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第二十六話 秋の味覚編 Part6

 山崎「き、きのこ農園」

 浜田「世界の半分が……」


 サイラ「そうでござる、すでにこの山は奴らの手によって、あちらこちらにキノコの胞子がばら撒かれている!! キノコの山になるのも時間の問題でござる!!」


 一瞬の沈黙。すぐに三人口元を隠して、笑い出した。


 大島「有名なCMのフレーズが頭に浮かんだお」

 浜田「僕も……」

 サイラ「笑っている場合じゃないでござるよ!!」


 いそいそと鬘の方に、体を揺らしてにじり寄りながらサイラは檄を飛ばす。

 と、思い当たる節があるのかここで山崎が口元に手をやった。


 山崎「たしかに、カモフラージュにしてはキノコの量は異常だったよな……」

 大島「まぁ、それは確かにそうだお…… 山が一面キノコばっかりって感じだったお カモフラージュするだけなら、もっと局所的にやれば済むことだお」

 浜田「けどキノコを増やしてどうするのさ? それこそ、意味が無いんじゃないの?」

 山崎「それもそうだな」

 大島「苦しい言い訳っぽいお……」


 一生懸命自分の頭に鬘を載せることが出来ないか模索しているサイラ。山崎は近づくと、カツラを持ち上げサイラの頭にかぶせた。


 浜田「逆に僕はキノコ好きだから、毎日キノコでも別に良いんだよね……」

 大島「まぁ、確かに。キノコはおいしいお。それにあいつマツタケを栽培している感じだったお」

 浜田「あ、僕シメジ派」

 大島「なに〜。シメジ派かお、浜田。マツタケのほうが美味しいお」


 なんだか話題が外れて口喧嘩をしだす二人。そんな二人を尻目に、一人サイラの元に居た山崎はだるそうに笑った。


 山崎「まぁ、よく考えればキノコなんてそこら中に生えてるし、対して危惧するもんでもないんじゃないの?」

 サイラ「な!! 貴殿らはキノコの怖さを知らん!!」

 山崎「怖さって? 毒キノコとかそういうのか? まぁ、確かに怖いっちゃ怖いが…… 気をつければ別に」

 

 ふと、顔を真っ赤にし、鬼気迫る表情のサイラに山崎は気づく。それが、敵意によるものではないことは長年戦場を渡り歩いてきた山崎には良く分かった。これは、過去の過ちを苦とする戦士の目だ。山崎は、息こそ呑まなかったが、すっと目つきを細める。


 山崎「ただのキノコってわけじゃないんだな? いったい、何なんだあれは」

 サイラ「初めてあれが拙者の星にやってきたときも、皆そういったでござるよ。たかがキノコと……」

 

 サイラは憤怒に顔をゆがめる。感慨深い物を感じ取ったのか、山崎は腕を組んだ。

 と、不意に後ろから弾丸のごとく何かが飛んでくる。すんでの所で山崎がかわすと、それが直撃した地面が大きく窪んだ。見ればめり込んでいるのは、件のキノコである。


 ???「そこから先は、我々が話さしてもらう」

 山崎「な!? 誰だ!!」

 振り返る山崎、そこに現れたのは……


 山崎「き、キノコ!?」

 大島「うわぁ、任天堂の某キャラクターみたいなキノコがワラワラと出てきたお!!」

 浜田「ちなみに悪いほうのキノコね」


 木の上に無数に陣取るキノコたち。見た感じマツタケが少し太くなったような風貌のそいつらは、クリクリの両目でこちらを睨みつけている。そして、こちらに先ほど飛んできたキノコと、その風貌は瓜二つ。いや、まったく同じだ。


 ???「我ら、父オトコダケ博士に作られた、改造特攻キノコ軍団。その名も、タケタケ団!!」

 山崎「タケタケ団!?」


 ズイズイと前に出る三匹のキノコ。頭には鉢巻、軸の部分にはガクランという、なんだか気合の入ったいでたちであるが、身長の小ささからギャグにしか思えない。とはいえ、流石にこの状況で笑いはしないが。


 タケタケ団1「我ら作られたときよりその使命は一つ」

 タケタケ団2「この星をわれらがキノコの故郷とする為」 

 タケタケ団3「玉砕覚悟のこの身を持って、敵に当たって花と散るのみ」

 

 山崎「な、まさか。特攻部隊って……」

 サイラ「そうでござる、奴らはその身を高速射出して体当たりをするキノコ部隊。オトコダケ博士とその助手クリンクリンが作った、悪魔の生物兵器でござる。奴らは、個の保全をよりも種の保全を優先するよう人格形成をされてある。そして当たればあの威力だ。とても、普通の相手では太刀打ちできない……」

 浜田「そ、そんな…… 自分の作った生命に、なんて残酷なことを……」

 タケタケ団1「黙れ!! 我らはほかならぬ誰の為でもなく自分たちの意思でやっている」

 タケタケ団2「博士は父であり、また同志だ!! お前たちの言うような、浅はかな存在ではない!!」

 大島「完全に洗脳されてるお。こいつは、手ごわいお……」


 じりじりとサイラを中心ににじり寄る三人。果たして前方のキノコがいっせいにこちらに向かって攻撃を仕掛けてきて、それを耐え切ることが出来るのか。


 山崎「やばいんじゃないの? もしかして」

 浜田「もしかしても何も、やばいでしょ」

 大島「どうするお二人とも。奴らから逃げるにしても、あの数だお。さらに山中に奴らが居ることを考えれば、とても無事に逃げれるかどうか。それに、言ってることがホントだった以上、この秋刀魚星人を放っておくのも何だお」

 タケタケ団2「ふ、我らがそう易々とお前たちを逃がすと思うのか?」

 

 ジリリと動いた大島の足元に、キノコが穿たれる。警告の意の現れか。


 タケタケ団1「それ以上動けば、問答無用で殺す」

 大島「動かなければどうなるお?」

 タケタケ団2「しばし、待ってやろう。お前たちの神に祈る程度の時間はな」

 山崎「キノコが言う言葉とは思えないな……」

 大島「生憎、漏れには祈る神も居なければ、相手もいないお」

 タケタケ団1「ならば、すぐ死ね!!!」


 一斉に飛び上がるキノコたち。紅く染まったジャングルが、鳥の群れが一斉に飛び立つようにざわめいた。


 浜田「お、大島!! どうするんだよ!!」

 山崎「落ち着け浜田、どっちにしろ攻撃されるのは目に見えてるんだ!!」

 浜田「でも、どうやってこの攻撃から逃げるって言うんですか!!」

 山崎「そ、それは…… 」


 と、そんな風に慌てふためく山崎と浜田に、気がつけば無数のキノコが襲い掛かる。


 浜田・山崎「「う、うわっぁああああああ!!!」」


 貫かれる。そう二人が思った瞬間であった。

 空間が一瞬裂け、飛んでくる無数のキノコを一口に飲み込んだ。そう、まるで十字のような裂け目が空に一瞬にして現れたのだ。

 そのあまりに不自然な出来事に、ぽかんと同じく口をあけて二人はその光景を見守るばかり。

 空間が閉じたときになって、初めて瞬きをすると、やっと思考が動き出したのか浜田はぺたりと膝をつき、山崎はしりもちをついた。

  

 浜田「へ!?」

 山崎「た、助かった?」


 へたり込む二人に差し掛かる影。振り向けば其処に立っているのは、手に長刀を携えたサイラと余裕の表情の大島であった。


 サイラ「間一髪でござった」

 浜田「い、いったいどういうこと?」

 

 いまだわけの分からない浜田は二人の顔を見回すと、大島に尋ねる。まるでさも当然のごとく表情一つ変えずに、大島はぽりぽりと頭をかいた。


 大島「ん〜、あいつらを倒しに来たというからにはそれなりの策があるかと思って、秋刀魚星人の縄を解いてみたお。そしたら、やっぱりちゃんとあいつらについての対応はしてあったらしくって、それで助かった見たいお」

 山崎「いったい、どうやって……」

 サイラ「これでござるよ」


 そういって山崎の前に日本刀を差し出すサイラ。鞘には日本語で「空返し」と書かれている。


 サイラ「この武器はいわゆる超古代の武器でしてな、空間を引き裂く能力があるでござる。これで、空間と空間の狭間の中に奴らを誘導して、封じ込めたのでござるよ」

 山崎「そ、そんな簡単に?」

 サイラ「いや、もちろん普通に斬ったのでは回避される。奴らが視認できぬすばやさで居合いにて空間を切り申したゆえに、奴らも気づかず狭間へと誘導されたのだ。いや、中々骨が折れたでござる」


 まったくもって意味の分からない二人を置いてけぼりに、サイラはパンパンと手を払う。そうして、山崎と浜田を引き上げた。

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