■第56話 デート
■第56話 デート
『じゃ、土曜の10時に駅前で。』
サカキと休日に待ち合わせをする。
いわゆる世間で言うところの、デートだ。
中学からの付き合いで、休日に草野球したり、ナイター観戦に行ったり
別に初めてのことじゃないのに、何故だろう、意味合いはやはり違った。
当日、待ち合わせ場所に先に着いたのはサカキだった。
時間丁度に現れたサクラを見て、サカキが笑う。
『デートとは思えないカッコだな、お前。』
パーカーを羽織り、ジーンズはロールアップして、
ド派手なソルメイトソックスに、ショート丈のエンジニアブーツ。
自分では自信満々のつもりだったサクラ。
サカキは、白のボタンダウンシャツにクロップドパンツ、そしてスニーカー。
(ぁ、ハルキのパンツに似てるかも・・・)
『お互い様だ。』
サクラが一瞥して言った。
何処に行くという目的もなく、なんとなくブラブラしようと思っていたふたり。
まずは駅前の本屋に入った。
新刊の平積みを手に取り見ていたサクラ。
『あ!』
ハルキが買い続けているコミックの新刊が並んでいる。
(もう買ったのかな・・・?)
『サクラー、2階見に行かね?』
サカキの声に振り返り、なんだか違和感を感じたサクラ。
(好きなように見たいのに・・・最後に合流でいいじゃん。
ハルキは好きなだけ見さしてくれんのになぁ・・・)
言葉に出来ないモヤモヤしたものが、小さく顔を出した。




