三つ目
先輩からお手紙が届いた。その内容がどのようなものか、期待もしたけれどやっぱり怖かった。
用意して貰った部屋に駆け込み、一旦自分を落ち着かせる。震える手で封を開き、僕は手紙を読み始めた。
それはとても丁寧で綺麗な文字で書かれていた。
二年間仕事場で見慣れた文字。正真正銘先輩の文字。つまり先輩本人が、手書きで僕の手紙の返しを書いてくれたということ。
後輩が先輩に媚を売るのは理解出来る。それでも逆というのはあまり聞かない。
それに聖徳太子先輩は、そのようなことをする人ではなかった。
つまりこの手紙には、先輩の本心が書かれていると考えてもいい筈。
気持ち悪いではなく、先輩は嬉しいと書いてくれた。僕のことを教えて欲しいなんて、そんなことを書いてくれた。
優しいのは知っていたけれど、少し冷たいイメージがあった先輩。あの先輩が、こんなにも僕のことを褒めて下さっている。
それは素直に嬉しいことであった。
僕の美貌、か。
外見と言うのが嘘と言う訳ではない。でも美しさのおかげでとか、それは嘘だった。
先輩が嫉妬してくれたらいいな。僕を取られない為に! とか思ってくれたらいいな。そう思って書いただけ。
かなり華奢で弱そうな顔しているから警戒されなかった。それだけなんだよね。
手紙の内容的に見たら、先輩も僕と同じ気持ちでいてくれているということ。
私の元に来てくれなんて、そんなこと書かれているよ。これはプロポーズとして取ってもいいのかな。
二人の間に立ちはだかる壁が高過ぎるよ。
きっと僕と先輩は両想いになれた。片思いもどかしい距離とか、そんな物語みたいなのじゃない。最期には結ばれるとかじゃなくて、きっともう両想い。
それでも隋と倭、国境を超えた恋愛なんて聞いたことがない。遠距離恋愛、そんなレベルじゃないよね。愛するべき人がいるのに、海外への危険な旅に出る人なんて普通いないもん。
そして何よりも高い壁、性別。僕も男だし、先輩だって男。普通だったら愛し合うなんて可笑しい。
しっかし驚いたな。先輩なら望む答えを返してくれるとか、期待はしていた。だけど模範解答、むしろそれ以上の手紙が来るなんてさ。
ご褒美もお仕置きも楽しみにしているって書いてある。それじゃあ特別に両方あげよう。
正しい答えが返って来たらご褒美をあげるつもりだった。それ以上の答えが返ってきたんだから、希望通り両方あげないとだよね。
気持ち悪いなんて言わせないよ? 先輩の希望だから。