表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/81

■第65話 高校1年春

■第65話 高校1年春


 

 

それは、高校1年のはじめ。

 

 

私は、親の転勤の関係で全く知らない土地の高校に入学していた。

周りを見渡すと、同じ中学同士の面々が固まって島を作っている。


それを自分でも気付かぬうち、ほんの少し物欲しそうに眺めていた

のかもしれない。

隣の席の彼女が、ひとりポツンと座る私に話し掛けて来た。

 

 

 

 『キノシタさんって、何処チュー?』

 

 

 

他県から来た話をすると、『へぇ。』 と素っ気なく、一言。


私の返答に、大して興味があるようにも聞こえなかったが、

大袈裟に繕う感じの無さに、何故だか嫌な感じもしなかった。


そんな彼女も誰ともつるんでいない様に見えた為、

『どこから?』 と聞くと、

 

 

『第一。』 至極、あっけらかんと言った。

 

 

すぐ目の前で第一中学校出身者が、まるで多勢力をねじ伏せる与党の

ように大きな顔をして群がっているのに。


『あの子達と、一緒ってこと?』 念の為、与党に目線を飛ばし確認してみる。

 

 

すると、

 

 

 

 『めんどくさくない?ああゆうの。』

 

 

 

目線すら向けずそう言い切る横顔が、なんだか格好良く見えた。

その日、彼女が言った言葉が、一日中、頭をぐるぐる巡っていた。

 

 

 

 『友達なんか、大事なんが1人か2人いればよくない?』

 

 

 

 

 

 

とある日。


人気がある若い女性教師を目の仇にしていた与党勢力が、

その授業の直前に女子で集まってみんなで教師を無視しようと

コソコソ話し合っていた。

男子まで巻き込んで得意気に計画立てている首謀者は、サトウさんだった。

みんな、サトウさんに刃向うと面倒くさい事になるので、

表面上合わせているようだった。


チャイムが鳴り、女性教師が教室の教壇に立った途端のこと。

 

 

彼女が急に挙手した。


まだ、授業は始まってもいないというのに。

それは、真っ直ぐ。

天に伸びるように、正々堂々とキレイな直線を描いて見えた。

 

 

 

 『センセー、


  サトウさんがマンツーで話したい事があるそうデ~っス。』

 

 

 

そう言い捨てると、机に突っ伏して”後はお好きに”とばかりに寝始めた。


教室内がザワザワとざわめく。

その首謀者は、顔を真っ赤にして口ごもり、

クラスの誰も助け船を出すこともなく

結局何も出来ずにクーデターは未遂に終わった。


チラリと彼女の顔に目線だけ向けると、

可笑しくて仕方ないのを必死に堪えている感じだった。

鼻にシワを寄せて、笑い声を必死に抑えている顔。

 

 

授業後、私はいまだ机に突っ伏す彼女を指先でつつき、声を掛けた。

 

 

 

 『・・・ねぇ?』

 

 

 

すると、彼女はガバっと起き上がり思いっきり大口開けて笑って言った。

 

 

 

 『オっモロかったよねぇ~?』

 

 

細い肩を震わして、イスをユラユラ揺らし笑っている。


いまだ睨みを利かす与党から、仕返しを受けるのではないかと

少し心配になった私に、彼女は自信満々に言った。

 

 

 

 『まぁ、サイアク。ケンカしたら勝てる自信あるから。あたし。』

 

 

 

また可笑しくて仕方ない感じで、肩を震わして笑っていた。

 

 

 

 

彼女は最初から、そんなだった。

サクラは最初っから、そんな感じだった。

 

 

そんなサクラと一緒にいるのが、私は、楽しくて楽しくて仕方がなかった。

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ