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■第36話 ふたりだけの秘密

■第36話 ふたりだけの秘密


 

 

店内にはジュンヤとユリのふたりだけだった。

 

 

互いに何も話さず、静かな時間が1秒ずつ流れる。

ユリが指先で弄ぶマドラーが、氷とぶつかりカランと音が響いた。

 

 

 

 『どこかで会った気がしてたのよねぇ・・・』

 

 

肩をすくめて小さくユリが笑う。

 

 

 

 『・・・気付いてたぁ?』

 

 

ジュンヤを覗き込むように、目を細める。

 

 

 

 『・・・いや、全然。』

 

 

何故か嘘をついた。

気付いてて黙ってたと思われたくなかったのかもしれない。

 

 

 

 『学校にココの事バレたら、どうなるの・・・?』

 

 

 

 『停学・・・いや、・・・退学かな?』

 

 

 

ジュンヤの言葉には少しだけ笑いが含まれていた。

それは、呆れているような諦めているような。


ユリが、真っ直ぐジュンヤを見た。

 

 

 

 『じゃぁ、秘密だね。』

 

 

ジュンヤの目の前で、まぶしそうに目を細め微笑むその顔。

 

 

 

 『ふたりだけの、秘密だね・・・』

 

 

呼吸が苦しくなるほど、ユリを想ってその胸は高鳴っていた。

 

 

 

 

 

雨は、やまない。

ジュンヤがこっそり時計を見ると、時刻は午前3時をまわっていた。

 

 

 

 『タクシー呼びましょうか?』

 

 

 

明日も学校があるのに、帰る気配がないユリを心配して言う。

すると、ふふふ。と頬を緩ませ

『アンドウ君だってそうじゃない・・・』 と笑った。


そして目を上げると、

『お店は何時まで?』 首を傾げてジュンヤを見る。

 

 

 

 『4時、です・・・』

 

 

その返答に、ユリが目を細め愉しそうに言った。

 

 

『だから、いつも居眠りしてるのねぇ・・・』 可笑しそうに笑う。

 

 

 

 

 

 『ねぇ、ふたりでサボっちゃおっかぁ?』

 

 


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