第四話 Oushima is a VIP○ER
五十嵐「島ちゃん、お醤油とって〜」
手で探れるほどの調味料置き場に、醤油が無いことを思い出した五十嵐は、暇そうな大島に持ってくるように頼む。
本日の夕飯である親子丼を焚き火の上で作っている五十嵐は、フライパンから手を離せない。
大島「わかったお。浜田醤油もっていってあげるお〜」
ちゃぶ台でノートパソコンに向かいなにやら打ち込んでいる大島は、めんどくさいのか伝言ゲーム調に浜田に命令を飛ばす。
浜田「もう。醤油取りに行くくらい自分でできるだろ大島」
大島「働いたら負けかなと思ってるお」
浜田「わけわかんないよ」
しかしながら、やれやれといった感じで醤油を探し五十嵐の下へ持っていく浜田。人がいいのか、抜けているのか。
なんにせよ、大島はそんなことを脇目にも入れずに、ひたすら何かを打っている。
五十嵐「お醤油、お砂糖、だしのもと…… あと、何入れるんだっけ? 島ちゃ〜ん!」
調べようにも、料理の本が無いので仕方なく人に聞く五十嵐。今まで一生懸命何かを打っていた大島も、いったんタイプを中断する。
大島「ちょっと待つお。いまググルお」
浜田「お酒じゃなかったっけ?」
五十嵐「ん〜なんか違うと思う……」
大島「わかったお! みりんが足りないお」
浜田「あぁ、みりんか!!」
五十嵐「島ちゃんありがとう!」
大島「おいしい親子丼作ってくれだお」
と、そこでライフルの整備をしていた山崎の手が不意に止まる。
山崎「ちょっとまて、大島」
大島「ん、なんだお?」
山崎「それはいったいなんだ?」
そういって山崎は大島のノートパソコンを指差す。
大島「F○Vだお」
山崎「いや、そういうことじゃない。
なんでノートパソコンが動いてるんだ?」
五十嵐、浜田の手が止まる。
そういえば確かにそうだ。まるで当たり前の如くノートパソコンを使う大島に、今まで疑問のぎの字も思いつかなかった。が、よくよく考えると、ジャングルの奥地でどうやって、ノートパソコンに電気を供給しているのか。
大島「あぁ、そんなことかお」
固まる五十嵐・山崎・浜田を前に、気にしないそぶりでキーボードをタイプしながら答える大島。
大島「大型ソーラー発電機があるからそれで発電してるお。ほら」
そういって引っ張ったFMVの電源コードの先には、確かにソーラー発電機がある。
山崎「なるほど、それでパソコンができるのか」
大島「今は必要ないけど、扇風機とヒーターまわす位の電力は余ってるお」
五十嵐「じゃぁ、暑くなっても、寒くなっても大丈夫だね!」
大島「そうだお。さ、分かったら邪魔しないお!」
山崎「……」
大島「今北産業」
山崎「…………」
大島「やあ (´・ω・`)」
山崎「まて、大島!! おまえ、何やってるんだ?」
大島「またかお、今日はいったいどうしたお」
大島は手を止めて、めんどくさそうに山崎をにらみつける。
山崎「おまえ、今いったい何をしてるところだったんだ?」
大島「V○Pでスレ立ててたお」
山崎「V○P? なんだそれは…… まぁいい。つまり、インターネットしてたわけだな?」
大島「そうだお」
山崎「なんでこんなジャングルの奥地で、インターネットに接続することができるんだ!!」
五十嵐、浜田の手が止まる。
そういえば確かにそうだ。まるで当たり前の如くインターネットをする大島に、今まで疑問のぎの字も思いつかなかった。が、よくよく考えると、ジャングルの奥地でどうやって、インターネットに接続しているのか。
大島「あぁ、そんなことかお」
そういって大島はLANケーブルを指差す。LANケーブルの先にはなにやら怪しげな装置二つを経由した後、衛星放送受信用のアンテナにつながっていた。
大島「衛星経由でデータを落としてきてるお」
山崎「な、衛星?」
大島「そうだお。日本軍上空を飛んでいる静止衛星とやり取りして、データを送ってきてもらってるお。で、アンテナに近いほうが衛星モデムで、もうひとつがルーターだお。まだ腐るほど開いてるから、PCさえあればまだつなげるお」
五十嵐「へー。じゃぁ、私も一台買ってこようかな?」
大島「だったら、これを譲るお。そろそろ新しいのが欲しかったお」
嬉々として語る五十嵐。
しかし、山崎の眉間には皺がよったままだ。
山崎「山崎。こんなことして、お前金は大丈夫なのか?」
大島「ん〜。民間使うと月々大体20万円くらいかかるお」
山崎「……どこからその金は捻出してる」
山崎の眉間の皺が重なり、顔がいっそう険しくなる。
大島「大丈夫だお。
高部の所有物だから、使用量とかの請求は全部高部にいくお」
山崎・浜田の血の気がさっと引く。
大島「機械音痴のあいつが持ってても使いようが無いお。漏れが使ったほうがよっぽどこいつらも幸せだお」
山崎「つまり、それは高部大佐の陳情品ということなんだな……」
大島「そうだお」
悪びれるわけもなく言い放つ大島。
その態度に、さらに二人の血の気が引く。
浜田「ま、まさかこれも……」
そういって、浜田が指差したのはソーラー発電機。
即答といった感じに、大島は首を縦に振った。
大島「そうだお。あいつが持ってても宝の持ち腐れだお」
山崎・浜田「……」
大島「だいたい、おかしいお。
インターネットがしたいとか言って、わざわざ自分専用の衛星を打ち上げるなんてどうかしてるお。
あまつさえ、発電機まで用意して、おまけに最新型のノートパソコンだお。
そういうのはパソコンを終了できるようになってからするお」
山崎・浜田「……」
大島「昔からそうだお。何かにつけていい設備だけそろえて、結局どれも使いこなせ……」
大島の熱弁をよそに、二人はどんどん風化していった。
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乃木「高部君。パーソナルコンピューターがつけっ放しじゃぞ」
乃木総督はソファーでくつろいでいる高部をたしなめるように言う。
高部は申し訳なさそうに起き上がると一礼する。
高部「乃木総督。すみません、私終了の仕方がワカランのです」
乃木「なんと、それは困ったのう」
パソコンの前で硬直する大の大人が二人。
乃木「しかし、パーソナルコンピューターが使えるとは。おぬしも中々やるのう」
高部「いえ、私などまだまだですよ」
乃木「どれこの老いぼれに何か教えてくれんかのう」
高部「では、マインスイーパーなど……」