第二十話 初めての作戦 Part8
山崎が目を覚ます。未だ空には満点の星。
気を失ってからそう長い時間はたっていないようだった。
鈴原「気が付きましたか、山崎さん……」
顔を覗きこんできた鈴原に、少し驚いたのか顔を赤らめる山崎。
上半身を起こすと、辺りを見渡した。
山崎「鈴原…… それに、五十嵐・浜田・大島……」
大島「やっと目を覚ましたかお」
山崎「…… 結局どうなった?」
浜田「山さんが寝てる間に、ほらこのとおり」
浜田が指差す方向には、縄で縛られた宇宙人達。
宇宙人たちは意識はないらしく全員ぐったりしている。
山崎「お前らにしちゃ上出来じゃないか」
大島「随分ないいかただお」
浜田「もう、僕達だってやる時はやるんだからね」
五十嵐「そうそう!」
山崎「…… ふ。ははは、ははは」
山崎につられるように、全員が笑い出す。
しばらくの間その笑いがやむことはなかった。
と、そこに割り込むように入ってきたヘリコプターの回転音。
衛生兵2「鈴原婦長〜!!!」
鈴原「七瀬!?」
空を見上げれば日本陸軍付きのヘリコプター。開かれたドアからは衛生兵たちがこちらに手を振っていた。
大島「なるほど、ヘリコプターによる救出かお」
高部「すまんな大島!! 情報漏洩を防ぐために、あえて言わなかったのだ許せ!!」
大島「な!? 高部、何で来てるお!!」
スピーカーから放たれるのは高部の声。助手席からこちらを覗いている女性、おそらく彼女が高部であろう。
高部「すまなかったな、五十嵐小隊!! 恩給は追って報告する!!」
五十嵐「はい、ありがとうございます!!」
ヘリコプターから梯子が下ろされる。上って来いと言うことだろう、鈴原の前にちょうどそれは落ちて来た。
衛生兵1「婦長、上ってきて下さい!!」
鈴原「えぇ、今行くわ!!」
梯子につかまる鈴原。軽く五十嵐たちに一礼すると、一歩一歩足場を確かに上へと登っていく。
五十嵐たちは直立不動、敬礼で彼女を送る。
山崎「鈴原!!」
一人寝ながら敬礼をしていた山崎が鈴原を呼ぶ。
鈴原は、梯子の途中で足を止め山崎の方を振り向いた。
山崎「あんたみたいに芯の強い女、久しぶりに見たぜ。
まだ戦争は続くだろうが、お互い生き延びられるよう努力しようや!!」
ぐっと拳を前に突き出す山崎。山崎が親指を立てると、鈴原も笑った。
鈴原「えぇ!! いずれまた会いましょう山崎さん!! その時までお元気で!!」
そういうと、また鈴原は梯子を上りだす。
鈴原と梯子を収納したヘリコプターは、五十嵐たちの上で旋回すると、北に向かい飛んでいった。
山崎「そうだな、また会いてえもんだな……」
寂しそうな顔でつぶやく山崎。
と、周りが面白そうな顔で笑っているのに気が付いた。
大島「山崎ぃ〜。また会うのかお〜?」
五十嵐「山ちゃんもすみにおけないなぁ」
浜田「このぉ、女泣かせですね山さん」
はっと笑い飛ばす山崎。
だるそうな足取りで立ち上がると、ヘリコプターが飛んでいった方の空を見上げた。
山崎「さ、帰ろうぜ。夕食まだだろ、腹減っちまったよ俺」
五十嵐たちの顔が綻んだ。
五十嵐小隊 初任務 第七衛生部隊救出作戦 成功