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第二十七話 秋の味覚編 Part7

 サイラ「とにかく、これで拙者の言っていたことが正しいと証明されたわけでござるな」

 山崎「え、あぁ。まぁな」

 大島「助けてもらっておいて、いまさら信じないわけにはいかないお」

 浜田「だよね」


 そういって辺りを見回す三人。どうやら、先ほどの攻撃は全軍突撃だったらしく、辺りにキノコの気配は無い。それで安心したのか、ほっと浜田はため息をついた。山崎も大島もそれは同じであろう。


 大島「それにしても、恐ろしい奴らだったお」

 サイラ「そうでござろう。たかがキノコ、されどキノコ。奴らは、自分たちの種が残るためなら、何だってする。たとえ自分のみが滅びようとも、自分たちの敵になるものは徹底的に排除するのだ」

 浜田「もしかして、ここ最近動物を見かけないのも」

 サイラ「奴らの仕業だろう。おそらく、隣の山辺りに移動していると思うぞ」


 ふと、浜田が山崎のほうを見て驚く。みれば、山崎は真っ赤に見えそうなくらいに怒気を体を使って現している。


 山崎「俺たちを騙した上に、大切な蛋白源がいなくなった元凶だっただと!!!」

 浜田「ちょ、大島!! 山さんが!!」


 大島の方を向く浜田。だが、先ほどと同じように固まりつく。やはり大島も蛋白源を遠ざけられた怒りに震えていた。


 大島「キノコばっかり食べさせられて、正直辟易してたお!! 元凶は取り除くお!!」

 浜田「そういえば、二人とも肉好きだもんね……」

 山崎・大島「「サイラさんよ!! とっとと倒しにいこうぜキノコ野郎とクリ野郎を!!!」お!!!」

 サイラ「と、とりあえず落ち着くでござるよ二人とも。せいても事は始まらんでござるからに……」

 

 復讐に来た人より熱になってしまってはどうしようもないなと思う浜田。

 と、そのとき。林を動く影に気がつく。


 浜田「だ、誰だ!!」

 山崎「キノコ野郎か!!」

 

 醤油「くくくく、そうじゃたわけどもめ!! そちらから出向かずとも、こちらから出向いてやったわ」

 

 林から姿を現す醤油。そして、その隣には白衣に身を包んだ栗。数で圧倒的に劣るというのに、いたって冷静な二人の表情に浜田は嫌な予感を覚える。しかし、そんな浜田をよそに、残り三人は既に怒り心頭といった様相。身構えて襲いかかるき満々である。


 山崎「とんだ間抜けだなこのキノコ野郎!! ぶっ殺して今日の夕飯にしてくれる!!」

 大島「お前たちが追いやった鶏と一緒に鍋にしてやるお!!」

 栗「ふん。もう少し動いてくれるかと思ったが、案外使えない奴らだった。もう用は無い、殺してやるよ」

 醤油「ん、どうやら懐かしい顔がいるじゃないか?」


 醤油はサイラを見据えてくいと首をしゃくる。そのしぐさに、サイラが剣を携え身構えた。


 サイラ「貴様等に滅ぼされた故郷の恨み。今日こそ晴らさん!! 覚悟しろオトコダケ!!! クリンクリン!!!」


 一人冷静な浜田は、栗の本名に思わず噴出しそうになるが、あたりの真剣ムードに押されて笑い出すにも笑い出せなかった。とはいえ、空気は一触即発すぐにでも戦いが始まりかねない。

 これを回避しようとは浜田は思わないが、醤油側に何か考えがあるのは明らかだ。血気盛んに仲間を突っ込ませるのは得策ではない。が、はたしてこの三人が、ただ止まれといって止まるかというと、止まらないだろう。何か、止まるにいたる明確な理由と証拠が必要だ。

 では、いったいやつらは何を仕組んでいるというのだろうか。先ほどのキノコの群れは辺りには見当たらない。戦闘力こそ皆無の彼等がこうも堂々と我々の前に何故立っているのか。

 伏兵だ、これは。おそらく、先ほどの突撃キノコがそこら辺一帯に潜んでいるはずなのだ。そして、三人が襲い掛かるよりも早く、三人に襲い掛かる。彼等の創造主を守るために。

 だとすれば、どこにいる。醤油たちの後ろか、それとも僕等の後ろなのか。空か、地下か。


 そのとき、浜田は気づいた。

 既にこの山全体に、キノコの胞子がばら撒かれていることに。

 逃げ道など無い。

 襲い来るは無限のキノコ。それが一斉に自分たちに襲い掛かってくるのだ。


 浜田「駄目だ皆!! これは罠だ!!」


 浜田は叫ぶ、だが既に遅かった。三人は既に走り出し、今まさに醤油たちに飛び掛ろうとしていた。

 醤油の口元がにやりとつりあがる。浜田は南無三と目をつぶった。


 醤油「かかったなボケが!! くらえ、アンリミテッド・キ…… ホブァ!!」

 

 醤油が言うよりも早く、山崎のパンチがその頬を襲った。時同じくして、大島の一撃が栗を襲う。二人を峰打ちで成敗するサイラ。目を開けた浜田が見たのは、そんな予想外の光景だった。


 浜田「あ、あれ? キノコは?」

 山崎「オラオラ!! 余裕ぶっといて、何だこのざまは!!」

 大島「泣いて謝るお!!」

 サイラ「これは、父さんのぶん!! これは母さんのぶん!! これとこれは、死んだクリ○ンのぶんだ!!」


 ぼこぼこにされていく醤油と栗。日が沈むまで、その一方的なリンチは続いた。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 サイラ「ほら、早く来い!!」


 顔が原形をとどめていない醤油と栗を、手錠でつないで宇宙船へと連行するサイラ。そんなサイラを見つめる三人。

 醤油と栗を宇宙船の中に押入れると、サイラはこちらに戻ってきて手を差し出した。

 ぐっと握手を交わす四人。随分と短い、本当に短い間であったが、同じ気持ちの下に戦った仲間には違いない(一人を除いて)。言葉は要らなかった。

 最後にサイラは一枚の紙切れを胸から取り出す。そうして、また宇宙船に乗り込むと、手を振りハッチを閉める。

 銀色の円盤は回転し、夜の闇へと消えていった。


 山崎「いっちまったな…… あいつ」

 大島「いい奴だったお、本当に……」

 浜田「…… そうかな?」

 

 山崎が小さい紙切れを見る。大島と浜田もその紙切れを覗き込んだ。

 紙切れには、明朝体でこう書かれている。


 宇宙警察 刑事

        サイラ・シーマ


          電話番号 8921-○○34-23-☆489


 大島「なるほど、ギャ○ンの仲間だったかお」

 山崎「納得だな」

 浜田「いや、違うでしょ絶対」


 はははと笑う三人。ただ一人だけ、疲れた笑いではあったが。


 山崎「それにしても、あいつ等の罪状って何なんだろうな。侵略罪とかなんだろうか?」

 浜田「もしかすると遺伝子操作とかそういうのかもしれないね、あんな奇妙な生き物作るくらいなんだし」

 大島「いや、きっと著作権法違反だお」


 夜空を横切る流れ星一つを見上げ、男たちはいつまでも笑っていた。




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 五十嵐「もう、遅いよみんな。

 それより今日のご飯だけど、みてよこれ。

 キノコご飯に、キノコ汁。キノコのステーキに、キノコの煮物。キノコの煮っ転がしに、キノコのつみれ団子!!

 今日はいっぱい取れたから、キノコパーティーだよ!!


 あと、料理し切れなかったキノコは天日干しにしておいたから、水で戻せば使えるからね♪

 これで一年はキノコには苦労しないよー!!」


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