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第十四話 初めての作戦 Part2

 ちゃぶ台の前に居並ぶ五十嵐たち四人。ちゃぶ台の上には大島のノートPCが整然と置かれている。


 高部「今日、お前たちに電話をかけたのは他でもない」


 山崎・浜田((ついにばれたかー!!!))


 ごくりとつばを飲み下す山崎と浜田。何食わぬ顔で聞いている五十嵐。めんどくさそうに半目の大島。

 

 高部「任務だ。前線部隊から逸れた小隊を救出してほしい」


 ほっと息をつく山崎。その横で浜田は胸をなでおろす。

 五十嵐は任務と聞き何がうれしいのかはしゃぎ出した。


 五十嵐「高部大佐、五十嵐小隊すぐに出動するであります!!」

 高部「まて五十嵐。救出対象の情報もなしにどうするつもりだ、早まるな」

 浜田「そうだよへ〜ちょ。落ち着いて」

 

 とりあえず床に五十嵐を座らせる。それから、こほんと咳こんで、高部は話を続ける。


 高部「救出対象は、第七衛生部隊。これは本土の病院から出向した義勇軍的部隊で、殆どの人が医療のスペシャリスト。反面、戦闘兵が殆どいない部隊だ。第三大隊所属の部隊だったが、第三部隊の撤退戦のおり奥地で孤立。現在、未確認宇宙人達に拘束されている」

 山崎「なるほどな。戦闘兵がいないから自力での脱出も不可。だが、大群で攻め入れば何とかなるんじゃ」

 高部「無理だ、彼らに最も近い大隊で、現地到着に三日はかかる。なおかつ、先日の大規模迎撃戦でどの隊も状態が良くない。とても宇宙人の包囲網を突破する力は無い」

 五十嵐「それで、あたし達の出番なんですね」

 高部「そうだ…… 資料によれば君達は、敵地の包囲網の中に孤立する形で陣取っている。ここからならば、直接救出に迎えるし、大規模な戦闘にも発展しない」

 山崎「局地戦。さらに、ごくごく小規模な戦闘を想定して話しておられますね」

 高部「あぁ。撤退兵の情報によれば、第七衛生部隊を包囲した宇宙人の数はそう多くないそうだ。ゲリラ的戦闘で活路を開き、第七衛生部隊を救出してもらう」

 大島「けど、包囲網の突破はどうするお? 一部隊を早々包囲網の中から出すとはとても思えないお」

 高部「それについては、既に手は打ってある。君達は、敵の手から第七衛生部隊を解放することだけに専念してくれ」

 大島「まぁそういうなら、そっちに任せるお。ただ、捨て駒にしたら容赦しないお」


 大島の表情に陰りが入る。気のせいか、パソコンの向こうの高部が少しどもったようだった。


 高部「それと、君達はこの作戦以後も敵陣内に潜伏してもらいたい」

 五十嵐「な、何でですか」

 浜田「今回の作戦で、本隊に合流できるんじゃないんですか?」


 浜田と五十嵐が不満な表情でパソコンへと顔を乗り出す。


 高部「つい先ほどの会議で、今後今回のような事態が起きた時の保険に君達を敵陣内に残留させたほうがいいのではという意見が出てな、君達の本隊合流はしばらく延期してもらう事になった」

 五十嵐「そんな〜」


 心底がっくりと肩を落とす五十嵐。浜田も山崎も、ため息混じりに肩を落とした。


 高部「まぁ我々も君達の実力を、我々上層部は高く買っているのだ。それに、帰還した際にはそれなりの恩給がある。しばらく我慢してくれ」

 五十嵐「は〜い。分かりました」

 浜田「…… そういわれたら仕方ないよね……」

 山崎(輸送品に手を付けたから、差し引きゼロだろうけどな……)


 大島「で、高部。救出対象の詳細情報が欲しいお」

 高部「うむ。救出対象だが、現在確認されている拘束地は……」

 大島「いやデータで欲しいお。メールか何かで送ってくれだお」


 「ガシャン」


 ノートPCからガラスの割れるような音が響く。そして、ガチャガチャとまるで受話器が揺れるような音がする。


 高部「め、メール? 手紙のことか?」

 大島「何言ってるお。メールって言ったら電子メールの事だお。手紙なんか送ってる時間なんてないお」

 高部「あ、うんそうだな。よし、電子メールか…… で、それで何を送るんだ?」

 大島「救出対象のデータだお!! お前のパソコンから、軍部のサーバーにアクセスできるお?」

 高部「サーバ??? 鯖にアクセスしてどうするんだ、大島?」

 大島「さっきから何言ってるお、高部!! まさか、おまえ……」


 しばらく続く沈黙。


 高部「いきなりいろんなこと言われても、素人には分からん。もっと一般的な言葉を使ってくれ」

 大島「メールは一般的な言葉だお。高部、まさかメールやったことないのかお?」

 高部「ば、馬鹿者!! そんなもの、ちょっとくらい。ほんのちょっと位は……」

 大島「やった事ないお?」

 高部「…… ない」


 疲れたように前倒れになる大島。

 むくりと立ち上がると、眉間に青筋を立てパソコン前に座る。


 大島「せっかく、学術機関並みのスーパーコンピュータ所有してるんだから、少しは使いこなせるように努力するお!!」

 高部「分からないものは、分からないのだ仕方ないだろ!!」

 大島「だから藻前はムカつくんだお!! この七光り!!」

 高部「な、貴様ぁ!! この私を愚弄するのか!!」

 大島「あぁ、いくらでも言ってやるお!! この機械オンチ!! 筋肉女!! 万年独身!!」

 高部「うるさい、この引きこもり!! 運動オンチ!! 貧弱男!!」


 飛び交う罵詈雑言。流石に見かねた、浜田と山崎が止めに入る。

 パソコンから流れてくる、高部の声は少し上ずっているようで、よほど精神的にこたえたのが分かる。

 素早く飛びかかかった浜田が、大島を羽交い絞めにする。それと同時にノートパソコンを大島から遠ざける山崎。


 浜田「ほら、大島。怒っても何もならないんだ、みっともないからやめようよ」

 大島「離すお浜田! あいつにはガツンと言ってやらないと気が済まないお!!」

 山崎「すみません、高部大佐。大島の奴が馬鹿なこと言って」

 高部「ふー、ふー…… ふん、まぁいい…… 今回は特別に大目に見てやる」

 大島「何が大目に見てやるだお!!!」

 浜田「大島! やめろってば!!」



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 数分後。


 大島「これで、救出対象のデータは揃ったお」


 大島は高部のPCをリモートコントロールして救出対象の情報を入手した。


 山崎(まさか、ハッキングするとは)

 浜田(凄いことには凄いが……)


 高部「どうだ、データは取れたか、大島?」


 山崎・浜田((自分のパソコンをハッキングさせるこいつも凄い))


 高部「しかし流石大島。凄いなお前は……」

 大島「いいかお。次も何か用事があったら、さっき教えた手順でVNCサーバを立ち上げるお」

 高部「分かった大島。また何かあったときは頼む…… あと、その…… メールというのも教えてくれ」

 大島「そのうち教えてやるお。それじゃ、切るお」

 高部「あ、おおし……」


 何か言いたげだった高部を半ば無視する形で電話を終了する、大島。

 大きなため息をつくと、へたりとちゃぶ台に倒れこむ。


 大島「あいつの相手は疲れるお……」

 山崎・浜田「「お、お疲れ……」」

 五十嵐「それにしても、凄いよね島ちゃん。パソコンオタクって奴?」

 大島「何とでも言えばいいお」


 少し不機嫌そうに起き上がると、大島は高部のパソコンから取得した資料を表示する。

 拘束されている対象の位置情報と、現在の自分達の位置情報を画面いっぱいに表示した。


 山崎「いや、実際凄いな大島」

 浜田「いとも簡単にハッキングしちゃうなんて……」

 大島「ただリモートコントロールできるようにしただけだお。こんなのハッキングなんていわないお」

 浜田「リモートコントロール?」


 何を言っているのか分からないという顔をする浜田。頭が痛そうに手を頭にやる大島。


 大島「もういいお……」


 あきらめるように大島は言った。


 山崎「それにしても、高部にハッキングがばれたらどうするんだ?」

 大島「だから…… もう! 本人同意の上でやったんだから、別に罪になんかならないお」

 山崎「そ、そうなのか……」


 また、あきらめた表情になる大島。


 大島「それに……」


 大島が言うや否や、再び電話の呼び出し音がノートPCから鳴り出す。

 大島は本当に面倒くさそうに電話に出た。


 高部「大島、PCの終了の仕方を……」


 大島「こんな奴に、そんなこと一生理解なんてできないお」

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