■第78話 キス
■第78話 キス
サクラが1歩近づき、つま先を立てて、背伸びをした・・・
震える手で、ハルキの上着の腕を掴んで支えにする。
少しだけ背が高くなったサクラが、アゴを上げ、
ハルキの唇に、自分の唇を、そっと押し当てた。
ギュっと目をつぶり、頬と耳は真っ赤に染め上げて・・・
そっと目をあけて見上げると、透明な雫は頬に滴り落ち。
そんなサクラに、やさしく微笑むハルキ。
『・・・知ってた? コレ。はじめてじゃねーぞ?』
ハルキは人差し指と親指で、サクラの唇をきゅっとつまんだ。
頬も鼻も真っ赤にしたまま、少し首を傾げるサクラ。
『お前が、盲腸で入院したとき。
お前、寝てたけど・・・
・・・した。
俺、お前に。チュウしたんだ・・・
だから、アホのハタなんかより。俺のが、先だから。』
駅のホームに吸い込まれるように滑り込んできた電車。
ハルキがそれに乗り込み、窓越しにサクラを笑って見ている。
動き出した電車と並走して、サクラが駆ける。
顔をくしゃくしゃにして、ボロボロと大粒の涙をおとして、サクラが駆ける。
ホームで見送る人にぶつかり、よろけながら、サクラが駆ける。
ハルキ・・・
ハルキ・・・・・・。




