春日 誠っす!
その頃
神楽夜 仁・レンと銘打った木製の表札の横で、一台の軽ワゴンが待機していた。
「起きなさい!」
整った顔立ちに苛つきが張っている。
20代前半の女は、坊主頭、こちらは年端は高校一年生にもうすぐなるかといったところだ。
「すみません。寝ちゃってました?」
青年は後悔する。
童顔を自覚しているこの顔、加えてインドアで色白な顔に紅葉がくっきり浮かび上がることになったからだ。
「僕のせいじゃないのに・・・」
泣きそうな顔で運転席の美人で優しく、男子人気ナンバーワンの、教師男女共に人気ナンバーワンの教師、神山 礼に聞こえないように愚痴った。
今は指揮官で、聞こえてしまえばさらに紅葉が増える。いや、拳骨かもしれない。紅葉山は勘弁。
蒼月の鬼の金棒。代表の秘書。代表愛娘の守護鬼神にして反則能力ランクS。ANA(あーなったらあかん人)。その人。
せっかくの美人もこうなったら御終いだよと春日は心のそこから思う。
親しみ? あ、それはANA初日入隊記念日に消えました。
ちなみに、一ヶ月前、入隊前までは大好きな教師でした。
入隊した「安心と安全、争いのない世界を」が売り文句の警備会社。
そこの雑用バイトをしていた春日が、その勘のよさで気づいた裏の顔。
ANAと呼ばれる警備会社は、能力者が跋扈するこの世界において蒼月の御旗で知られる秘密結社だった。
まさかその本部がANA、民間会社なんて発見した春日も驚きだった。
捕まって事情聴取しされているときに、学校の生徒会長の明日香さんと隣の先生が出てきたときは、心のそこから安心した。
胸倉をつかまれるまでは・・・
礼先生は混乱しているんだ! 悪霊かなにかの支配を受けている! など現実逃避するほどに、まず目が恐ろしかった。
あんなに近くでお話したというだけで自慢になりそうな場面は、心配するほど様相が違い、現実は想像を超え、トラウマになった。
なんやかんやで、同じ学校のよしみという体のいいパシリになった僕。
懇願して任務に参加させてもらって、胸がどきどき!としていたのは1時間ほど前まで。
退屈なのだ・・・。
せっかくの初任務。スリルあり、バトルあり、出会いありの展開はなんてことはない、ただの警邏で終わりそう。
「確認したの?」
「え? あ、は、はい! もうすぐ九時ですね!」
危ない、忘れてた。
定時報告は僕の仕事。
九時まで待機のち終了しだい、初任務達成と、記念のディナー・・・まぁこれ、明日香さんが途中退場したのでなくなりそうですが・・・なんとしてもいく!
「携帯は!」
「はっはい!」
「もたもたしない!」
「はいぃ!」
やばい、どこいった?
あれ? ポケットに・・・
春日 誠。 うら若き童顔色白のANAのパシリです!
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