■第55話 速球
■第55話 速球
放課後。化学準備室へ向けて廊下を進んでいると、体育館から排球部の
ボールがコロコロとハルキの足元まで流れて来た。
慌ててボールを追い掛けてやって来たのは、サカキ。
バレーボール部ではなかったはず。
制服姿という事は、体育館を無断で使って球遊びをしているという事か。
『ぁ。』
ハルキの姿を捉え、立ち止まるサカキ。
体を屈めボールを拾うと、
『球遊びしてないで帰りなさい。』
言った言葉に、棘があった事に気付き若干気まずそうに目を逸らすハルキ。
『カンケーなくないっスか?・・・イロイロ。モロモロ。』
サカキはアゴを上げ、睨んでいる。
ちょっと俯き笑う、ハルキ。
内心ムカついていた。
ムカついてムカついて、仕様がなかった。
すると、
『付き合ってんで、俺ら。クチ挟まないで下さいね、センセー?』
その言葉に、片手に拾ったボールを思いっきりサカキに投げつけたハルキ。
凄い勢いで飛んできた返球。
しかし、サカキはしっかり体前面でキャッチした。
苛立ちが爆発して、サカキは再びハルキへ向けて速球を放った。
ハルキもそれに上回る速球で返す。
『なにあれ・・・?』
周りで見ていた生徒が、不思議そうに首を傾げた。
たまたま通りかかったサクラとリンコ。
ギョッとするサクラを横目に、リンコは冷静に呟いた。
『どっちの応援すんの?』




