■第38話 朝のマックで
■第38話 朝のマックで
この時間帯は朝マックしか無いという事実に、ユリは驚きそして喜んだ。
『ぜんっぜん、知らなかった!朝マックぅ~』
飛び跳ねそうなくらい喜んでいる。
迷いまくって中々注文が決まらず、店員を辟易させていたが
本人は至って嬉しそうで、それを隣で見守るジュンヤも頬が緩んだ。
『マックも初めてだし、朝マックも初めて・・・』
なんだか本当に嬉しそうで、こっちまで幸せな気分になる。
マフィンの他にパンケーキまで付いたセットを頼み、あきらかにユリには
その量は多いように思えた。
フォークで突いた一口大のパンケーキを、ユリがジュンヤの口許に差し出す。
戸惑い、ゆっくり口を開けて、それを頬張った。
ユリが目を細め微笑んで。
メープルシロップの甘さに、ノドの奥が締め付けられるようだった。
『ねぇ、アンドウ君はどうして恋歌を読んでるのぉ?』
答えられず、俯くジュンヤ。
『ぁー。好きな子が、恋歌好きだったとか~?』
ふふふ。と笑って、ユリがアイスコーヒーをストローで静かにかき混ぜる。
プラスチックのフタにストローが擦れて、ギギっと嫌な音が鳴った。
ジュンヤは下を向き、マフィンの包みを見つめた。
『ねぇ、アンドウ君、ご家族は?』
急にユリから訊かれた問いに、
『母親だけです。』と答えた。
ジュンヤは水商売をする母親と二人暮らしで、少しでも生活の助けにと
バーでバイトしていたのだった。
『・・・センセー、は?』
その言葉に、ユリがびっくりした顔を向け、
『センセーはやめてよぉ・・・』 と情けない顔を向けた。
『ユリでいいわ。』
そう呟く顔に、『ユリ、さん・・・』 と少し頬を赤らめてジュンヤが呟いた。




