表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/81

■第14話 表札

■第14話 表札


 

 

その日、

サクラの病院へ見舞ったその帰り道。

 

 

今日の授業のノートの写しを、サクラに渡し忘れたリンコ。

以前、話をしたときに家の場所は大体イメージ出来ていた。

家の人にでも渡しておこうと思い、記憶を頼りに住宅街を進む。


病室でサクラと話し込んでしまって、もう日は暮れて薄暗くなっていた。

病人相手にもっと気を遣うべきだったと、ひとり反省する。


常夜灯の心細い灯りにぼんやり浮かぶ表札の名前を見ながら

ここら辺ではないかと目星を付け、目を凝らすリンコ。

 

 

 

 

 『あ!』

 

 

 

見つけたその名前 ”ミナモト”

父母と姉の名の後に ”サクラ”と在る。

 

 

塀に埋め込まれた表札横のチャイムを押そうと、人差し指をあてかけた時

一台の車が隣家の車庫前に滑り込んだ。

電動でシャッターが上がり、その車はエンジン音を立ててバックで入庫する。

 

 

何故かリンコは、その車庫入れの様子を目で追っていた。

 

 

 

 (どっかで見た車・・・)

 

 

 

何気なくふと目線をずらした時。

その隣家の表札の名前が、リンコの目に入った。

 

 

チャイムの寸でで止まる人差し指をそのままに、顔だけその隣家へ向けて

立ち竦んでいた。

車を下り、運転席のドアをバタンと閉めて車庫から出てきたそのスーツ姿に

”それ”が思い違いではないことを知る。

 

 

”それ”の片手には、リンコが届けた制服とカバン。

再度病院へ寄り、荷物を受け取ったという事なのだろう。

 

 

思わず、ミナモト家の塀の陰に隠れ身をひそめた。

 

 

”それ”は、カタギリ家ではなく真っ直ぐミナモト家へ

チャイムも鳴らさず、ごく当たり前のように入って行く。


ドアが閉まり切る寸前、微かに漏れ聞こえた玄関先の会話。

 

 

 

 

 『わざわざ悪かったわね、ハル。』


 『いや、ぜんぜん。・・・サクラ、大丈夫そうだよ。』

 

 

 

 

 

 ”担任教師”が、そこに、居た。

 

 

 

 

病室でサクラに訊いた、問い。

 

 

 

 『なんか、私に、隠してること・・・ある?』

 

 

目を逸らしもせず、サクラは堂々と『ないけど。』 と笑った。

 

 

 

 ”それ”を守る為に・・・


 ”それ”なんかの為に・・・

 

 

 

 

 『嘘つき。』

 

 

 

ひとり呟いて、リンコが駆けた。

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ