■第10話 病室
■第10話 病室
サクラが目を覚ますと、そこは病室で、傍らにはハルキがいた。
『ハ。・・・センセ・・・。』
ハルキと呼びかけ慌てて言い直したサクラ。
そんなサクラにククっ、と笑うハルキ。
『俺だけ。だから、ヘーキ。』
そう言うと、『急性虫垂炎だってさ。』 と続けた。
『なに痛いのガマンしてバット振ってんだよ。バカか?』
眉間にシワを寄せ叱るその顔に、サクラが何か訴えるような目を向ける。
『どっか痛いか・・・?』
立ち上がり覗き込むように屈むと、顔を歪めながらサクラは小さく言った。
『・・・ジャンプ。今日、発売日・・・』
パコリ。軽く頭をはたく。
そして、呆れて笑いながら
『買ってきといてやっから、もすこし寝ろ。』とハルキは呟いた。
珍しく素直に、コクリと頷くとサクラはしんどそうに目を閉じた。
暫くして、静かな病室に小さな寝息が規則的に響いた。
少しだけ開けた窓から入る春の風が、生成色のカーテンを小さく揺らしている。
春のそれは、眠るサクラの前髪を撫でてゆく。
そっと手を伸ばし、閉じる目にかかったやわらかな前髪を払うハルキ。
更に近付いて、寝顔を見ていた。
長いまつ毛が呼吸に合わせ上下する。
『イッチョマエに、成長しちゃって・・・』
頭を優しく撫でて、呟いた。
泣き止まない赤ん坊のサクラ
小さい体で抱きすくめるハルキ
「サクラは、ぼくのもんだ!」
『俺んだったのに・・・』




