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■第46話 秋の雨夜

■第46話 秋の雨夜


 

  

ユリが学校からいなくなって、もう数週間経った。

 

 

最初はもしかしたらまだユリがいるんじゃないかと、

朝のホームルームに間に合うよう登校していたジュンヤだが、

その思いは当たり前に、呆気なく打ち砕かれた。


学校に行く意味がなくなった。

また、元の、つまらない日常に逆戻りした。


バイト先のラウンジバーにも、ユリは現れなくなった。

雨の夜はユリが肩を濡らしやって来るんじゃないかと期待したが

その姿を見つけることはなかった。


連絡先もわからない。

何処に住んでいるのかも、

なにもかも、

ユリの事は知らなかった。


その寂しさを埋めるように、恋歌集だけは手放さず読みふけった。

もう殆ど暗記してしまって、空でも言えた。

それが逆に悲しかった。

 

 

 

 

それは、雨が続いた秋のこと。

閉店時間が近づき、もう客もいない店内でジュンヤはひとり片付けをしていた。


店前に出してある看板をしまおうと、扉を開けた。

まだ薄暗い早朝の、冷たい秋風が雨にまざって痛い。

 

 

 

すると、そこには。

 

 

ユリが、ひとり、立ち竦んでいた。

目には涙が溢れている。

 

 

 

思わず、ジュンヤが抱きしめた。

そのジュンヤを、ユリが濡れて冷え切った体で抱きしめ返す。

 

 

 

 『会いたかったです・・・』

 

 

そのジュンヤの言葉に、

 

 

 

 『あんな、・・・やめてよね・・・。』

 

 

 

ユリが声を上げて泣いた。

 

 

 

 『ジュンヤ・・・』

 

 

 

 

  ”吾妹子に 恋ひてすべなみ 夢見むと


               われは思へど 寝ねらえなくに”

 

  

 

 

   (僕は君にあった瞬間 恋をした 


      夢でくらい逢いたいのに まぶたを閉じて願たって


          この心切なくて ちっとも眠れやしない・・・)

 

 

 


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