■第75話 大切な人
■第75話 大切な人
サクラが、サカキを真っ直ぐ見つめて言った。
『ごめん。
あたし、ずっと。好きな人がいる・・・』
ぷっと吹き出す、サカキ。
『んなの、分かってたよ・・・
気付いてないのは、お前だけだ・・・』
それは。
サクラが学校を早退し、泣きはらしていた日のこと。
母ハナが、想い出を懐かしむように言った。
『アンタは、なーんにも覚えてないのね・・・
見えてないは、覚えてないはで。ほんと、アンタって子は・・・』
サクラが真っ赤な目を、母に向ける。
『ハルは、いっつも。サクラ、サクラって
アンタのことばっかりで・・・
アンタが生まれた日。
病室に来たハルが、赤ん坊のアンタを見て、
ほっぺピンク色にして泣く、アンタ見て、
”桜の花みたい!サクラだ、サクラだ”って・・・ 』
(せっかくサクラってゆー可愛らしい名前が
付いてんのに”名付け親” が泣くぞー?)
いつかのハルキの言葉が甦る。
『もちろん、最終的に名前決めたのは私たちだけどね・・・』
思い出し笑いをして、やわらかく頬を緩ませる母。
(ちゃんと、目ぇひん剥いて見てんのかー?
お前のその目は、フシアナかー?)
そう言って、笑うハルキの顔が浮かび、サクラの胸を容赦なく締め付けた・・・




