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第十七話 初めての作戦 Part5

 衛生兵1「大丈夫みんな!!」


 館から少し離れたところで、彼らは座り込んでいた。

 婦長が居ないのが不安ながらも、館に戻れば銃を持った男。

 一体どうすればいいのか分からなくなり、途方にくれた彼らは、いったん歩みを止めたのだった。


 とりあえずリーダー格の一人が、衛生兵の数そして宇宙人の数を確認する。

 六人の衛星兵と、四人の宇宙人を指差し数えると、ほっと胸をなでおろした。


 衛生兵1「大丈夫、全員居るわ」


 そういうと木の根元に座り込み、一息つく。

 逃げる途中で怪我を負ったものも居たのか、衛生兵も宇宙人も慢心相違の格好だ。

 疲れたのかはたまた先ほどの事件の衝撃がまだ収まらぬのか、皆往々として口を閉ざしている。


 衛生兵2「ねぇ、これからどうするの?」


 沈黙を破り、不安そうに言う衛生兵。

 静かだった場が微かにざわめいた。


 衛生兵3「どうするってそれわ……」

 衛生兵2「婦長はあいつに捕まっちゃったし、館には戻れない。敵陣のど真ん中で、いったいどうやって生きていけば」

 衛生兵1「…… だいたい、あいつ最初に見たときから怪しかったのよ…… 何であんなの婦長は匿ったりしたんだろ」

 衛生兵3「婦長大丈夫かな……」


 逃げてきた方向に目をやる衛星兵たち。宇宙人もおなじく館の方角を見る。

 と、とたん一人の衛生兵が泣き崩れた。


 衛生兵2「うぅ…… もうやだよ。これ以上誰かが居なくなるだなんて…… 先代も、鈴原さんも……」

 衛生兵3「な、七瀬さん…… 泣いちゃ駄目だよ…… そんな……」


 つられるように泣き出す衛生兵3。次々にそれはあたりに広がっていく。

 夜の森に女達の泣き声が響く。


 宇宙人たちはそんな光景を不安げに見つめている。

 ふと、一人の宇宙人が前に出た。


 宇宙人1「泣かないでください、皆さん……」

 衛生兵2「や、山田さん……」

 衛生兵1「けど、私たち…… もうどうしていいやら……」

 宇宙人2「大丈夫です。私たちが、何があっても他の宇宙人からあなた達を守ります!!」

 衛生兵1「雪島さん!!」


 ひしりと宇宙人に抱きつく衛生兵たち。

 満天の星空の下、彼らの姿は美しく照らし出された。


 ???「い、い〜の〜。そのたくましい腕でもっと抱きしめてぇぇええ!!」


 宇宙人ALL「!!!」

 衛生兵ALL「!?」


 宇宙人3「な、何だ今の声……」

 衛生兵1「今の声、そしてあの恥ずかしくてとてもいえそうにないセリフ…… まさか!!」


 宇宙人4「う、うわぁ〜!!! み、みんな助けてくれぇ〜!!」


 その叫び声の元に彼らは一斉に振り向く。

 宇宙人に負ぶさる奇妙な生命体。頭には帽子、上下一体となった服。年期が入ってしわくちゃのストッキング。

 それは、姿だけは看護婦の山姥といっていいような女だ。


 ???「たくましぃいのう。うるおしぃいのう。はりがあるのう。このこの」

 宇宙人4「や、やめてくれぇ。乳首をつねらないでくれぇ!! き、気持ち悪いぃ!!」

 ???「すなおじゃないのう〜。気持ちええ癖に、ほれほれ」


 宇宙人の胸元に手を滑り込ませて、乳首をいじくる山姥。

 月光に照らし出された顔はだらしなくにやけ、まさに妖怪といった表情である。


 衛生兵ALL「ゆ、湯野婦長!!」


 衛星兵たちが驚きの声を上げる。


 宇宙人3「ゲェッ!! あの女は確か、始末したはずじゃ……」

 衛生兵1「え…… 野原さん、今なんて……」

 宇宙人3「い!! いえ、その、なんでもな……」


 しまったという感じで宇宙人がたじろぐ。そのときである、少し高めの丘に二つの影がかかった。


 ???「みんな、目を覚ましなさい!!」


 衛星兵たちが一斉に振り返る。


 衛生兵ALL「す、鈴原婦長!!」

 鈴原「みんな、宇宙人たちの顔をよく見なさい。それが、彼らの本性よ!!」


 いわれて衛生兵たちは手前に居る宇宙人達の顔を見た。

 どれもこれもにやけ顔、とても人を心配するような顔ではない。そして、どいつもこいつも分かりやすいくらいに、鼻の下が伸びきっている。


 と、興奮した宇宙人の鼻息が衛生兵にかかった。


 衛生兵2「い、いやぁああああ!!!」

 衛生兵1「七瀬!? ひ、あぁ!!」


 皆が皆、まるで糸が切れたかのように宇宙人から離れだす。

 宇宙人たちは伸びきった鼻の下はそのままに、しまったという表情で汗をたらした。


 鈴原「わかった、みんな。その人たちはね、私たちのことを本気で心配してるわけでもなければ、困っているわけでもないわ。私たちの行動を観て楽しんでいるだけなの!!」

 衛生兵1「そ、そんな……」

 衛生兵3「嘘……」

 鈴原「もっといえば…… その人たちは、病気でもなければ怪我もしてない!! いたって健康体よ!!

 病気の振りをして、私たちを振り回して楽しむ……


 地球人で言うところのミュンヒハウゼン症候群患者なの!!」


 衛星兵たちがじりと後ろに下がる。


 衛生兵2「わ、私たちを騙してたのね……」


 神妙な宇宙人たちの顔。


 不意に一人の宇宙人が狂ったように笑い出した。


 宇宙人2「そうさ、俺達はナース好き好き、コスプレ系第三惑星から来た宇宙人。白タイツ星人だ!!」

 宇宙人3「君達のような若いナースの働く姿がどうしても観たくてね、病人の振りをしていたのだよ」

 宇宙人1「そこのババァは俺達の趣味の範囲外だったから始末したつもりだったんだが…… まさか、生きてやがったとはな」

 宇宙人4「あぁ、そそんなところ…… ら、らめぇえええ!!」


 そういうと、くるりと振り返り鈴原を睨み付ける宇宙人たち。


 宇宙人2「いつから気づいてたんだ鈴原さん?」

 鈴原「湯野婦長が居なくなった日からよ。あの日、心配になってつけてみて正解だったわ。おかげで湯野婦長も助かったし、あなた達の本性に気付くこともできたんですもの」

 宇宙人3「余計なことをしてくれたものだ……」

 宇宙人1「大人しくしていれば、もう少し長生きできたものお」


 目を光らせ威嚇する宇宙人。

 身構える鈴原。


 鈴原「私たちをどうするつもり!!」

 宇宙人2「今までどおりさ…… 館に戻って俺達の世話をしてもらう……」



 宇宙人1「一生な!!!」



 山崎「はいはい。そういう妄言は……」


 すかさず、鈴原の横ですましてたっていた山崎が、宇宙人たちの前に出る。

 寝ていたときには気付かなかった、山崎より宇宙人は大きい。

 山崎を見下す宇宙人。


 山崎「とりあえず、俺を倒してからにしろ?」

 宇宙人1「うるせぇぞチビ野郎!!」


 宇宙人が殴りかかる。しかし、それは大きくからぶった。

 宇宙人の目が山崎の目を捉える。そして、次の瞬間それはまったくあさっての方向へと飛ばされる。


 山崎の蹴りが見事に宇宙人の顔にヒットしたのだ。


 山崎「ここはとりあえず、俺に任せて!! 早くみんな逃げろ!!」

 鈴原「みんな、こっちよ!! 早く!!」


 鈴原が山崎の横を通り過ぎる、それを止めようとする宇宙人を制して山崎は拳を握り締めた。

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