第十一話 古今東西編 前編
山崎「古今東西…… アイドルグループ!! ピンクレディ!!」
浜田「モーニング娘!!」
山崎「メロン記念日!!」
浜田「SPEED!!」
二人は卓球台の前で、古今東西ゲームを繰り広げる。浜田の卓球の能力は普通だが、山崎の動きはプロと見まごうほど素早く的確だ。
山崎「SMAP!!」
浜田「え、えーと…… あ!!」
きわどい所にきたボールを浜田は取りこぼしてしまった。
山崎「よし!! 俺の勝ちだな!!」
ガッツポーズで勝利を喜ぶ山崎。
浜田「強いなー山さん。普通にやっても勝てる気がしないよ」
山崎「まぁな。俺は昔、男版福原愛と呼ばれた男だからな」
大島(微妙な喩えだお)
五十嵐「ねーねー。次はあたしね、あたし!」
山崎「よし、それじゃ俺と交代な」
ピョンピョンと卓球台の前ではねる五十嵐にラケットを渡すと、山崎はちゃぶ台の前に座った。
渡された五十嵐はうれしそうにラケットを振り回すと、今まで山崎がいた場所に立つ。
五十嵐「よーし。負けないぞ、なっちゃん」
浜田「僕だって負けないよ、へ〜ちょ!!」
五十嵐「古今東西〜…… 日本のお菓子!! おはぎ!」
浜田「みたらし団子!」
五十嵐「お饅頭!」
浜田「わた飴!!」
先ほどとは違い、どっこいどっこいな試合が始まる。山崎はそんな試合を見ながら息も荒げず茶をすする。
山崎「それにしても、卓球台まで輸送するなんて…… 上のやつらはいったい何考えてんだろうな?」
大島「案外何も考えてなさそうだお」
パソコンになにやら文字を入力しつつ、大島が言う。あまり興味が無いのか、先ほどから試合には一度も参加していない。
山崎「どうだ、お前もやってみたら?」
大島「めんどくさいお。そんなことする位なら、寝たほうがマシだお」
山崎「随分なこと言ってくれるじゃないか…… さては、お前運動オンチだな」
大島「そんなことないお。ただ疲れるのがいやなだけだお」
淡々と答えるあたり、あながち運動オンチではないようだ。
山崎はこのなんとも突き放すような会話に少々辟易して、五十嵐たちの試合が行われている卓球台のほうを向いた。
五十嵐「ねり飴!!」
浜田「金平糖!!」
五十嵐「かき氷!!」
浜田「きんつば!!」
五十嵐「ぼた餅!!」
大島「へ〜ちょ。ぼた餅とおはぎは一緒だお」
五十嵐は困惑の表情を浮かべ、大島のほうを振り返る。と、そこを狙ってすかさず浜田。
浜田「お煎餅!!」
五十嵐「あぁ!! も〜…… 島ちゃん変なこと言わないでよ、負けちゃったじゃない!!」
大島「おはぎとぼた餅は別定義で、ルール上でありなのかお?」
浜田「う〜ん。難しいところだけど…… どう、山さん?」
山崎「無しだな! 同じだもん」
大島「というわけで、漏れがいうより先にへ〜ちょは負けてたお」
五十嵐「えぇ〜、そんな〜」
へたりと膝をつく五十嵐。ラケットを卓球台の上に置いた浜田は、笑いながらちゃぶ台へとむかう。水出し麦茶の容器に手を伸ばすと、自分のマグカップにそれを注ぐ。
浜田「久しぶりに運動すると疲れるね……」
息の上がった様子でお茶を飲み干す浜田。汗がダラダラと額から流れている。
五十嵐「も〜。なっちゃん、早く早く!!」
浜田「ちょっと待ってへ〜ちょ。もう一杯だけ飲ませて」
五十嵐「早くやろうよ〜」
???「では私が相手をしてあげましょう」
五十嵐・山崎・浜田・大島「「「「!?」」」」
ジャージ姿に、何故か帽子。ちらりと見える目もなぜだか流し目風。色白のわけのわからない男が卓球台の前に立っている。
五十嵐「誰?」
卓球王子「私の名前は卓球王子。青春星雲卓球星から来たエイリアンだ」
山崎「エイリアンだと!!」
大島「よくもまぁノコノコと出てきたお!!」
いうや否や殴りかかろうとする山崎と大島。だが、ちゃぶ台から立ち上がろうとした瞬間、何かが彼らに向かって飛んでくる。とっさに腕でガードした山崎。しかしながら、モロに急所の眉間に食らった大島まはたまらず後ろへ仰け反った。
浜田「大丈夫か、大島!?」
どうやら打ち所が相当悪かったらしい。大島の目は白目を向いて、口は泡を吹いている。息はしているから、軽く気絶したのだろう。
山崎「これは…… 卓球のボール。まさか、お前が?」
卓球王子「そうさ、卓球の王子を名乗るこの僕だ、こんなことは造作も無いことさ。まぁ、君に見切られたのは想定外だったけどね……」
山崎「てめぇ…… 何が目的だ。俺たちの命か」
卓球王子「そんなものに興味はないさ。いっただろう、僕が相手をしてあげるって」
そういって、卓球王子は今まで浜田が持っていたラケットを手に握る。
卓球王子「正々堂々卓球で勝負しようじゃないか!! この地球の支配権をかけてね!!」
対面の五十嵐を指差し叫ぶ卓球王子。すると、どこからとも無く光が差し込み、なにやら上から降りてくる。
ファン「キャー卓球王子!!」
ファン「頑張ってー、卓球王子!!」
ファン「キスして〜卓球王子!!」
あっという間に、五十嵐と卓球王子の周りには、女エイリアンが集まり始める。
浜田「な、なにこれ……」
山崎「頭の痛い展開になってきたな……」
五十嵐「え、ちょ…… えぇ!? どうなってるのぉ〜 助けてぇ、なっちゃ〜ん!!」
既に無数の女の子エイリアンに囲まれた卓球台のほうから、ピョンピョンと跳ねて助けを求める五十嵐。
卓球王子「敵を前にして逃げるというのかい? まぁ、僕が相手なら仕方ないか……」
さらりと髪をなびかせ、女の子たちに流し目をする卓球王子。とたん、女の子たちの中から悲鳴が上がった。
ファン「キャー卓球王子!!」
ファン「しびれるー、卓球王子!!」
ファン「強く抱いて〜、卓球王子!!」
五十嵐「だ、だって。そんな事言ったって……」
卓球王子「ふ、まぁそれもいいさ。
けどね、人は逃げてばかりじゃ前に進めない。いつかは戦わなくてはならないときがくるんだ。
そして、今がそのときだ!!
ここで逃げたら君は一生負け犬のままだよ、五十嵐君!!」
五十嵐「あたし、今日始めて卓球やるのに、勝てるわけないよ〜!!」
再び起こる大歓声。完全に威圧されたのか、犬ころのように五十嵐はおびえきってしまった。
山崎「やれやれ、仕方ないな……」
ぼりぼりと頭をかくと、卓球台を囲む女の子の間を割っていく山崎。後ろから浜田も着いていく。
山崎「おい、卓球王子。そこらへんにしときな、みっともないぜ。それとも、弱い者いじめはお前のプライドが許すのか?」
卓球王子「ふ、勝負には常に強者と弱者が付きまとうものさ」
山崎「ほう、なら遠慮なくいじめてやるよ」
ぴたりと卓球王子の動きが止まる。ゆっくりとその首は、卓球台の前に出てきた山崎に向けらた。
浜田「山さん、どうするつもりなの?」
後ろについてきていた浜田は、卓球王子の雰囲気に威圧されつつも、山崎に問いかける。
不適に笑うと山崎は、五十嵐からラケットを奪い取った。
山崎「俺が相手をしてやるぞ、卓球王子。お前に、敗北の味というやつを教えてやる!!」
びしっと握ったラケットで卓球王子を指す山崎。
おもしろそうに、卓球王子はほほをゆがめた。
大島「後半へつづくお……」