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第十三話 初めての作戦 Part1

 大島「サルベージ対象は、元看護婦の湯野鈴鹿を隊長とする約八名。全員が女性。


 全員が一箇所の施設内にまとめて収容されている模様だお。


 施設内で何が行われているかはわからないが、彼女達はある程度の行動の自由が認められているらしく。衛星から洗濯物を干す隊員の姿が確認されているお。


 以上、へ〜ちょ、どうぞ」


 「ガガ……」


 五十嵐「こちら五十嵐、浜田。現在、西方に目標と思しき建物発見。島ちゃん、照合お願い」


 「ガガ……」


 大島「分かったお、今そちらの位置情報と照合してみるお」


 「ガガガ……」


 山崎「こちら山崎。同じく東方に目標物らしき建造物を発見。確認を頼む」


 「ガ…」


 大島「了解。へ〜ちょ、照合の結果まず間違いないお。山崎の照合が終わるまでしばらく待機お」


 「ガガ……ガ…」


 五十嵐「了解」


 「…… ガガ…」


 大島「山崎、照合の結果間違いないようだお。戦闘準備を開始してくれだお」


 「ザガ…… ガガガ!!」


 山崎「こちら山崎。了解した。午後6:00。夕闇にまぎれて、建造物に突入する」



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 無線の電源を切る山崎。胸ポケットに無線をしまうと、アサルトライフルを腕に抱える。


 山崎「しかし、久しぶりだなこういうの。まぁ、まさかこの面子でミッションをこなすとも思わなかったが」


 局地戦とはいえ、建造物内での戦闘になるかどうかは分からない。それゆえのアサルトライフルの選択であろうか。


 山崎「50分か…… はてさて、どうやって攻めるかな」


 そうやって茂みの中から建造物を覗く。

 建造物の周りに見張りは居らず、山崎ほどの手練でなくても進入は容易そうだ。

 裏口の状態を確認した山崎は、茂みの中に戻る。

 建造物の方に背を向けると、アサルトライフルを腹上に尻をついた。


 作戦の手はずはこうだ。


 まず、山崎が単騎で建造物に突入。衛生兵達に救援の旨を伝え、建造物からの脱出を扇動する。

 後、目的地の途中で五十嵐たちと合流。五十嵐たちのトラップに、宇宙人がかかった所で五十嵐たちと共に殲滅戦に入る。

 ここで宇宙人が退却すれば、衛生兵達と共に高部が指定したポイントへ移動。

 もし、宇宙人が食い下がるようであれば、玉砕覚悟で衛生兵たちのポイント移動の時間を稼ぐ。

 脱出の合図は、無線で入れることになっており。夜七時までに、連絡がなかった場合は敵に捕獲されたものとして、五十嵐たちは本拠地に撤退する。


 山崎「失敗は許されない。つっても、相手は宇宙人。つかまって殺されるかは分かんないけどな……」


 一呼吸置いて、山崎は尻を上げる。前かがみに茂みの中を移動すると建造物へと接近する。


 建造物は、ジャングルの奥地だというのに何故か立派なお屋敷だった。

 宇宙人の科学力で立てたのか、はたまた元からあった誰かの別荘地か。

 だがしかし、厄介なのは窓の存在だ。既に辺りは暗くなっているとはいえ、自分の存在を宇宙人に知られるのはやっかいだ。

 作戦の成功率から行って、出来れば拘束されているサルベージ対象者に状況を説明するまでは知られたくない。


 ゆっくりと、館の壁伝いに裏玄関に近づく山崎。

 頭上の窓を常に警戒しながらも、何とか裏口までたどり着くとゆっくりと館の中へと足を踏み入れた。


 入った場所はどうやら台所のようだ。厨房にはプラスチック製の白い皿と白いお茶碗、そして何やらトレイのようなものがたくさん重ねられている。


 山崎「ずいぶんと綺麗だな……」


 きょろきょろと辺りを見回す。

 右側は行き当たりのようで光が差していない。左を向けば、木製のドア。

 ゆっくりと、今度は音を立てないようにドアに近づく。

 少し開いて見てみればそこは廊下のようである。

 必要最低限開けたドアから山崎は体を滑らせるように出る。


 山崎「ん……」


 何やら人の話す声が聞こえてくる。

 いざという時のために山崎はアサルトライフルのロックを外し、臨戦状態に入る。

 二歩三歩と歩み寄ると声のする部屋に背中を合わせる。

 振り向き、少しだけあいたドアから中を覗く。

 その光景に山崎は目を見開いた。



 宇宙人1「看護婦さん…… リンゴ剥いてくれ、リンゴ……」

 衛生兵1「はいはい。そうだ、ウサギさんが良いですか?」

 宇宙人1「ウサギさん、ウサギさんにしてくれぇ」


 宇宙人2「すみませんねぇ。下の世話までさせちまって」

 衛生兵2「仕方ないですよ動けないんですから…… こら、じっとして」

 宇宙人2「はぁああ…… ほんとにすみませんねぇ、看護婦さん」

 衛生兵2「もう、これが私達の仕事なんですから、そんな気にしなくていいんですよ」



 まさしく、病院の風景そのものである。


 ベットに寝ているのはまさしく宇宙人たち。しかも、どいつもこいつも体のどこかに包帯を巻いている。まさしく重症という感じの奴らばかりだ。


 山崎「ど、どうなってんだこりゃ?」


 と、その時そっと山崎の後ろに手が伸びた。


 山崎「!!!」


 ガタリと音を立てて後ろを振り返る山崎。宇宙人に気付かれたのかと、すぐさま銃を手の主に近づけた。


 しかし、立っていたのは中にいる衛生兵と同じいでたちの女。


 ???「しー! 下手に騒ぐと気付かれますよ……」


 口元に人差し指をやり静かにのポーズをとる女性。長い黒髪がナース服に美しく映える様に、山崎も思わず気後れした。

 と、山崎を制した彼女はドアを開ける。

 壁とドアの間に挟みこまれるようになった山崎は、彼女の顔をじっと見つめる。すると、何を思ったのか彼女は山崎にウィンクをして見せた。


 ???「みんなごめんなさい。うっかりそこで転んじゃって」

 宇宙人ALL「か、看護婦長さん!!!」

 衛生兵3「だ、大丈夫ですか鈴原婦長!!」

 衛生兵1「直ぐに赤チンでも!!」

 鈴原「大丈夫、心配しないで。

 それより、今日はミーティングを行うから、十五分後に私の部屋に来るように皆に伝えておいて」

 衛生兵ALL「わかりました〜」

 鈴原「それじゃ、私は婦長室に行ってるから。あとはよろしくね」


 鈴原は落ち着いた表情でそれだけ言うとぱたりとドアを閉める。

 なんとも肝が据わった女に、感心を抱いた山崎。呆けた顔が今ひとつしまりがない。

 それを見てか、鈴原はくすくすと笑う。


 山崎「な、何がおかしい?」

 鈴原「別に…… それより、お話があるんでしょう。婦長室は上よ、ついて来て」


 鈴原は口元を手で押さえながら歩き出す。

 アサルトライフルにロックをかけた山崎は、少し間を置いて彼女のあとを追った。

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