの、格闘、スポーツでも優秀ということも周知。

 新入生はもちろんだが、エスカレーター式でいた在校生も、生徒会も先のアナウンスの失笑、微笑ましさが霧散するほどの驚きが広がっていた。

 だれよっあれ!

 がたんと椅子を倒し立ち上がるのは明日香だった。

 え・・・レン君?とは礼。疑わしい目で査定している。偽装ではないかと・・・

 まじっすかとは、春日誠、坊主にパシンと手を当てている。

 新入生が次第になぜといった雰囲気に飲まれるころ、壇上に上がりきった神楽夜レンだった。

「かっこいいですぅ~~~~」

 しーーーーん。

 マイクがオンになったまま。瑠璃の声が会場に行き渡った。



 瑠璃ちゃんっ!

「あひゃ!」

 という声とともにブツンという・・・会場の雰囲気。

 その中でもう一度あわ立った心を落ち着かせ息を吸う。そしてはく。

 開放する、能力。

 レンの能力に名前はないとは父の言。

 あるとすればとはこれまた父の言だが・・・チート野郎、神、鬼、意味フ・・・最初と最後は嫉妬から来る言葉。そんな力だ。大抵のことがわかってしまうしできてしまう。

 利点はもちろん多いが、それと同じく悩みも多い。

隠し続けてはや19年終盤。今日だけは先取りで20歳からの開放の例外。

 少し意識すると発動する力に今は感謝だ。

 優しく、暖かく・・・

「皆さん、ご入学、ご進級おめでとうございます」

 一言。その一言が後に春の出会いと言われるほどになることを今は誰も知らない。

 風が、春風が吹き、こころ、空を優しく包む。

「緊張はとけましたか?

 私から、在校生代表として祝辞を。

 おめでとうございます。今、私は誇りを感じています。

 ただ、ここに立っている、座っている皆様はどうでしょう。

今の皆様はとてもいい表情をしています。そのことに最大の敬意と自分に誇りを感じています。

素晴らしい晴天に恵まれ、すがすがしく、かっこよく、可愛らしく、凛々しく、雄雄しく。男子は百獣の王、鷲に鷹にあるいはそれに負けない誇らしさと余裕を。女子は可憐の華のように、白鳥、太陽、白百合にあるいはそれに負けない可憐な姿。などと・・・定番な褒め言葉ですが、逆ももちろん、カッコいい女性、守ってあげたくなるような男性。ともにいい表情をしています。この学園は、こういう表情がたくさん見れる場所だと思うと誇りに思うのも無理はないと思います。

という・・私。実は足が震えそうです、手も汗をかき、空を見上げてここはどこでしょうなどといってみたい気がします」

「「「「「しーーーーん」」」」」」」

「あれ?笑うところなのですが、難しいですね。さて、私も真面目にしまして・・・。

本校に入学されたという方、ほとんどの方が、並々ならぬ努力をしてこられたと思います。徹夜に特訓にと明け暮れた人、競争の中、心が閉じてしまった人、など。保護者の方、家族とぴりぴりした状況がまだ続いている方もいるかもしれません。

 これら全てを忘れないようにすることは難しいかもしれませんが、今ここにたち、誇りましょう。そして、感謝と今の気持ちを大事にしましょう。

 家族の方なのか、泣いて感動しているひともちらほら見かけます。

今からちょっとした忘れないためのおまじない。それと今からの皆様の成長を願いまして、激励を送りたいと思います。

皆様、目を閉じてください。

 閉じなくてもいいですが、そのほうがいいと思いますので。

 では、わたしと協力者で、必死に考えた力を使いますね」

 ふぅ・・・・失敗したかな。

えらく静まり返っちゃって・・・まぁいいか。

 辺りを見るとちゃんと目を閉じている生徒ばかりだしと、嘯いた力を使う。

嘘といっても協力者の有無だけだ。

無論いない。一人でするしかないけど、余裕だ。

 イメージをするだけだから。

 自分も静かに目を閉じる。

 イメージするのはあらゆる記憶に繋がるツール。鏡、写真、フラッシュバック、声、録音。続けて、ワード。喜怒哀楽、達成、後悔、成長、希望・・・それを箱の中に入れるように収束していくイメージ。

 力を解放して、そのイメージをここにいる全ての人に一瞬で移し、いろんな色の塊を一つの箱につめこむ。その中に、爆発するような力を加えて・・・さぁ。起爆だ。キーワード。

 ありがとうに繋がる感情を抽出し、爆発させる。

 精神干渉。誘導起爆。

『ここにあれ』

 意識して求める。

 たったこれだけで、僕の力は自然に発動する。

 どういう仕組みか分からないけど、能力なんてそんなもの。

 この学園で何が学べたかって、ぼくは未だに自分さえ知らない。

 わからないことだらけの過去。現在。未来・・・。

「入学おめでとうございます。挨拶を終わります。一緒に頑張りましょう」

 っと礼をしてあたりを一望する。

 よかった、ま、分類としては幻惑か幻影ってとこかな。

 感極まっている人から次第に拍手が送られてくる。

 会長の時ほどじゃないけど、成功だろう。

 そうして役目を終えたレンは静かに壇上を下りた。

そして・・・・え・・・出て行くの僕?・・・・

 なぜか戻る方向・・・で道が開かれ・・・・退場?した・・・なんだこれ。


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