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第十八話 初めての作戦 Part6

 五十嵐「山ちゃん遅いね……」

 浜田「もしかして僕達忘れられちゃったのかなぁ〜……」

 五十嵐「それは無いよ。今さっき連絡入ったし」


 東方の森にて潜伏中の五十嵐と浜田。

 茂みの中から望遠鏡で辺りを見渡すと、浜田はため息をつく。


 浜田「しかし、何でまたそんなことしなくちゃならないんだろ」

 五十嵐「なっちゃんはやりたくないの?」

 浜田「そりゃ…… やりたくないよ」


 俯きぎみにつぶやく浜田。一方の五十嵐はといえば、何やらとてもうれしそうにしている。

 と、そのとき五十嵐たちの後ろの茂みが激しく揺れた。


 大島「お待たせだお、例のモノを持ってきたお……」


 茂みを裂いて出てきたのは軽装の大島。手には紙袋を抱え、息を切らしていた。


 大島「それにしても、山崎も突然すぎるお…… こっちの身にもなってくれだお」

 浜田「ほ、本当にあったんだ……」

 五十嵐「うわ〜、早く見せて島ちゃん!!」


 そういうと、五十嵐は大島から紙袋を奪った。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 鈴原「山崎さん!! 早く!!」


 宇宙人の足止めを終え、先行した衛生兵部隊へと向かっていた山崎は、心配になり一人戻ってきた鈴原と鉢合わせた。

 鈴原は山崎を見るや酷く驚き、すぐさま山崎に駆け寄る。

 当の山崎はといえば、へらへらとさも何でもなさそうに満身創痍の身で笑う。


 鈴原「凄い血…… それに、酷いあざ」

 山崎「まぁ、少しばかり油断しちまってな。大したことは……」

 鈴原「そんな強がり言わないでください!! さぁ、私の肩に掴まって……」


 鈴原が山崎の手を肩にかける。鈴原が思った以上に山崎の足取りは重たく、少しずつしか前にしか進めない。


 鈴原「よく、こんな体で、こんなところまでこれましたね」

 山崎「俺のことはどうでもいい…… それより、みんな無事に東の待機ポイントに着いたのか……」

 鈴原「だから、そんなことより自分の心配を!」

 山崎「着いたのか?」


 山崎は怒気を含み荒げる声でそういう。

 臆したわけではないが、その怒気に何かを感じ取った鈴原は仕方なさそうに出かていた言葉を飲み込む。


 鈴原「……無事つきました! みんな、丘陵地で待機中です」 

 山崎「そうか、よかった……」


 と、ここで山崎が倒れる。

 安心したのだろうかと、覗き込んだ背中には酷く抉られた傷跡があった。

 鈴原はその傷を見て悲鳴を上げる。


 鈴原「山崎さん!!」

 山崎「しっ、大声を出すな! あいつらが、目を覚まして追ってきてるともかぎらねえんだぞ」

 鈴原「いいからじっとしてて下さい……」


 鈴原は自分の服の右肩口から袖口までを引き破る。胸ポケットから取り出した消毒液で傷口を消毒すると、破った服をそこにあて包帯で固定した。


 山崎「鈴原、お前も早く行けよ…… 俺なんかにかまってないでさ」

 鈴原「やめてください!! そんな言い方!!」


 鈴原が涙を流して叫んだ。


 鈴原「そうやって、自分の命を犠牲にして!! なんで、なんでそんな…… 残される人のことも考えないで……」


 大の大人が声をあげ、顔をくしゃくしゃにして泣いている。


 山崎「何だよいきなり…… 泣くなって」

 鈴原「勝手なんですよ、かっこいいとでも思ってるんですか!! こんなこと、ちっともかっこよくなんか無いのに」


 ぼたぼたと山崎の頬に落ちる涙。


 山崎(こんな表情をこの女もするのか)


 山崎は残った力を振り絞り立ち上がる。

 涙を瞼に湛えたまま鈴原は山崎を見上げた。


 山崎「すまねえ。そうだな、かっこ悪いよな女一人も守れなくちゃ」

 鈴原「山崎さん……」

 山崎「もう少し肩貸してくれ。あと少し行ったところで、仲間との合流地点なんだ……」

 鈴原「…… ん、はい!」


 鈴原が再び山崎の手を担ぐ。上りだした月へと向かい二人は再び歩き出した。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 五十嵐「島ちゃん!! ちょっと来てぇ!!」

 大島「なんだお…… っつ!! 山崎!!」

 浜田「山さん大丈夫!?」


 鈴原「大丈夫、命に別状はありません」

 五十嵐「あなたは……」

 鈴原「第七衛生部隊所属、鈴原綾子二等兵です」

 大島「とにかく、はやく横にさせるお。どこか、平らな場所はないかお……」


 大島が山崎を担ぐのに加わる。五十嵐もそれに手を貸す。すかさず、浜田も加わった。


 山崎「おう、みんな。悪いな……」

 五十嵐「びっくりさせないでよ山ちゃん。心臓に悪いんだからね……」

 浜田「そうだよ、山さん。らしくないよ、こんなの」

 大島「丈夫だけがとりえのお前が…… 情けないお」

 山崎「っ、大島おまえは〜」

 大島「いいから、ほら。横になるお」


 五十嵐たちは草の生い茂った場所へと山崎を下ろす。

 傷口に触れたか、一瞬顔を山崎はゆがめたが、すぐに穏やかな顔になった。

 いつしか、山崎は寝息を立てて眠り始めた。


 鈴原「眠りました……」

 大島「よくもやってくれたお、宇宙人の奴ら!!」

 五十嵐「けど、山ちゃんが帰ってこれただけでも、よかったとおもわなくちゃ」

 浜田「そうだね…… けど、」


 五十嵐・浜田・大島がいっせいに振り返る。

 山崎が歩いてきた方向から、聞こえてくる物音。そして、時々見える明るい光線。


 宇宙人たちはすぐそこまで来ている。

 だがそれなのに、三人の顔がいっせいににやついた。


 五十嵐「しっかりと、報復はしなくちゃね……」

 大島「調子付かせるのは、漏れの主義じゃないお……」


 五十嵐・浜田・大島「「「次はこっちの番だ!!」」お!!」

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