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最前線で戦ってみる

 私が最前線で戦いだして、もうどれほどの時間が流れ、血が流れたのか…。


 時間の感覚さえ麻痺する空間で、敵を焼き尽くし、剣で切り敵を屠る。


 時には氷漬けにして砕いた。


 どれだけ敵を倒しても次々と沸いてくる。


「デール!焼き払え!」


 だんだんと煩わしくなり、後方にいる同僚に全力で叫んだ。


「皆引け!デールの炎獄がくるぞ!」


 味方陣営が一斉に後方に下がったのを合図に、巨大な火柱が敵を襲った。


 私は味方に被害が及ばないように結界を張り衝撃に耐える。


 凄まじい爆風と熱波が結界をビリビリと揺らしていく。


 爆風がおさまった後には何も無かった。


 人であったものの痕跡すら残さず燃え尽きたのだ。


 デールは大技の後のインターバルが長い。


 しばらくは援護はあまり期待できないだろう。


 デールの後を引き継ぐように私は魔法を紡いだ。


「氷獄!」


 分厚い氷の壁が立ちはだかり、敵を堰き止める。


 その場凌ぎだが、体制を整える時間稼ぎにはなるはずだ。


 敵も同じくではあるだろうが。


 ***


 崩れた陣形を整えつつ、負傷者を下がらせたりしていたら、大きな羽音が聞こえてきた。


「おい!竜騎士だ!竜騎士が来たぞ!下がれ!下がるんだ!ブレスに焼かれるぞ!」


 騎士隊の部隊長が騎士達に指示を出し、皆が一斉に下がると、竜達が一斉に火を吐いた。


「やっと竜騎士が来たか…」


 上を見上げると十数体の竜が空を旋回していた。


 敵も竜騎士の登場に警戒して、後方に下がっていく。


 竜騎士達の中に、黒い髪の騎士が見える。どうやら陛下自ら出陣してきたようだ。


 茶色の巨大な竜がこちらに向かって飛んでくると、上空から誰かが飛び降りて、私の横に着地した。


「シェラ、一度下がれ。竜騎士の参戦で戦局はやや停滞するはずだ。今のうちに休め」


 竜騎士達と共に来てくれたのは、魔導騎士隊隊長のランスと、魔導騎士隊の隊員達だった。


 王都から急いで来てくれたのだろう。


「助かります。…ランス隊長、敵の攻撃が妙です。どうみても騎士達を使い捨てにしているとしか思えません。何かを企んでいるかもしれませんので気をつけてください」


 戦いの中で、戦略は最重要だ。


 だが、今回の戦いは妙としか思えないのだ。


 ただ闇雲に兵を投入しているとしか思えない。こんなのは戦略とは言えない。


 ただの馬鹿だ。


 大量に投入される兵士達と相対する私達には、疲弊が溜まっていくばかりだ。


 それなのに、兵士はどんどん投入されていく。


 こんなのはただの消耗戦じゃないか。


 指揮官がただの無能なら問題ないが、何か別の策に対する陽動なら危険だ。


「あぁ、気をつけよう。デールにも声をかけて休め。開戦から半日以上魔法を使い続けて、デールもそろそろ燃料切れじゃないか?」


 半日以上たっていたのか。


 前を見ると竜騎士達や騎士達が再び戦闘を開始していた。


 魔導騎士隊の皆も、敵陣営に魔法を放っていく。


 皆が疲弊していく戦い…。


 まさかそれが狙いか?


 だとしてもそれはお互い同じではないか。


 考えすぎならいいが…。


 その時、上空を旋回していた、黒い竜がこちらに近づいてきた。


 ルーが騎乗している竜だ。


「シェラ!無事だったか、よかった。最前線で戦っていると聞いて心配していたよ。今はしばらく後方で休んでてくれ」


 ルーが竜に騎乗したまま、私の頭の少し上の高さでホバリングしている。


「はい、ありがとうございます。陛下もお気をつけて」


 私は陛下とランス隊長と別れ、後方に下がった。


 もちろん途中で、ガス欠デールも忘れずに拾って。


 ***


「あぁぁぁぁ、疲れたぁ…」


 天幕に着くとデールがすぐにへたり込んだ。


 確かにあれだけ特大の魔法を連発していれば魔力切れにもなるだろう。


「お疲れ、何か食べるか?」


「食べる!食べなきゃ魔力も回復しないしな。食べれる時に食べる!」


 そりゃ、ごもっとも。


 正直、私も腹ペコだ。


 配給されている食事を取っていると、デールがそれはそれは重たい溜息を吐いた。


「にしてもさぁ、今回の戦いおかしくないか?倒しても倒しても湧いてくるし、ゾンビか!って感じだよ…」


「確かにな。消耗戦もいいとこだ。朝から同じ事を延々と繰り返し、流石にうんざりだな」


「あんなに兵士を使い捨てにしてさぁ、なんでまだあんなに次々と兵士を投入できるんだよ?」


「さぁな。だが、現実に次々と湧いてくるんだから仕方ないじゃないか」


 実際私もそれが気になってはいるんだがなぁ。


 案外、本当にゾンビです。ってのが現実感ありそうだ。


 私達は束の間の休息をそれぞれ取り、再び前線に出る為に天幕を出た。

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