■第40話 補習
■第40話 補習
その日の放課後。
サクラは数学の補習があり、ひとり、居残り。
校舎裏の駐輪場。
自転車に跨り、ひとりペダルを漕ぎだしたサカキの目の前に
リンコの姿を捉えた。
『よぉ。』 サカキの呼び掛けに、
『・・・ハタ。』 リンコが一瞬目線を遣った。
なんとなく、沈黙。
ふと、サカキが口にしてみた。
『2ケツ・・・すっか?』
その予想だにしない言葉に、目を見開いて驚いた顔を向けたリンコだったが
『・・・うん。』 と頷き、自転車の荷台へ腰を掛けた。
なんだか不思議な組み合わせの、ふたり。
サクラを通してしか絡んだことはない、ふたり。
なにもしゃべらず、校舎脇を通り抜け、下校する生徒が溢れる通学路を進んだ。
『ねぇ。』
リンコが声を掛けた。
『サクラ、ちゃんと掴まえときなよ。』
その言葉に、サカキが困惑した顔をして口ごもる。
『なんだよ、それ。別に・・・』
すると、静かに低く呟いた。
『親切面したオトナに、持ってかれるわよ。』
サクラは夕暮れの校舎で、不機嫌そうにひとり、廊下を歩いていた。
先日の数学の小テストで奇跡の8点という数字を叩き出し、
担当教師からひとりだけ呼び出しが掛かり、居残り補習をしていたのだった。
『あんの、くっそジジイ・・・』
眉間にシワを寄せ、ブツブツ文句を言っている。
『10点満点だったら8割とれてるっつーの。』
勿論、10点満点な訳はなく、正解率は8%だった。
カバンを取りに教室へ向かう。
運動系の部活動の声と、吹奏楽部の音色がそよぐ廊下。
窓からは夕焼けが差し込んでいた。
教室のドアを開けると、そこにはハルキが立っていた。
『あれ。どしたの?』
『あ?どした?』
互いの姿を見て、ふたり同時に発した。
片手に握る補習プリントが目に入り、ハルキが俯いて笑う。
『化学も補習したほうがいいかねぇ~?』
すると、アゴを前に出し目をすがめて、サクラは自信満々に言った。
『なんの役に立つんだよ。数学やら理科やら。ムっカつく・・・』
そう激高する顔を見て、ハルキが訊く。
『じゃぁ、お前。何が出来んの・・・?』
暫く考え込み、サクラが小さく呟いた。
『・・・体育。』




