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第十九話 初めての作戦 Part7

 森の中を怪しい光を目から放ち徘徊する者が四人。

 頬を赤く染め上げ、全身に痣を作り。それでもなお、ナースを求める変態たち…… 白タイツ星人の四人組だ。

 山崎との激闘でだいぶ痛めつけられたのか、その足取りはおぼつかない。

 しかしながら、目は死んでいなかった。


 宇宙人1「あいつら、どこへ行きやがった……」

 宇宙人3「この包囲網を簡単に抜けられるはずが無い。きっと、その辺に……」


 と、ここで宇宙人の一人が足を止める。


 宇宙人2「どうした、見つけたのか?」

 宇宙人4「い、いや。あれを見てくれ」


 そういって、宇宙人が指差した方向には、白熱灯で照らし出された看板が一つ。


 「メイド喫茶 極楽浄土」


 宇宙人ALL((((う、うさんくせー!!!!))))


 メイド服を着た仏像みたいなものがその横に置かれ、ようこそと書かれた板を持ってにやついている。

 宇宙人が見ても罰当たりと思うその光景に、四人は息を呑んだ。


 宇宙人1「メイドと冥土をかけたのか……」

 宇宙人3「微妙にかかってない気もするがな……」

 宇宙人2「な、なんて罰当たりな。謝れ!! 両方に謝れ!! 仏様にも、メイド様にも!!」

 宇宙人4「!! おい、みんなよく見ろ。看板の下のほうを!!」


 再び指を刺す、宇宙人。

 仏様がもつ看板には、五メートル先から見えるか見えないかくらいの大きさで、こう書いてある。


 「おさわりしほうだい。ご利益まちがいなし!!」


 宇宙人ALL((((ぶ、仏像が〜!?))))


 宇宙人2「まさか、仏像のメイドが出てくるとかそういうのじゃないよな」

 宇宙人3「言うな、萎える」

 宇宙人1「俺なんか気持ち悪くなってきた……」


 目に入れないようにと看板に背を向ける宇宙人たち。

 だが、やはり気になるのかその場から動こうとはしない。


 宇宙人2「だいたい、メイドなんて邪道だよな邪道。実際そんなのありえないって」

 宇宙人3「そうそう。金持ちがメイド雇うなんて、何世紀前の話だって〜の」

 宇宙人1「夢見すぎだよね、本当に。それに若い女の子がそんな仕事をすすんでするはず無いじゃん」

 宇宙人3「現に日本には、メイド派遣会社とか無いじゃん。あってせいぜい家政婦の派遣会社だろ」

 宇宙人2「殺人現場とか見られるのがオチだって」

 宇宙人1・3「あるある!!」



 宇宙人4「けど、一度は言われてみたいよね『ご主人様』って……」


 宇宙人の体の動きが止まる。

 しばらくの静寂の後、ごまかすように笑い声が上がった。


 宇宙人1「だいたい、俺達メイドよりナースだっつーの、なぁみんな」

 宇宙人2「そ、そうそう。メイドなんてここ数年出てきた、ぽっと出だよ。ぽっと出。王道はナース!!」

 宇宙人3「白衣の天使こそ最強だよな」

 宇宙人1「あぁ、白い制服!!」

 宇宙人2「ナースキャップに注射器!!」

 宇宙人3「白いタイツ!!」



 宇宙人4「けど、白いニーソックスも魅力的だよね……」



 宇宙人ALL「「「「………」」」」



 また宇宙人たちの動きが止まる。

 しかし、今度は先ほどとは違い、ごまかすような笑い声は上がらない。

 かわりに、四人全員がいっせいにメイド喫茶のほうに向いた。



 宇宙人ALL「「「「上等だ、いってやろうじゃねえか!!!」」」」


 男らしくぐっと拳を握り締める宇宙人たち。言うや否や、看板に向かい一斉に駆け出した。


 宇宙人1「まってろよ、メイドさん!!」

 宇宙人2「今ご主人様が帰るからね!!」

 宇宙人3「白ニーソ萌ぇぇえええ!!!!」


 三者三様の叫び声。しかしながら、全員の鼻の下が伸びきっていた。

 なんとも間抜けな宇宙人たちである。


 宇宙人1「一番乗りぃぃぃいいいいい!!! ただいまぁ〜 うぉおおおお!?」


 いきなり一番前を走っていた宇宙人が視界から消える。急ブレーキをかけてとまる残りの三人。

 下を見れば、落とし穴の中に前を走っていた宇宙人は落ちていた。

 自力では登ってこれそうに無いほど深く掘られた落とし穴の底で、落ちた宇宙人は気絶している。


 宇宙人2「な、罠か!!」

 宇宙人3「俺達を騙したのかちくしょう!! ゆるせねえ!!」

 宇宙人4「お、おいみんな、早まるな。あれを見ろ!!」


 そう言って指を刺した先に居たのは。


 五十嵐「お帰りなさいませ〜☆ ご主人様ぁ〜☆」

 ???「お…… お帰りなさいませ〜……」


 メイド服に身を包んだ美少女二人。

 一人は五十嵐。もう一人は、前髪で顔を隠しているので分からないが、ぱっと見た感じ内気少女という感じだ


 宇宙人(((メ、メイドさん、キター!!)))


 五十嵐「すみません、最近変な人がよく現れるので、落とし穴を掘っておいたんですぅ〜」

 ???「す、すみませんでした〜……」


 メイド服姿の五十嵐ともう一人がフランクに謝る。

 けっこう説明になっていないような謝り方ではあったが、衣装のパワーというか、メイドパワーというか。宇宙人たちは風きり音が聞こえるほどの勢いで左右に首を振る。


 宇宙人2「い、いいよいいよ。僕達も、よく前確認してなかったし。なぁ、みんな」

 宇宙人4「うんうん。いやー、ぜんぜん前確認してなかった。うん」

 宇宙人3「ちょっと最近視力が落ちてきたからな〜。全然気付かなかったよ。メガネ買おうかな〜」


 赤らむ顔で五十嵐たちを見つめる宇宙人。仲間が罠にかかり一瞬引き締まった顔も、既にだらしなく元に戻っていた。


 五十嵐「そうですか〜。すみませんでした。

 それじゃぁ、ご主人様。こちらでかけてお待ちくださ〜い!!」


 席に案内される宇宙人たち。

 何の躊躇もなく席に着くと、さらに顔をだらしなくして笑い出した。


 宇宙人2「いや〜入って良かったな、メイド喫茶」

 宇宙人4「あんなかわいい娘がいるなんて、思わなかったな」

 宇宙人3「俺、あの元気そうな方が好みだわ」

 宇宙人2「だよな〜、元気っ娘萌〜って感じだよな」

 宇宙人4「僕は前髪で顔隠してるほうかな。薄幸少女ってかんじで……」

 宇宙人2「あぁ、彼女もいいよな〜。ちょっとオドオドしてるところもポイント高よな」


 メイド談義に入った三人。

 そこに五十嵐が、水を運んでくる。


 五十嵐「み、水をお持ちしましたご主人さまぁ〜」

 宇宙人3「あ、は〜……」


 返事をしようと振り返った宇宙人、その顔に五十嵐が持ってきたお盆がクリティカルヒットする。

 顔面にお盆を食らった宇宙人は後ろに向かい物凄い勢いで吹っ飛ぶ。

 その光景にあっけにとられる宇宙人達。


 五十嵐「あ、すみません……」

 宇宙人3「い、いいですよ。気にしないで、ください……」


 五十嵐「てへ!」


 五十嵐が舌を出してごまかす。


 宇宙人3「ど、どじっ娘。萌〜〜……」

 宇宙人2「…… も、萌〜……」

 宇宙人4「……」

 五十嵐「すぐに、代わりをお持ちしますね〜」


 林の奥へとかけていく五十嵐。それを目で追い終えると、今度は吹き飛ばされた仲間のほうへ眼をやる宇宙人達。


 宇宙人2「幸せそうな顔して死んでるな……」

 宇宙人4「南無……」


 と、五十嵐が入っていった林の中から、今度は謎の美少女が出てくる。

 さっきと同じく、手にはお盆を持っている。


 ???「さ、先程はすみませんでした…… お、お水です……」


 おずおずと、水をテーブルに置く美少女。

 そのなんとも丁寧な仕草に、宇宙人ははっと息を呑む。


 宇宙人2「君可愛いね、名前なんていうの」

 宇宙人4「そうそう、ちょっと教えてくれないかな〜」



 ???「えっ、えっと。僕の名前は〜……」



 宇宙人4「え!? 僕?」


 しまったと肩を震わせる美少女。


 ???「わ、私の名前は〜……」


 急いで言い直す美少女に二人は顔をほころばせる。


 宇宙人2・4((僕娘、萌〜!!))


 と、さっと宇宙人が美少女の尻に手を這わす。


 ???「ひゃっ!! な、何するんですか!!」

 宇宙人2「何って、おさわりし放題なんでしょ?」

 ???「ち、違います!! そういう意味じゃ… あ、ちょっと。ご主人様」

 宇宙人4「いいだろ、別に減るようなモノじゃないんだし……」


 美少女の尻を撫で回しながらえへえへと悦に入る変態宇宙人。


 ???「ほんとうに、やめてください。あ、嫌ぁ!!」

 宇宙人2「胸小さいね。サイズ何かな? ハァハァ」

 ???「そ、そんなの…… は、測ったこと無いです……」

 宇宙人4「そ、それじゃぁ僕達が測ってあげるよ…… ハァハァ」

 ???「い、いやぁ〜 助けて〜!!」


 宇宙人が美少女の上着に手を書けた瞬間。物凄い勢いで五十嵐が林から飛び出してきた。

 そして、振り向きざまの宇宙人を手に持っていた鈍器で思い切り殴りつけた!!


 五十嵐「ご主人様!! おさわりしほうだいなのは、この彫り物でございます!!」

 宇宙人2「そ、そうなの…… ご、ごめんね…… ぐふ……」


 殴られた宇宙人は血を頭から噴水のごとく放出しながら息絶えた。

 残された宇宙人はその惨劇に、いまだ美少女の尻から手を離していない。


 五十嵐「ご主人様〜!! はやく、その手をどけて貰えますか!!」

 宇宙人4「え!! あ、はい……」


 臆した感じで手を引こうとする宇宙人。しかし、ここで彼に悪魔のささやきが。



 宇宙人4(ここであっさり引き下がっちまっていいのか?)


 宇宙人4(もうちょっとくらいはっちゃけても、罰は当たらないって!!)



 にやりと怪しい笑みをあげると、ぐらっと体を揺らす。

 そして、尻から前のほうへと手を滑らした。


 宇宙人4「おおっと、手が滑っちまった。いや〜ごめ……」


 と、いやらしく撫で回す手に、妙な違和感がわく。


 本来何も無いはずのそこに何かがあるのだ。そう、なにかぶにぶにとしたものが二つ。その間に挟まれた妙に親近感のある、硬い物体が一つ。いや、一本。




 宇宙人4「ま、まさか……」


 宇宙人の手が止まる。頬を伝う汗がどんどんと多くなっていく。

 ばっと不意をついて、美少女のスカートをめくる宇宙人。


 ???「きゃぁあああ!!!」


 五十嵐「な、なっちゃん!!」



 そこには、男物のトランクスがあった。




 宇宙人4「ブルスコァアアア!!!!!」


 吐血して空中に舞う宇宙人。

 浜田はその場に泣き崩れた。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 浜田「うぅ…… もう僕お婿に行けない……」

 五十嵐「なっちゃん気にしすぎだよ…… それに、お婿さんにならあたしがもらってあげるよ?」


 メイド服姿で泣き崩れる浜田と、それを慰める五十嵐。

 そんな彼らを他所に、大島は宇宙人たちを縛り上げていた。


 大島「さて、これで今回のミッションは無事完了だお」

 鈴原「お疲れ様です……」


 ぐるぐる巻きにされた宇宙人は未だ意識が戻っていないらしくぐったりしている。

 一箇所にまとめて、折り重ねると、大島は五十嵐達のほうへ向かった。


 大島「ほら、浜田。しっかりするお。男ならこの程度のことでくじけちゃ駄目だお」

 五十嵐「そうだよなっちゃん…… くよくよしてたらいけないよ」


 浜田「じゃぁ、お前がやればよかったじゃないか!!」


 目に涙を湛え、鬼の形相で浜田が振り返る。

 怖いもの知らずの大島もこれには肝を冷やしたのか、うっと言う感じに一歩引く。


 大島「いや、それはその…… 人には向き不向きがあるからお」

 浜田「僕に向いてて、大島に向いてないって言うの!!」

 五十嵐「けどなっちゃんとっても似合ってたよ。とっても綺麗だったよ」

 浜田「そんなの聞きたくないよ!!」


 いじいじと下を向いて落ち込む浜田。

 これは時に任せるしかないなと、二人はその場から離れた。


 五十嵐「ところでおさわりしほうだいの彫り物。あれって、いったい何なの?」


 またしてもたじろぐ大島。

 五十嵐と目をあわさないように、ゆっくりと横を向く。


 大島「え!! えっと、あれはその…… 亀、亀の神様の彫り物だお!!」

 五十嵐「あぁ、それで亀の頭のような形なんだ……」


 大島(男のあれだなんてとてもじゃないけど言えないお……)



 大島(つうか、いったい上層部は何がやりたいお!!)

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