表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/14

拾ってみた

前に投稿していた作品を書き直したモノになります。

相変わらず初心者なので、拙い作品で、読み辛いかと思いますが、生暖かい目で見ていただけると嬉しいですm(__)m


R15と残酷描写は、保険です(^^)

「ほら、ルー。もう泣かないで」


 とろけそうなほど潤んだ瞳を覗きこみながら優しく語りかけると、安心したのか気の抜けた顔で笑いかけてきた。


「ここにいてもいい?」


 ルーはまだ不安なのか、私に抱きついたまま瞳を潤ませている。


「大丈夫。私はここにいるし、どこにもいかない。ルーの側にいる」


 私の言葉を聞き、やっと涙を拭い抱きついていた手を離した。


「ねぇ、名前はないの?」


 確かに、ルーをこの森で拾ってから7日になるが、まだ名を名乗っていなかった。うん。自己紹介は大事だ。


 しかし、人の子に無闇に名を明かすことはできない。だが、名がなければ呼べない、ふむ…。


「では、ヴィーと呼ぶといい」


 ルーは何度かモソモソと名を呼ぶ練習をすると、輝かんばかりの笑顔で私の名を呼んだ。


「ヴィー!」


「ん」


「ヴィー!」


 若干苦笑しながらも答えてやると嬉しそうに抱きついてきた。


 ***


 ルーを森で拾ったのは7日前になる。


 いつものように森を散策しながら結界の綻びを修復していた私は、木の根元に座りこんでいた少年をみつけた。


 遠目で見ても、かなり身なりがいい少年だ。


 艶やかな黒髪、どこか虚ろな蒼い瞳。


 力尽きたように座りこんで、ただ前をぼんやり見ている。


 私は少年を驚かさないように、そっと近づくことにした。


 かなり近づいても、こちらに気づきもしない少年。よくみればあちこち泥まみれだ。


 人の子がこの森に足を踏み入れることはそうはない。


 間の森。魔の森。真の森。字は違うが、様々ないわれがあるまのもり。人からも、魔からも敬遠される、この大陸最大の森だ。


 一度足を踏み入れれば戻れない、森の主に喰われる、違う世界に連れていかれるなど、さまざまないわれがあるこの森に、幼い少年がこんなに深くまで足を踏み入れるということは、何かから逃げているのか?


 それとも置いていかれたか?


 深くまで潜る人間が全くいないわけではない。深く潜れば貴重な薬草などもあるし、珍しい動物もいるからだ。


 前者にしろ後者にしろ、見つけてしまった以上放置もできない。


 意を決して少年の前に立って、少年に話しかけてみた。


「少年?こんな深い場所に1人か?」


 いきなり目の前に人が現れ(厳密には人ではないが)話しかけられた少年は驚きつつも立ち上がる気力もないのか私を見上げたまま動くことはなかった。


 しばらく見つめあっていると少年がか細い声で何か言った。


 あまりに小さな声だったが、私の耳にはしっかり届いていた。


「魔物?」


 …そうか、私の姿は人の子からは魔物にみえるのか。怯えさせてしまっただろうか?


 だが、少年の蒼い瞳に怯えは見当たらない。


「私はこの森に住む者だ。魔物ではないよ」


「でも髪真っ白…そんなのお祖母様しか見たことない」


 ただ無駄に伸びている私の銀髪が少年には白髪に見えたのか不思議そうな顔をしていた。


「それよりも1人でこんなに深い場所まで来たのか?もうすぐ日も落ちる、ここはあまり安全ではない」


「帰る場所もないし、もういいんだ。動く力もないからこのままでいい」


 酷く虚ろな表情のまま、たんたんと語る少年に、私は久しく忘れていた心の揺れを感じた。


 こんな幼い少年を、こんな場所で1人にしてはいけない。


 そう、最初は好奇心だったかもしれない。


 そのうちに、笑った顔が見てみたいと思った。


 私と同じ蒼い瞳に、光を取り戻してやりたいと感じた。


 少年は、喋る力も尽きたのか、目を閉じたまま動かない。


 ゆっくりとした呼吸音が耳に届く。


 私は少年をそっと抱き上げるとその場を後にした。

不定期更新ですm(__)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ