表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/81

■第63話 ふたり

■第63話 ふたり


 

 

その日、ミナモト家とカタギリ家の両父母は、揃って仲良く温泉に行き

いつもの騒がしい家の中も、静けさはひとしおだった。

ユリもジュンヤのところへ行っていて、残ったのはサクラとハルキの

ふたりだけだった。

 

 

二人用の夕飯がカタギリ家のキッチンに準備されていた。

久々に一緒に食べる夕飯。

ラップのかかったオムライスをレンジでチンすると、キッチンのテーブルに

二人分おき、冷蔵庫からサラダの小鉢を取り出したサクラ。

 

 

 

 『ハルキー・・・』

 

 

 

そう呼び掛け、右手にマヨネーズ、左手に和風ドレッシングの瓶を持ち

ハルキにそれらを見せる。

 

 

 

 『ん~、マヨ。』

 

 

 

サラダにかけるそれを選び、『ついでに麦茶。』 と冷蔵庫から

出してほしいものをリクエストした。

ハルキは麦茶用のグラスを2つ掴んでテーブルに置く。


向かい合って食べる夕飯。

無言。互いの咀嚼する音だけが聞こえる。

 

 

 

 『なんで最近あんまウチ来ないの?』

 

 

オムライスを一口大、スプーンで掬いながら、ハルキが静かに訊いた。

 

 

 

 『いや・・・別に。』

 

 

 

最近はもっぱら”別に”ばかりのサクラ。

ハルキと目線を合わせようとしない。


サカキとのデート以来、ハルキを過剰に意識してしまい

なんとかそれを誤魔化そうと避けてきたのに、今日に限ってふたりきり。

 

 

 

 『ジャンプ、暫く読んでねーだろ?読んでっか?』

 

 

 

ハルキもオムライスに目を落としたまま、更に続けると、

『借りてく。』 と自宅で読もうとするサクラ。

 

 

 

 『あっそ。』

 

 

ハルキは小さく笑って、食べ終わった皿をキッチンのシンクに置くと

食器用スポンジに洗剤を垂らして泡立て、それらを洗いはじめた。


隣に皿を持ったサクラが立つ。

目を合わせようとしない。


ハルキはサクラの手からそれを受け取ると、『部屋入って持ってけ。』 と

食器洗いを引き受けて、ジャンプ持ち出し許可を出した。

 

 

 

 『ん。』

 

 

サクラは小さく発し、パタパタとハルキの部屋へ向けて駆け

お目当てのそれを抱えて、さっさと自宅へ戻って行った。

 

 

 

キッチンにひとり、スポンジと皿を持ったまま、ハルキは首を後ろに反らせ

天井を眺めて大きな大きな溜息をついた。

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ