表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/34

第二十一話 秋の味覚編 Part1

 大島「いやー、それにしてもジャングルにも秋が来るとは思わなかったお」


 赤色に染まったジャングルを前に、大島がさも圧巻といわんばかりに言う。


 浜田「だよね。普通、ジャングルって年中緑ってイメージだよね」

 山崎「イメージっていうか、そうだろ普通」


 男三人。山の中腹辺りから赤いジャングルを見渡す。

 背中には竹篭。手には軍手とつかみが一つ。頭にはヘルメットの代わりに、白いタオルを巻いたといういでたちだ。

 と、そこに上から何かが滑り落ちてきた。


 五十嵐「こら〜。みんな、さぼっちゃ駄目だよ!! 折角ジャングルが秋になったんだから、今のうちに食べれるものを集めないとね」

 浜田「ごめんごめん。今探すよ」

 五十嵐「真面目にやんないと、たとえなっちゃんでも、今日の晩御飯は抜きだからね」

 山崎「そう急かすなよ、へ〜ちょ。それに、ここら辺には俺達しか居ないんだぜ?」

 五十嵐「駄目よ、それが駄目なのよ山ちゃん!! みすみす腐らせたらもったいないじゃない」


 ぷんすかと音を立てて二人に食って掛かる五十嵐。その背中は既にきのこで一杯である。とはいえ、それらの全てが食えるというわけでは無さそうである。


 大島「やぶ蚊がウザイお。早く帰りたいお」

 五十嵐「文句を言わない!! ちゃっちゃかやるの!! ほら、早く!!」

 大島「いやだお、帰りたいお!! あちこち刺されて痒いお」

 五十嵐「駄目ったら駄目!! この籠一杯になるまで、今日は山から下りないんだから」


 大島を押したて下っていく五十嵐。取り残された浜田と山崎は、はぁとため息をつく。


 山崎「いっちまった」

 浜田「どうします、山さん。へ〜ちょのことだから、きっとこの籠一杯なんか採らないと帰れませんよ」

 山崎「つってもなぁ」


 そういって、山崎は辺りを見回す。

 所狭しと敷き詰められたといわんばかりに生えるシイタケ・シメジ・マツタケ。

 ころころとあちらこちらに散らばる毬栗。

 集めるには集められる。だが、どうにも拾うのがめんどくさそうだ。

 そしてなにより。


 山崎「こいつらを籠の中に適当に放り込むのは良いんだが……」

 浜田「足りないですよね……」


 山崎・浜田「「肉」」


 二人同時にため息もついた。そう、彼らはここ最近秋になってからというもの、これといった動物性たんぱく質を摂取していないのだ。

 といっても、魚はちょくちょく食べている。問題は、豚とか牛とかそういう肉を食べていないことなのだ。なぜかそいつらは、山に居ないのだ。ほんのつい最近まで、ジャングルが赤く染まるまでは、結構というわけでもないがちょくちょくは取れたというのに。


 浜田「秋が実りの季節といっても、流石にこればっかりはどうにもならないですよね」

 山崎「そうだよな。こればっかりはな」

 浜田「罠にも何もかかっていなかったし、本当にどうなってるんだろう」


 浜田は、はぁとため息をつく。若い身空に、ここ数日のベジタリアンな生活は随分と堪えたのだろう。

 山崎は笑うと、きのこを拾い出した。そして、ふっと思い出したように腰を張る。


 山崎「もしかして、宇宙人たちの仕業なのかもな」

 浜田「まさか〜」


 ???「なぜばれたのだ」


 不意の声に二人の顔が引きつる。声の主の居所は分からないが、意外と近くにいるらしい。


 山崎「…… まさかな?」

 浜田「まさか…… ね?」


 顔を見合わせ、青くする二人。と、そこに竹やぶから一人の男が現れた。

 マッシュルームのような頭をした、サングラスをかけたその男は、亀の甲羅を背負ってこちらにやってくる。


 ???「わしの名前はか」

 山崎「まて、それ以上言うな!!」

 浜田「著作権的にまずいし、ネタとしても最悪なくらいにまずい!!」


 山崎と浜田が必死に止める。


 ???「し、しかしのう。それじゃわしのことを何と呼んでもらえば……」

 山崎「まて、ちょっと考える。けど、それはメジャーすぎるので、無しだ!!」

 浜田「百歩譲っても、バイケンだけど…… それでも、一部のコアにはあれだろうし」


 大島「公然猥褻カットも、パクリだお」


 にゅっと山崎と浜田の間から大島が顔を出す。


 山崎「大島!!」

 浜田「大島!! へ〜ちょはどうしたの?」

 大島「下のほうにキノコが群生しているのを見て一人で駆けていったお。それより、その宇宙人の名前をどうするかお」

 浜田「え、ああ、うん。そうだね」

 山崎「つってもいきなりは思いつかねえな…… そうだ、爺さん。あんた仇名かなんか無いのか?」

 ???「ん、あるにはあるが……」

 浜田「それだよ!」

 山崎「爺さん、なんて呼ばれてたんだ?」


 ???「わしの故郷は難波星といってのう。わし等兄弟三……」


 大島「マテ!! それは、肖像権とか人権的にかなりまずいお」

 山崎「だぁ、また振り出しじゃねえか!!」

 ???「す、すみません……」



 数刻後



 浜田「それじゃぁ、爺さんの仇名は醤油ということで」

 醤油「醤油ですじゃか……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ