予兆
チルド・レン
予兆
『はい、ここ、かつてアメリカのカルフォニア州にありました、港町。現在は!あの天変地異でグランドキャニオンかと言わせんばかりの・・・』
「今更って感じだな」
聞き流していたテレビをリモコンで切った。
生まれる前の話なんて聞いてもピンとこない。
お気に入りのゆるいズボンをたくし上げながら、半そでをタンクットプにめくりあげる。
カジュアルテーブルに携帯にたばこ、今しがたひっくり返ったリモコンに静かになった部屋。
何にもない。
ここには、現代を象徴する文明も青春を感じる生活感も何もない。
数十年前の遺物と化した液晶テレビに、アンティーク気分で使われる携帯電話。
物心付いた時から、旅から旅なんていいものではなく、転校から転校
やっと通いたい学校に行けたと思ったら、厳格無慈悲な父からの意味不明な指示。
「また、破ったら次はない。転校なんてないまま実験体という名の就職だ」
とは、父の脅しと現実と。
加えて妙な約束というなの縛りつき。
友達を作るな、誰とも話すな、俺の決めた格好で行けなどなど。
ただ、それも二十歳までの約束、
午後九時。
「もうすぐご飯、もうすぐ二年生、もうすぐ二十歳!! ニッシシ!」
「レン。あと少しで飯だ。降りてきなさい」
父に呼ばれ一回のキッチンへ向かう。
にやっとした顔が治まらないまま、電気も忘れずに消し階段降りきった。
変人、いやみな天才、ねくらのレン。一年でマイナーなあだ名が付いたのは、意外と常識ある二十歳の青年。タバコを除いては・・・
キッチンでは、お決まりでたまにの父の手作り料理、ハンバーグだ。
無骨な父には似合わないこのハンバーグ。
これだけは、どこのレストランに出てもおかしくないほど美味しい。
ただ、犠牲を見れば、猫の手を借りたいほどの厨房でも雇ってくれないけど。
焦げ付いたフライパンにソースに使ったのだろう鍋。
どうやったらこうなるか分からない油まみれのキッチン。
これを加太付けろというのであれば、コンビニで済ませたくなるレベル。
ただ、能力を使わなければだが。
この時だけは父との協定で使用許可がでている。
ま、それも10日たてば全解禁。
パパット、イメージするだけで綺麗になる食器、調理具。
この力は詳しくは知らないけど、学んだだけの範囲では実験体になってしまうレベルというのは自覚している。
夜が更け、昇る月に雲かかる、満月を覆う雲は憂いを、光は慎ましくも夜に映え。
解禁まであと10日。
ハンバーグを並べる父の表情は険しく、反対にレンの表情は明るいものだった。
お読みいただきありがとうございます!
とりあえず異世界そだちの・・・から来てくれた皆様には本当にご迷惑おかけしてますし、感謝しています!
そして初めてのかた、誠にありがとうございます┏○))ペコ
こちら、投稿は二作目ですが、この小説自体はもう数年も前に書いたものを少しだけ書き直して投稿しています。
気軽に楽しんでいただければ幸いです、よろしくお願いいたします┏○))ペコ




