第二十一話 秋の味覚編 Part1
大島「いやー、それにしてもジャングルにも秋が来るとは思わなかったお」
赤色に染まったジャングルを前に、大島がさも圧巻といわんばかりに言う。
浜田「だよね。普通、ジャングルって年中緑ってイメージだよね」
山崎「イメージっていうか、そうだろ普通」
男三人。山の中腹辺りから赤いジャングルを見渡す。
背中には竹篭。手には軍手とつかみが一つ。頭にはヘルメットの代わりに、白いタオルを巻いたといういでたちだ。
と、そこに上から何かが滑り落ちてきた。
五十嵐「こら〜。みんな、さぼっちゃ駄目だよ!! 折角ジャングルが秋になったんだから、今のうちに食べれるものを集めないとね」
浜田「ごめんごめん。今探すよ」
五十嵐「真面目にやんないと、たとえなっちゃんでも、今日の晩御飯は抜きだからね」
山崎「そう急かすなよ、へ〜ちょ。それに、ここら辺には俺達しか居ないんだぜ?」
五十嵐「駄目よ、それが駄目なのよ山ちゃん!! みすみす腐らせたらもったいないじゃない」
ぷんすかと音を立てて二人に食って掛かる五十嵐。その背中は既にきのこで一杯である。とはいえ、それらの全てが食えるというわけでは無さそうである。
大島「やぶ蚊がウザイお。早く帰りたいお」
五十嵐「文句を言わない!! ちゃっちゃかやるの!! ほら、早く!!」
大島「いやだお、帰りたいお!! あちこち刺されて痒いお」
五十嵐「駄目ったら駄目!! この籠一杯になるまで、今日は山から下りないんだから」
大島を押したて下っていく五十嵐。取り残された浜田と山崎は、はぁとため息をつく。
山崎「いっちまった」
浜田「どうします、山さん。へ〜ちょのことだから、きっとこの籠一杯なんか採らないと帰れませんよ」
山崎「つってもなぁ」
そういって、山崎は辺りを見回す。
所狭しと敷き詰められたといわんばかりに生えるシイタケ・シメジ・マツタケ。
ころころとあちらこちらに散らばる毬栗。
集めるには集められる。だが、どうにも拾うのがめんどくさそうだ。
そしてなにより。
山崎「こいつらを籠の中に適当に放り込むのは良いんだが……」
浜田「足りないですよね……」
山崎・浜田「「肉」」
二人同時にため息もついた。そう、彼らはここ最近秋になってからというもの、これといった動物性たんぱく質を摂取していないのだ。
といっても、魚はちょくちょく食べている。問題は、豚とか牛とかそういう肉を食べていないことなのだ。なぜかそいつらは、山に居ないのだ。ほんのつい最近まで、ジャングルが赤く染まるまでは、結構というわけでもないがちょくちょくは取れたというのに。
浜田「秋が実りの季節といっても、流石にこればっかりはどうにもならないですよね」
山崎「そうだよな。こればっかりはな」
浜田「罠にも何もかかっていなかったし、本当にどうなってるんだろう」
浜田は、はぁとため息をつく。若い身空に、ここ数日のベジタリアンな生活は随分と堪えたのだろう。
山崎は笑うと、きのこを拾い出した。そして、ふっと思い出したように腰を張る。
山崎「もしかして、宇宙人たちの仕業なのかもな」
浜田「まさか〜」
???「なぜばれたのだ」
不意の声に二人の顔が引きつる。声の主の居所は分からないが、意外と近くにいるらしい。
山崎「…… まさかな?」
浜田「まさか…… ね?」
顔を見合わせ、青くする二人。と、そこに竹やぶから一人の男が現れた。
マッシュルームのような頭をした、サングラスをかけたその男は、亀の甲羅を背負ってこちらにやってくる。
???「わしの名前はか」
山崎「まて、それ以上言うな!!」
浜田「著作権的にまずいし、ネタとしても最悪なくらいにまずい!!」
山崎と浜田が必死に止める。
???「し、しかしのう。それじゃわしのことを何と呼んでもらえば……」
山崎「まて、ちょっと考える。けど、それはメジャーすぎるので、無しだ!!」
浜田「百歩譲っても、バイケンだけど…… それでも、一部のコアにはあれだろうし」
大島「公然猥褻カットも、パクリだお」
にゅっと山崎と浜田の間から大島が顔を出す。
山崎「大島!!」
浜田「大島!! へ〜ちょはどうしたの?」
大島「下のほうにキノコが群生しているのを見て一人で駆けていったお。それより、その宇宙人の名前をどうするかお」
浜田「え、ああ、うん。そうだね」
山崎「つってもいきなりは思いつかねえな…… そうだ、爺さん。あんた仇名かなんか無いのか?」
???「ん、あるにはあるが……」
浜田「それだよ!」
山崎「爺さん、なんて呼ばれてたんだ?」
???「わしの故郷は難波星といってのう。わし等兄弟三……」
大島「マテ!! それは、肖像権とか人権的にかなりまずいお」
山崎「だぁ、また振り出しじゃねえか!!」
???「す、すみません……」
数刻後
浜田「それじゃぁ、爺さんの仇名は醤油ということで」
醤油「醤油ですじゃか……」