■第45話 最後の日
■第45話 最後の日
3日なんて、呆れるほどにあっという間に過ぎる。
こうやって、屋上でふたりで昼食をとるのも、今日が最後。
遣り切れない思いがこみ上げて来て、最後だっていうのに
ジュンヤの口からは思うように言葉は出ない。
『アンドウ君・・・?』
不機嫌そうに俯いたまま、なにもしゃべろうとしないジュンヤを
不安気にユリが覗き込む。
今日もユリからは、胸を熱くする甘くてフルーティーな香りが漂う。
ふんわりと風になびくハーフアップの長い髪。
もう会えない。
もう会えなくなる。
『ユリ、さん・・・』
急にジュンヤの口から出た真剣な声色に、ユリは一瞬体を固くした。
『あの・・・恋歌。恋歌集・・・
アレ、俺。
ユリさんが持ってたの見て、
同じやつ、本屋に。探しに行って・・・
毎日毎日、読んで・・・
暗記するほど、俺。読んで・・・
あんなの今まで全く興味なかった、のに・・・』
苦しい。
でも、止まらない。
『店で、最初。ユリさん来た時から・・・
俺、もう。ずっと。
ユリさんの事だって、ほんとはすぐ気付いて・・・
だから。
ガッコも毎日、朝から・・・』
苦しい。
苦しい。
苦しい。
『ただ、会いたくて・・・』
すると、
柵に手をかけて立つユリが、俯いて呟く。
『アンドウ君みたいなイイ子が、
わたしみたいなのに関わってちゃダメよ・・・』
そう言って、目を伏せたその瞬間、ユリの頬に雫がこぼれ落ちた。
その時、昼休みを終えるチャイムが広い空に鳴り響いた。
ユリは目元を赤くしたまま、その場を去ってゆく。
『第11巻の2412、読んで下さい!!!』
小さくなるその華奢な背中に、ジュンヤが叫んだ。




