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第二十四話 秋の味覚編 Part4

 浜田「それにしても、マツタケに栗に秋刀魚か…… 秋の味覚って感じだよね」

 大島「そうだお……」

 山崎「俺は秋刀魚かな。あの腸の辺りの油ののり具合がたまんない。まぁ、腸も上手いけど」

 浜田「腸ってたまに鱗とか入ってたりしない? 僕あれ苦手なんだよね」

 大島「おまえら腸なんて良く食えるお」


 木の上で件の秋刀魚星人を待ちながら、山崎たちは秋の味覚の話題で盛り上がっている。

 既にあたりは夕日で照らされ始めており、赤いジャングルが何処までも続いている。


 浜田「それにしてもあの二人。ちゃんと逃げる準備してるのかな」

 大島「今日の夜陰にまぎれて出発するっていってたお…… 信用するしかないお」

 山崎「まぁ、力ずくで出て行かすのも一興だがな。あんだけ小ばかにされておいてなんだし」

 浜田「暴力沙汰は良くないよ。穏便にね」


 にこりと笑う浜田に、山崎と大島が顔を見合わせる。


 山崎「いや、お前のあのやり口は穏便なのか?」

 浜田「え、あ。あれは〜 流石にあそこまで言われるとね……」

 大島「そうだお。びっくりしたお。浜田も中々やるお」

 山崎「なぁ、俺もびっくりしたぞ」

 浜田「も、もう二人ともよしてよ。僕だって人間なんだから、機嫌が悪くなることくらいあるよ!!」


 恥ずかしそうに後頭部に手をやる浜田。ただただ笑うしかないといった感じの表情だ。

 あまり本人としても本意ではなかったのだろう。あからさまにその話題は避けたいといった感じもする。

 

 大島「わかったわかったお。これ以上言って怒られたらたまったもんじゃないお。お、山崎?」

 山崎「そうだな。あんな感じに脅されたらたまったもんじゃないもんな」

 浜田「だ〜か〜ら!! もう!!」

 山崎・大島「「ははは!!」お」


 と、そのとき彼らの居る木から西側で微かに何かが揺れた。この森の西側には実は河が面しており、そう遠く無いところに海岸がある。もし、地球上の魚類と同じように、水気の多いところを好むとするならば、秋刀魚星人はこの西側からやってくる可能性が高い。


 浜田「きたのかな…… 皆、今更だけど作戦は良いね?」

 大島「大丈夫だお。任せるお」

 山崎「まだ明るいが…… まあ大丈夫だろう。やるか……」

 

 そういって山崎は携帯用のライトを取り出した。赤いボディのそれを肩に担ぐと、山崎はテンポ良く木の上を飛び去っていく。残された浜田と大島は、黒い暗幕を木の間で釣るしはじめた。

 すぐに、山崎が戻ってきた。と、同時に下の林を裂いて走る謎の影が一つ。


 山崎「当たりだ! やれ、浜田・大島!」


 それは山崎の持っているライトの光から逃げるようにこちらへと走ってくる。二人はじっと身構えると息を殺す。と、その謎の影はついに浜田と大島がつるした暗幕の下に逃げ込んできた。

 と、ここで浜田と大島が勢い良く飛び降りる。黒い影は、突然振ってきた天井に恐れをなしてか、じたばたと暗幕の中で暴れている。


 浜田「観念しろ秋刀魚星人!!」

 大島「大人しくしないと、丸焼きにして食っちまうお!!」


 秋刀魚星人「なぁ!! 船底だと思って入っていったら、罠だったとわ!! 拙者としたことが一生の不覚!!」


 浜田「…… いや、ここ陸だし」

 大島「馬鹿だお」


 秋刀魚星人を抜け出せないようにぐるぐると簀巻きにする二人。

 また、秋刀魚星人も不利と悟ったのか、あえて何もせずおとなしく二人にされるがままに任せている。

 やがて、だいたい巻き終わると、秋刀魚星人が抜け出せぬようにさらにその上に麻縄で縛り付ける。

 こうして出来上がった秋刀魚の巻き寿司を、三人は取り囲んだ。


 秋刀魚星人「いや、お見事。地球人はぼんくらばかりかと思っていたが、中々貴殿らのような気骨のある方も居られるのですな」

 浜田「気骨って言うか、まぁ君が間抜けなだけだよ」

 大島「そうだお。間抜けというか馬鹿、馬鹿というか所詮魚類だお」

 秋刀魚星人「またまた。そんなご謙遜を。いや、それがし感動したでござるよ」

 

 秋刀魚星人は、エラをパクパクさせながらしみじみと目を閉じる。なんとも変な侵略者である。

 掴まったというのになんとものんきな宇宙人。それこそ、顔は見せてもらった写真と同じであるが、こんな陽気で気さくな宇宙人が刺客というのも今ひとつ信じがたい。と、三人はそれぞれ顔を見合わせる。


 浜田「もしかして人違いならぬ、宇宙人違いかな」

 大島「けど、もらった写真と同じ顔お」

 山崎「着てる服もまったく同じだよな」


 ぼろっちい着物に刀を三本。結わえた髪の毛と、なぜか顔だけ秋刀魚な異星人。まさしく、こいつしか居ない。が、外国人の顔が分からないように、もしかすると人違いかもしれない。


 浜田「あの〜。もしかして、この写真アナタの写真ですか?」


 そういって、浜田は写真を秋刀魚星人に手渡す。しばらくそれを見ると、秋刀魚星人はこくりと頷く。


 浜田「そうすると、秋刀魚星人さんでよろしいんですね?」

 秋刀魚星人「あぁ。だが、違う」

 大島「何がだお」

 秋刀魚星人「拙者は秋刀魚星人だが名前は秋刀魚星人じゃない。名前はサイラ・シーマ。誇り高き秋刀魚族の勇者だ」


 誇り高き秋刀魚族の勇者。思わずその発言に同様というか笑いを隠し切れない三人。三人が三人とも微妙な笑い声を微かに漂わせる。


 山崎「…… で、いったい何が目的なんない。秋刀魚族の勇者さんが?」

 大島だいたいわかってるお


 サイラは少し考えた風に頭をしかめる。そして、何かを決意したような表情でこちらを見た。

 そのしっかりとした戦う意識に満ちたその目は、三人の心を振るわせた。


 サイラ「実はな、宇宙刑法に違反した犯罪者を追っておる途中なんじゃ」

 山崎・大島「「…… は、犯罪者〜!!??」」

 サイラ「そうだ。これがその犯罪者達の顔なんだが…… すまん、誰か拙者の懐から写真を取り出してくれ」

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