■第62話 友達
■第62話 友達
リンコがサクラの家に遊びに来たいと言い出したのは、水曜日のこと。
じゃあ土曜にという事で話が決まり、今日がその日だった。
午後2時。
約束の時間ぴったりにリンコがチャイムを鳴らした。
軽く手を上げ、リンコが嬉しそうに笑っている。
何故だかその時、リンコのこんな顔はあまり見たことが無い気がしていた。
サクラの部屋に上がり、ふたりで色んな話をしていた時のこと。
階下がなにやら騒がしく不思議に思ってサクラとリンコふたりで1階へ下りた。
すると、そこにはハルキの姿。
Tシャツ・スウェット気怠い部屋着姿の、完全休日モードの担任教師が。
『ぉ、キノシタ・・・』
そう言うと、ハルキはすぐサクラ母ハナの方へ向き、
『おばちゃん、ゴキブリどこだよー?』
片手に新聞紙を丸めて、床の隅を眺めている。
その姿に、
『ほんとに家族みたいだね。』
リンコがちょっと笑いを堪えて、呟いた。
その後は、リビングで母ハナとハルキもまじえ、4人でケーキを食べた。
ハルキが当り前に普段通りの感じで、なんの躊躇いもなく自分のケーキを
半分残して皿をテーブルに置く。
すると、サクラも同様にして置き、何も言わず互いの皿を交換して
異なる種類のケーキを食べるふたり。
ギョッとしたリンコ。
サクラには子供の頃からの習慣で、それについてなんとも思っていない。
リンコが驚いていることにすら気付いていなかった。
『そだ。お前、先週のアレはー?』
『あー、あとで行く。』
『ぁ、あれの5巻出てたわ。』
『俺も、こないだ本屋で見たー』
傍から聞くとなんの話をしているのかサッパリな会話を
サクラとハルキは当然な感じで交わしている。
すると、母ハナがリンコに言った。
『家族みたいだし、兄妹みたいだし、友達みたいなふたりでしょ?』
そう言って、笑っている。
『友達・・・。』
リンコは笑っていなかった。
感情を読み取れない顔をして、ハルキへそっと目を向けていた。




