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■第44話 昨日のこと

■第44話 昨日のこと




昼休みの屋上に、ユリとジュンヤ。




 『昨日のこと・・・大丈夫だったんですか?』 




朝帰りをした上、教育実習までサボって、

ジュンヤ自身はそんなの慣れているけれど、ユリはそうとは思えなかったのだ。


柵に寄り掛かり、緩い風に髪の毛をなびかせながら

ユリがふふふ。と笑って言った。




 『学校の方は、だいじょうぶぅ


  お腹いたかった、って事にしたから。でもね・・・』



『でも・・・?』 ジュンヤが目線だけユリへ向ける。




 『お母さんには、すっごい怒られちゃったぁ・・・』




そう言うと、ユリは細い指先でジュンヤの頬に触れた。

そして、ほんの少し軽く、ピチッとその頬を叩いた。




 『バチンっ、て。お母さんに。』



目を細めて、なんだか愉しそうにクスクス笑う。



ジュンヤが眉をひそめて、少し覗き込む。




 『叩かれたんですか?』

 

 

 『うんっ。』

 

 

 

それは何故か嬉しそうに響く。

ユリが続ける。

 

 

 

 『わたしね・・・


  今まで、朝帰りとかしたことないし、


  学校もサボったりしたこと、今まで一度も無かったの・・・


  だから、昨日は。


  ほんっと楽しかったぁ・・・


  それに・・・』

 

 

 

 『それに?』

 

 

 

 

 『朝マック出来たんだもんっ!』

 

 

一瞬吹いた強い風に、目を細めてユリが深呼吸をする。

 

 

 

 『ありがとう・・・アンドウ君。』

 

 

小さく呟いた。

その声色にユリは泣いているんじゃないかと、心配になり

ジュンヤがチラリ覗く。

 

 

 

 『わたし、ね・・・』

 

 

ユリがジュンヤに真っ直ぐ向いた。

 

 

 

 『今週いっぱいでサヨナラなの・・・。あと・・・3日、かな・・・。』

 

 

 

たった2週間だけの教育実習。

あと3日で、ユリとはもう離れ離れになる。

あと、たった、3日・・・

 

 

思わず泣き出しそうになって、ジュンヤは柵に手をかけたまま

体を屈めて俯いた。

 

 


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