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■第28話 飛距離

■第28話 飛距離


 

 

サカキが、

あのアホのサカキが、

20㎝もデカくなっていた。


おまけに、肩口に触れた時の、あのガッチリした感じ。


衝撃だった。

一丁前に成長している事に衝撃を隠せなかった。

 

 

 

サクラは、延々サカキの件を考えながら、カタギリ家で夕食をとっていると

シャッターが開く音と車のエンジン音で、ハルキの帰宅に気付いた。

 

 

 

 『ぉ。今日は肉じゃがか~』

 

 

 

食卓テーブルに並んだそれに手を伸ばして、一口つまみ食いをしたハルキに

サクラが無言で手を伸ばし、胸元に手の平で触れてみた。

 

 

 

 『・・・なに?』

 

 

キョトンとした顔を向けるハルキ。


手を慌てて引っ込めるサクラは、目を見開きパチパチとせわしなく瞬きをする。

 

 

 

  (ハルキまで・・・)

 

 

 

苦虫を噛み潰したような顔を向けるサクラに、ハルキがあっけらかんと言った。

 

 

 

 『お前と同じくらいだろ?おっぱい』

 

 

 

  パチン。

 


その発言に、父サトシがハルキの後頭部を叩いた。


『コイツ、殺してー!』 サクラが大袈裟にサトシに泣きつくと、

ヨシヨシとその頭を撫でてサトシは過剰に援護した。

 

 

 

 

 

夕飯を終え、ハルキは自室に戻って行った。

カタギリ家のリビングに、ハルキ母サトコとサクラ。

 

 

食後のデザート用に準備していた苺を摘みながら、テレビを見ていた。

 

 

 

 『ねぇ、サトママー・・・』

 

 

サクラが苺を指先で弄びながら、サトコへ振り向く。

 

 

 

 『ハルキって、オトナなんだね・・・』

 

 

その意味不明な発言に、無言で首を傾げるサトコ。

 

 

 

 『なんかさー・・・


  体、とか?ちゃんとガッチリしてんだねー・・・』

 

 

 

 『なに?”意識”しちゃった?』

 

 

 

ニヤけながらサトコが苺を頬張る。

 

 

 

 『いや、なんかさー・・・


  中学からの男友達も、気付いたらデカくなっててさー・・・』

 

 

 

目線だけサクラに向けるサトコ。

それはなにかを期待するような眼差しで。

 

 

 

 

 『そりゃ、球の飛距離ちがうよなー・・・』

 

 

 

サトコは、そのサクラの発言に、大きく溜息をついた。

 

 

 

 『・・・球かい。』

 

 

 


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