第三話 鳩胸肉編 Part2
突如五十嵐たちの前に現れた、手羽先銀河ササミ系第七惑星の鳩胸肉マン。いったい、奴の目的は、そして浜田の安否は如何に。
鳩胸肉「もっと怖がるなりなんなりしろよ。張り合い無いだろ!!」
鶏冠を真っ赤にして怒る鳩胸肉マン。鳩胸肉なのに、頭はどう見ても鶏だ。
山崎「お前らと戦うために此処に来てるのに、怖がるも何も無いだろ?」
山崎は正論を吐いた。
五十嵐・大島「「ね〜」だお」
鳩胸肉「うぐ。しかしだな、ヒーロー物とかの鉄則として」
山崎「宇宙人がヒーロー物とか語るなよ」
山崎はもっともらしい正論を吐いた。
五十嵐「それにあたしたち軍隊だし」
五十嵐はあやしい正論を吐いた。
大島(あんたがそれを言うのはおかしい気がするお)
大島は正論らしい正論を吐いた。
山崎「大体、ヒーロー物がどうとかって…… 暗に倒してくださいって言ってるようなもんじゃん」
五十嵐「そうだよね〜。もしかして、かませ犬さんなのかな?」
大島「負け犬根性が染み付いてるお」
鳩胸肉「うぐ!! うぐ!!」
山崎「それに、どっからどう見たって被り物みたいな頭だし。実際お前、マスクマンじゃないの」
大島「マスクとったらピカーって光るお。『うぉっまぶしっ』って。」
山崎「居そうだよな〜あぁいう超人。悪○超人とかで……」
大島「しかも人気無くて、今後絡んでこない捨てキャラだお。きっと、スプリン○マンとかだお」
山崎「いや、ベン○マンだろ」
やんややんやと、キ○肉マン論争を始める山崎と大島。鳩胸肉マンはというと、鶏冠はしなだれ目は濁り全身から不のオーラを発散させている。
鳩胸肉「お前たち、まるで俺をジャ○プ黄金期のプロレス漫画に出てくる、超人みたいに言いやがって」
山崎・大島「「そうじゃないのか?」お?」
そのとき、何かが切れる音がした。
鳩胸肉「ちがうわー!! おれは、噛ませ犬でも悪○超人でもねえ!!宇宙人、鳩胸肉マンだ!!」
山崎「はぁ」
鳩胸肉「はぁ、じゃねえぇ!! 俺をなめ腐りやがってぇ!! てめえら全員、ブロイラーの如く炙り焼きにしてやる!! 幼くして食肉にされる、鶏の気持ちをちったあ思い知れ!!」
鳩胸肉マンは先程と打って変わり、鶏冠を真っ赤に充血させ、ブロイラーの如く真っ赤な顔をしている。
大島「鳩胸肉マンなのに、顔とやってることは鶏だお」
怯えるでもなく冷静にツッコミを入れる大島。
鳩胸肉「うるせぇ!! 好きでこんな顔に生まれたんじゃねえし、名前になったんじゃねえんだよ!!」
大島の言葉にさらに逆上したのか、鳩胸肉マンは白目をむいて、口をだだびろげにする。
山崎「どうでもいいけどよ、ベン○マン?」
鳩胸肉「誰がベン○マンだ!!」
山崎「前見ろ」
いつの間に近づいていたのか、五十嵐が鳩胸肉マンの懐に潜り込んでいた。
五十嵐「無謀突撃!!」
鳩胸肉「うぉおおおお!?」
五十嵐の捨て身のタックルが鳩胸肉マンの胸板にクリーンヒットする。当たり所が悪かったのか、五メートルくらい鳩胸肉マンは吹っ飛んだ。
大島「今だお!!」
言うが早いか山崎と大島が、倒れている鳩胸肉マンに駆け寄る。二人はリ○チよろしく、鳩胸肉マンを蹴りだした。
山崎「オラ!! オラ!! オラァ!!」
鳩胸肉「やめて、痛い。ちょ、おま。そこは、ふぐぅ!? おほ……」
力いっぱいの蹴りを入れる山崎。
大島「宇宙人め、成敗してやるお!!」
鳩胸肉「ぬふぅ!! へぶ… あべし!!」
力こそ足りないものの、えげつないところを平然と蹴りあげる大島。
五十嵐「えーい。えーい」
そこに五十嵐も混ざる。
鳩胸肉「たんま!! たんま!! ちょっとたんま!!」
たんまの声に一同の足がやっと止まる。
鳩胸肉「お、お前ら悪魔か!?」
五十嵐「地球を侵略する宇宙人に、容赦など無用なのだ」
山崎・大島「「おなじく」だお」
鳩胸肉「人道的に間違ってるだろ!!」
山崎「侵略者にそんな事言われる筋合いなど無い」
大島「侵略者が人道的とか、そっちのほうがどうかしてるお」
五十嵐「ねー、そろそろ再開しない?」
五十嵐の言葉に、鳩胸肉マンの顔が引きつる。
鳩胸肉「わーちょっと。まだ、まだ。あと三分だけ待って。三分だけ」
五十嵐「えー」
大島「逃げる気だお」
鳩胸肉「逃げないって!! ちょっと行ってすぐ帰ってくるから。ね? ね?」
山崎「信用できないな」
鳩胸肉「信用してよ。ほら、すぐそこ。すぐそこの林に行って戻ってくるだけだから」
五十嵐「戻ってこなかったら、針千本だからね」
鳩胸肉「針千本でも、千本ノックでも受けるからさ。ね? ね?」
大島「よし、行って来るお」
鳩胸肉「よし。そこで、待ってろ。すぐ戻ってくるからな!!」
鳩胸肉マンは立ち上がると出てきた林のほうへと駆ける。そして、一度茂みの中にしゃがんだかと思うと、なにやら重そうなものを肩に担ぎだした。
よく見れば、浜田である。
鳩胸肉「お前たち!! こいつの命がどうなってもいいのか!!」
五十嵐「な、なっちゃん!!」
山崎「ベ、ベン○マン! てめぇ!!」
大島「汚いお! ベン○マン!!」
鳩胸肉「お前らに言われたかねえよ!!」
ぐるぐるに縄で縛られた浜田は泣きながら五十嵐達に助けを求めている。
五十嵐「なっちゃーん!! 大丈夫!?」
浜田「へ〜ちょ助けてー!! こいつ、鶏糞の匂いがして臭いんだー!! それに汗っぽいしむさ苦しいし!!」
山崎「うわぁ!! 最悪だな」
大島「べっとり匂いが染み付いてしばらく取れなさそうだお」
五十嵐「うそ、あたしタックルしたけど大丈夫かな……」
山崎「どうする、そんな臭いの助けてもしょうがないしな」
浜田「そんな!! 山さーん、見捨てないでー!!」
涙を流して嘆願する浜田。
五十嵐「みんな、いくら臭そうだからって、仲間を見捨てたら人間失格だよ!!」
五十嵐がリーダーらしく皆の前に立ち雄弁を振るう。
大島「だったらへ〜ちょが助けに行けば良いお」
山崎「そうだ、タックルして匂いも移ったし、ちょうどいいじゃねえか」
五十嵐「いやよ、これ以上鶏糞臭くなりたくないもん」
五十嵐の雄弁はきっぱりと詭弁に変わった。
浜田「皆酷いよー!!」
鳩胸肉「人間としてどうかしてる……」
あきれた様子で鳩胸肉マンは、誰が助けに行くかでもめている一行を見つめる。
鳩胸肉「えーい。皆の者、こいつを返して欲しくば、そこを動くなよ」
山崎「く、卑怯だぞ! どうするつもりだ!!」
五十嵐「皆、ここはおとなしく奴のいう事を聞きましょう」
神妙になった五十嵐たちに、鳩胸肉マンは悪人らしくほくそえむ。
鳩胸肉「よーし、それで良い。おとなしくそこでま…… って、おい!! 何動いているんだ」
浜田「お、大島ぁ〜!!」
大島は五十嵐の命令も無視して、ちゃぶ台になにやらとりに戻る。
五十嵐「島ちゃん。おとなしくしないと、なっちゃんが!!」
大島「おとなしくしたところで、結局やられるだけだお。だったら、別に言うことを聞く必要なんてないお」
山崎「それもそうだな」
五十嵐「山ちゃん!!」
山崎もそれもそうだという感じでちゃぶ台に戻る。一人残った五十嵐はおろおろと浜田の方を見ている。
五十嵐「なっちゃーん!! 私は見捨てないからね!!」
浜田「ありがとう、へ〜ちょ!!」
鳩胸肉「くそう、まぁ良い。一人ずつ地獄に送ってやるぜ!!」
そういうと、鳩胸肉マンは大きく口を開き力みだした。
五十嵐「な、何?」
山崎「卵でも産む気か?」
それは違う漫画だ。
鳩胸肉「ふふふ、喰らえ!! ハト…」
大島「それは既出だお」
鳩胸肉マンの動きが止まる。と、同時に鳩胸肉マンの額に一筋の汗が流れる。
鳩胸肉「既出?」
大島「今さっき、『ハト 必殺技』でググッたお。そしたら、既に口からビームを打つのが他の漫画であったお。違うのにするお」
大島の前にはどこから取り出したのか、ノートパソコン(FMV)が置いてある。
鳩胸肉「え…… えぇ?」
大島「違うところからビームを打つお」
鳩胸肉「い、いきなりそんなことを言われても……」
おもいっきり鳩胸肉マンがたじろぐ。
大島「はぁ…… 駄目だお、悪○超人の癖に技がパクリだ何て。そんなんだから人気が出ないお」
山崎「そうだそうだ!! このパクリ超人」
大島「技をパクルなんてやる気以前の問題だお」
山崎「やる気あんのか、コノヤロー」
五十嵐「やる気あんのかー!!」
鳩胸肉マンに浴びせられるブーイングの嵐。いつの間にやら鳩胸肉マンは額に汗をかきまくっている。
鳩胸肉「そ、そんな、ま、まだ出してないから…… パ、パクリとかそういうのじゃ……」
大島「じゃぁ早くやるお」
五十嵐「早くやれー!!」
山崎「やる気あんのか、コノヤロー!! 金返せー!!」
うろたえ気味に周りを見回すと、鳩胸肉マンは硬直する。
鳩胸肉「……」
五十嵐・山崎・大島「「「……」」」
鳩胸肉「ち……」
五十嵐・山崎・大島「「「ち?」」」
鳩胸肉「チクビーム!!」
自慢の鳩胸に手をよせてアップする鳩胸肉マン。
しかし、それよりもあたりを包む静寂の方が痛かった。
大島「それもパクリだお」
鳩胸肉「グハァ!!」
羞恥心と自尊心からか、鳩胸肉マンは血を吐いてその場に倒れた。投げ出された浜田に五十嵐たちは駆け寄る。
鳩胸肉「くは、いっつもそうやねん。わし、いっつも人のネタパクって
ほんまどうしようもない奴何や…… わいは……」
山崎「ベン○マン……」
五十嵐「噛ませ犬さん……」
鳩胸肉「笑え、笑えよ!! 排気ガスで汚れてしまった黒鳩と笑っておくれよ」
大粒の涙を流し地面に突っ伏す鳩胸肉マン。そこに、大島が手を差し伸べる。
大島「立つお」
鳩胸肉「あ、あんた…… わいはあんたらを殺そうとしたのに……」
大島「お前は自分を少し見失ってただけだお。ほら鏡を見てみるお」
大島は鳩胸肉マンにそっと手鏡を手渡した。自分の顔を覗き込み、鳩胸肉マンは酷く驚く。
鳩胸肉「この顔は…… お、俺…… そ、そんなまさか……」
大島「そうだお、お前は鳩なんかじゃないんだお。だから、これからは本当の自分を出して生きていくんだお」
鳩胸肉「お、お…… 俺」
大島「もう、大丈夫だお。お前は自分が何者であるか今知ったお。これでもう自分を見失うようなことは無いお。そうすれば、誰もお前をパクリ野郎だ何ていわないお。さぁ、胸を張るお」
鳩胸肉の涙は、いつしか感涙に変わっていた。立ち上がると、しっかりと大島の手を握る。
鳩胸肉「俺、やっと分かりました。これからは、本当の自分を皆に見せていきます……
鶏として生きていきます!!」
大島「いや、お前はチャボだお」
鶏ですらなかった。