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おいかけっこ

作者: N澤巧T郎

電車に乗り遅れて俺は走り出した。

その時、ふと昔のことを思い出した。


子供の頃、電車とよく競争していた。

いつもいつも負けていた。

それがくやしくて。

めちゃくちゃくやしくて。

何回も何回も競争していた。

そしたら学校で一番足が速くなった。

それでも勝てないから何回も何回も競争した。

そしたら地区で一番足が速くなった。

それでも勝てなくて、走り続けた。

中学の時、県で一番足が速くなった。

俺に負けた人が俺に聞いた。

「なんでそんなに早いんだ。」

「悔しいから。」

また俺は電車と競争した。

あと少しというところで電車は先に曲がっていく。

そして背を向けて走り去る電車を見つめるんだ。

それからしばらく競争しなかった。

出来なかった。

俺は遠くの高校に行って走りまくっていた。

そして全国の高校生のなかで一番足が速くなった。

トロフィーと表彰状を持って家に帰った。

そして、いつものスタート地点に立った。


プシュー


いつものようにドアが閉まる。


「スタート!!」


駅の前にあるお肉屋さんのおばさんが言った。

俺は一気に駆け出した。


「今度こそ勝てー!!」


本屋のおじさんが言った。


「来てるぞー!!」


八百屋のおじさんが言った。

電車の音が後ろから近づいてくるのがわかる。

目の前には曲がり角。

電車はいつも右へ曲がっていく。

電車を見ることなく左に曲がる。

ただ、それがしたいだけなんだ。



誰に見せるわけでもなく、右手を高々と突き上げた。

俺はそのまま全速力で走り続けた。





「…うわっ!!」

ホームのギリギリまで行って落ちそうになった。


「はあ…はあ…はあ…。」


電車は悠然と走り去っていく。

ワイシャツが汗でベトつく。

ネクタイを緩ませながら一言呟いた。



「……次は……勝つ……!!」




負けると悔しい。

ただそれだけ。

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