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第七話 怪談編 Part2

 浜田「へ〜ちょ! へ〜ちょってば!!」

 五十嵐「う〜ん。はっ、なっちゃん!? あたしいったい……」


 倒れていた五十嵐はガバリと立ち上がる。きょろきょろとあたりを見渡して、今ひとつ心の整理が出来てないようだ。


 大島「山崎の怖い話で気絶してたお」

 五十嵐「え、あ。そっか。たしか、息子さんから電話がかかってきて…… それで……」

 浜田「無理に思い出すと、また気絶するからやめた方がいいよ」

 五十嵐「え、あうん」


 浜田に言われ少し考えた後、五十嵐は席に座った。


 大島「さて、山崎の話が終わったところで、今度はへ〜ちょの番だお」

 五十嵐「あ、あたしの番?」

 大島「びしっと怖い話を頼むを」


 未だに脳内の整理がついていないのだろうか、五十嵐は何を言っていいやら分からず不安げに空を見つめる。


 大島「どうしたお、はやくするお」

 五十嵐「え〜と、その…… う〜んと……」


 五十嵐「ム、ムックは、イエティの子供!」


 一陣の風が吹く。何を言っているのか分からず、五十嵐以外の人間がみな固まった。


 浜田「へ〜ちょ。それは怪談じゃなくて、トリビアだよ?」

 五十嵐「えっ、え? それじゃ、ガチャピンは恐竜の子供で、二人とも卵から産まれたって言うのは?」

 大島「それもトリビアだお」

 山崎「へ〜」


 大島、浜田のツッコミに、ますますテンパる五十嵐。あわあわと、目を回しあせっている。


 五十嵐「それじゃえーと。二人は師弟関係だったり、実はガチャピンがブログつけてたりするのは?」

 浜田「トリビアだね」

 大島「というか、全部ウィキペディアからの転載ばかりだお」

 山崎「へ〜へ〜」

 五十嵐「そ、それじゃ、あの。たべちゃ〜う」

 大島「既出」

 五十嵐「はうはう……」


 ヘタリと落ち込む五十嵐。大島はたまらずため息をついた。


 大島「まったく、怖い話の一つや二つ知ってないのかお」

 五十嵐「知らないもん。聞きたくないし見たくないもん怖い話なんて!!」

 大島「おこちゃまだお、へーちょは」

 五十嵐「うぅ…… 酷いよ島ちゃん。私一応兵長なんだよ。この中で一番偉いさんなんだよ」


 半べそをかきながら五十嵐は、大島をにらみ付ける。大島もなんだという感じで五十嵐をにらみ返す。

 険悪な雰囲気に、山崎・浜田は息を呑む。


 山崎「まぁ…… いいじゃねえか。怖がってる奴に無理やり話させる必要はねえよ」

 浜田「そうだよ。へ〜ちょも大島も少し落ち着こう。ね?」


 たまらず浜田が割ってはいた。五十嵐は大島から隠れるように浜田に飛びつく。しかし浜田の背中越しに大島を睨むのはやめない。そして、大島もそれを緩めるつもりも、五十嵐を許す気も無いらしい。


 大島「嫌だお、順番どおりへ〜ちょに怖い話をさせるお」

 浜田「大島〜」

 大島「だいたい怖い話が嫌いなら、嫌いになった原因があるお。それを話すお、へ〜ちょ」

 五十嵐「嫌だもん!!」

 大島「話すお」

 五十嵐「嫌ったら嫌!! 島ちゃんなんか嫌い!! 大っ嫌い!!」


 そういって、浜田の胸に五十嵐は顔を隠した。流石にやりすぎかと、山崎が大島をとめようとした時、ついに大島が立ち上がって吼えた。


 大島「話さないと、霊が怒るお。それでも良いかお!!」

 五十嵐「良いもん、どうせここに幽霊居ないし!!」

 大島「居るお。いっぱい居るお。そっちの木の影にも、あっちの木の上にも黒い靄がかった霊が居てこっちを見てるお」

 五十嵐「ちがうもん。木の影に居るのはライオン。木の上に居るのはテナガザルだもん!!」

 大島「嘘つくなだお!!」


 五十嵐の浜田をつかむ手がいっそう強くなる。一方の浜田と山崎は顔を青ざめさせている。


 浜田「あの〜。へ〜ちょさん、大島さん。さっきから、いったいどこの話をしていらっしゃるんですか?」

 大島「どこって、そっちの木の影と、あっちの木の上だお」

 山崎「指を指してもらえると助かるんですが、出来れば二人同時に」


 そういって、大島と五十嵐は指を刺す。それはどっちらもまったく同じ場所。つまり。


 五十嵐と大島には山崎、浜田に見えない何かが見えている。


 大島「だから、動物じゃないお。アレは幽霊だお」

 五十嵐「ちがうもん、ちょっと色薄いけどアレは動物さんだもん!!」

 浜田「大島。ちょっといいかな?」

 大島「なんだお、見えもしないのに話に割り込んでくるなお」

 山崎「いや、気づいてないようだから…… まぁ、いいからこっちこいや」


 そういって山崎と浜田は大島を林へと引っ張っていく。一人残された五十嵐はちゃぶ台で悔しそうに涙を流し、その後姿を見送った。


 数分後


 大島「……」


 浜田「……」


 山崎「……」


 男三人は押し黙っていた。

 戻ってくるころには寂しさからか、五十嵐もしおらしくなっていた。


 五十嵐「ごめんね皆」


 大島「……」

 浜田「…… いいよへ〜ちょ、気にしなくても」

 山崎「…… そうだ、お前は何にも悪くない。悪いのは全部大島だ」

 大島「悪かったおへ〜ちょ。このとおりだお」


 大島は五十嵐の前に膝をつき土下座をする。


 五十嵐「島ちゃん!? そ、そんなことまでしなくていいよ!!」

 大島「いや、すみませんでしたお。自分がおろかだったお。中途半端な霊感で、威張ったりしてすみませんでしたお」

 五十嵐「もういいよ。それよりほら、早く顔を上げて? ひとつだけ怖い話思い出したの、皆に悪いからその話するね」


 というや否や、顔を上げ五十嵐の前のろうそくを消す大島。


 五十嵐「え、島ちゃん!? まだ、私怖い話してないよ!!」


 山崎・浜田・大島「「「いいえ十分怖い思いさせてもらいました」」お」



 五十嵐「???」

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