第二十二話 秋の味覚編 Part2
甲羅を背負った爺さんが地面に正座している。それを取り囲むように、男三人。
山崎「で、醤油よ。あんた、いったいなんでまたこんな事を?」
大島「ジャングルを真っ赤にするなんて、まったくわかんないお。説明するお」
醤油「実はそれには深い訳がありまして……」
もじもじと下を向いて口ごもる醤油星人(仮)。
浜田「僕達に害を与えるつもりではないんだね?」
醤油「はい。もちろんです」
浜田のほうを上目遣いで見つめる醤油星人(仮)。それを見て、山崎と大島は浜田の後ろに回った。
大島「悪そうな奴には見えないお」
山崎「いや油断ならねえぞ。最近の宇宙人は演技が上手いから」
醤油「そんなこと無いですじゃ〜。この目を見てくれ〜」
浜田にまるで恋する乙女ばりの視線を送る醤油。思わず、浜田がのけぞった。次にその視線は山崎へと向けられる。山崎の頬を冷や汗が伝った。
山崎「分かった、分かった。分かったから、その恋する乙女のような目を止めろ」
醤油「分かってもらえたですじゃか」
浜田「心臓が止まるかと思った」
大島「達の悪い爺さんだお」
もじもじと身体をくねらせて、地面に正座する醤油。ひとたび座れば普通の爺さんのそれにはなった。
山崎「で、その深いわけって言うのは?」
醤油「実はですのう。わし等の星には二つの部族が存在しましてな」
浜田「二つの部族?」
山崎「なるほど部族間のいざこざという訳か」
醤油「そうですじゃ。それで、わし等山の幸系部族と海の幸系部族は、長年に渡り血で血を洗うジェノサイドを繰り返しておるのですじゃ」
つっと醤油の目に涙があふれる。皺くちゃの顔に浮かんだその憂いは、寂しげでそして疲れを感じさせる。
はっと、浜田と山崎は息を呑んだ。
浜田(可愛そうに)
山崎(抗争に疲れて、ここまで逃げてきたって事か。まったく、不憫だな……)
浜田はすっと醤油から視線を逸らし、山崎は握りこぶしを作り表情を険しくする。
二人とも醤油の境遇に少なからず心を動かされたようだ。どちらも苦渋の表情だ。
ただ、大島だけは平然とした顔をしている。
大島「それで、抗争に疲れて地球に逃げてきたって事かお?」
醤油「いや、ただの観光ですじゃ」
浜田・山崎((なんじゃそりゃ!!))
あっけに取られた感じで、ずっこける二人。
醤油「地球の女の子をとっかえひっかえ、そりゃもう常夏のアバンチュールを楽しむ予定だったの、あいつらときたら・・・…」
大島「常夏のアバンチュールって、もう秋だお」
浜田「そうですか、観光ですか……」
山崎「心配するだけ損したぜ、このエロジジイ!!」
醤油「やつら、ワシが石油王の息子じゃから、こんなことまで追っかけてきよった。ワシの家の金が目的なんじゃ」
浜田「石油王?」
醤油「そうじゃ、ワシの親父は石油王なんじゃ。わしゃ遊んどっても次代の石油王なんじゃ」
大島「ニートかお!!」
山崎「ブルジョワジー……」
浜田「あはは、あははははは……」
醤油は頭に青筋を作って怒りをあらわにする。
浜田も山崎も、あまつさえ大島さえも同じように怒りをあらわにする。無論、醤油に対してであるが。
山崎「なるほど、つまり違う部族間の奴らに狙われてるって事だな?」
醤油「そういうことですじゃ。それで、追っ手から身を隠すためにこんな風にジャングルを秋色に染めたというわけですじゃ」
悔しそうな表情をする醤油に対して、山崎一同は既にしらけきっている。
大島「こんな奴放っておけばいいお。道楽放題で命狙われてって、身から出た錆だお」
山崎「それはまぁ…… そうだな」
浜田「僕もそう思うよ……」
醤油「そんな酷いですじゃ〜!! 今ならサービスしまっせ、だんな」
そういって、乙女座りでちらちらと上目使いをする醤油。ちらちらと着物のすそから、汚らしいふんどしをみせる。その行動に、山崎一同のモチベーションは、急降下。
大島「帰るお」
山崎「そうだな」
浜田「へ〜ちょ!! そろそろ帰るよ、出ておいで〜!!」
???「マテ!! お前ら、それでも誇り高きZ戦士か!!」
大声が秋の森にこだまする。樹の陰から現れたのは、栗の頭をした宇宙人だった。
醤油「おぉ!! 天津は……」
大島「マテ!!」
山崎「どう見たってそれは違うだろうが!! どういうネーミングセンスしてるんだぁ!!」
醤油「天津甘栗のご飯だから略して天津は……」
大島「それは、栗ご飯だお!!」
山崎「中華料理屋で栗ご飯出てきたらびっくりするだろうが!!」
醤油・栗ご飯「「普通に出るよなぁ、中華で栗ご飯?」」
山崎・大島「「うるせぇ!!!」」