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ひたすら戦ってみる

 再び前線に戻ってきた私は、竜騎士の邪魔にならないように、剣と近距離魔法で敵を倒していった。


 ときおり敵陣の奥深くまで潜って、大技をかましたりもしたが、敵は減るどころか、どんどん増えているような気さえする。


 それに、さっき倒した敵兵に見覚えがある気がする。


 まさかな…


 …本当にゾンビとか言わないよな?


「シェラ!デールが魔力切れでぶっ倒れた!代わりに頼む!」


 向かってくる敵を倒しながら、ランス隊長が大声で叫んだ。


 ランス隊長が指示する場所に、魔法を続けざまにぶち込んで、やっと一息つくことができた。


 やや後方に下がり、ランス隊長と合流した私は、上空の竜騎士を気にかけつつ、戦局について話すことにした。


「隊長、これでは消耗戦もいいとこです。それに…、先ほど倒した敵兵なんですが、気のせいかもしれませんが、なんだか見覚えがあって…」


「!おまえもか!?実は俺も、さっき倒したはずなのに、また同じ顔の敵兵がいるから、おかしいと思ったんだよ。…まさか、不死の軍団とかじゃないよな?」


 この途切れることなく投入される敵兵には何か仕掛けがありそうだ。


 だが、早くなんとかしないくては、どんどん消耗していくだけ。


 隊長自身も泥にまみれ、酷く消耗しているようだ。


「何か仕掛けがありますね。探りますか?」


 正直悩むな。今、戦力を割くのは厳しい戦況だ。


 応援を呼ぶにしても、王都に残っている隊員達は王都の守備を任されている。


 簡単に呼び寄せるわけにもいかないか…


 今は戦況が拮抗しているが、このままじゃこちらの分が悪くなっていくだろう。


「竜騎士達も疲労が見えます。ここらで一度引いて体制を立て直す必要があると思います。その間に探りを入れる必要があるかと」


 このままでは、ジリ貧だ。


「そうだな、確かにこのま…!シェラ!!」


 隊長は私の名前を叫ぶと、おもいきり私を突き飛ばした。


 どうにか体制を保ち、さっきまで私がいた場所を見ると、大きなクレーターができている。


「隊長!」


 砂埃の中隊長を探すも、あまりの惨状に頭がついていかなかった。


 なんだこれは?


 魔法か?


 いや、そんな気配は…


 ゾクッ!!!


「!!」


 背後から禍々しい魔力を感じる。


 圧倒的な魔力が辺りを支配していく。


 肌を舐めるような濃い魔力に、背筋に冷たいものが伝う。


 これは、人間ではありえない!


 砂埃が晴れてきて、徐々にその姿を確認することができた。


 整った容姿に、浅黒い肌。真紅の瞳。頭部には捻れた2本の角。背には漆黒の翼。


 その姿は御伽噺に出てくる悪魔のようだ。


「皆下がれ!あれはおそらく魔族だ!下がらんと巻き添えを食うぞ!」


 無事だった隊長が叫びながら結界を構成していく。


 無駄だ。


 そもそも、魔族と人は根底から違うのだから。


 魔族に、人の魔法では勝てない。


 魔族とは、魔法を息をするかのように使う。


 対峙する以前の問題だ。


 何故ここに!この状況で!


 本来、人の争いに加担しないはずの魔族。


 強大な魔力に、押しつぶされるような圧迫感を感じる。


 いくら本性が竜とはいえ、魔族と戦うには場が悪い。


「魔族が人の戦いに介入するのか!」


 ギラギラと光る真紅の瞳から逸らすことなく魔族を睨みつけた。


「利害の一致だ。たまにはこうゆう余興もよかろう?」


 圧倒的に不利の中、上空の竜達が魔族目掛けて一斉に火を吐いた。


 激しい熱波の中でも魔族は不敵に笑っている。


「!!来るぞ!下がれ!」


 竜騎士達に叫びながら、今もてる全力の力で結界を構築する。


 激しい爆音が響き渡る。


「ほぉ、今のを防ぐか人間。なかなか腕の良い魔道士だな」


「この戦いのカラクリはおまえか。人をアンデットに変えたな!?」


「いい考えだろう?繰り返し使える便利な道具だ」


「人は魔族の道具ではない!」


 考えろ!どうする!


 ここにはルーがいる。


 絶対に死なせる訳にはいかない!


「…隊長、私が時間を稼ぎます。皆を引かせてください」


 絶望が支配するこの戦場で、私にできることはただひとつ。


 私自身が、魔族に対抗できる唯一の手段。


「バカな!相手は魔族だぞ!1人でなんて無理だ!」


「邪魔なんです!…全力でいきますから。皆がいると巻き込んでしまう。それにこの戦場には陛下がいます。絶対に失うわけにはいきません!お願いします!」


 視線を魔族に定めたまま、隊長に願う。


 どうかルーを戦場から連れ出してくれと。


 失えないんだ。


 大切な愛しい子なんだ。


「お願いします!」


 もう一度強く言うと、隊長は撤退の指揮を取るため私に背を向けた。


「死ぬな…」


 小さく聞こえた隊長の声が酷く苦痛に満ちた声に聞こえたが、私は敢えて無視をした。


 死ぬつもりなどない。


『私』の全力で相手をしよう。


 私を舐めるなよ魔族。

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