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格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第五章「魔女の試練」編
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第九十六話「サラマンダー」


「グギャアアアア!!」


『ッ!?』


 喉を震わせて、巨大なサラマンダーは叫び声を上げる。叫び声は大地を揺るがし、ミズハとブレアに衝撃を与えた。


 二人は瞬時に戦闘態勢を取り、武器を構える。


「…………どうする?」


「…………どうしよう?」


 警戒を解くことなく、二人はどうするかを考える。


 この状況は危険だ。それはサラマンダーが危険というわけではない。いや、高ランクの魔物であることは確かだ。

 しかし、ドラゴンに比べれば危険度は格段に落ちる。


 ならば、なぜこの状況が危険なのか。それは、火山でサラマンダーに遭遇することが危険なのだ。


 サラマンダーの見た目は巨大なトカゲだ。硬い鱗に鋭い爪、尻尾の先には炎が灯っている。性格は穏やかとされているが、一度怒ると辺りを破壊し尽くすほどだ。


 そんなサラマンダーは火山で絶大な力を発揮する。その力は時にドラゴンの力を超えるとも言われている。攻撃力、防御力共に数倍に上昇し、動きも早くなる。その為対峙した冒険者は、逃げることもできずに殺されてしまう。


 今目の前にいるサラマンダーは、身体全体をより一層真っ赤に染め、怒りのサインである紅い目をしている。


「――――!!」


 サラマンダーが動き出した。四本の足で素早く移動し、二人に近づいてくる。


「悩んでいる暇はなさそうだ!!」


 刀を抜いたミズハは、サラマンダーの攻撃が来る前にその場を離れた。


「よっと」


 ブレアはスレッドが以前していたことを真似して、足裏に紋章を展開させる。紋章術を発動させ、反発力で空へと飛び上がる。


 二人が場を離れた瞬間、サラマンダーの鋭い爪が大地を切り裂く。その威力はどれだけ強靭な鎧を装着していても、一瞬で破壊されてしまうほどだろう。


「刺すしかないな」


 刀で突きを繰り出す様に構えたミズハは、サラマンダーの側面を攻撃する。


 ガキ!!


 前足に突きを入れるが、鱗に阻まれてしまう。普通のサラマンダーならば攻撃が通用するが、防御力の上がったサラマンダーには通用しない。


 攻撃を防がれたミズハは身体を硬直させてしまう。その隙にサラマンダーの攻撃が迫る。


「ミズハ!!」


「ッ!?」


 空へと飛び上がっていたブレアはミズハの名前を叫ぶ。咄嗟に「魔女の眼」を発動させ、紋章をミズハの足元に展開させた。


「ちょ、待っ!!」


 これからブレアがしようとしていることを察知し、ミズハは慌ててブレアを止めようとする。


 しかし、遅かった。


「きゃああああ!!」


 紋章術が発動し、ミズハは宙に舞った。しっかりと体勢を整えていなかったので、不格好な形での飛翔となった。


「よかった」


「よかった、じゃない!!」


 飛び上がったミズハの近くにやってきたブレアが汗を拭きながら一安心しているが、ミズハにしてみれば堪ったものじゃない。


 突然重力から切り離され、身体が宙に浮いたのだ。怒らずにはいられない。助かったとはいえ、かなりの恐怖があった。


「さて、どうしよう」


「いやいや、何もなかったように先に進めないように!!」


 ミズハの抗議を無視して、ブレアはどうするかを話し合おうとする。その間も紋章術を発動させ続け、空中に避難している。


 このまま空中を移動し続ければ、サラマンダーから逃げることは出来る。だが、それでは意味が無い。

 彼女達の目的は「コロムの葉」を手に入れることだ。この場から遠ざかっては意味が無い。


「ブレア、紋章術でどうにか探索できないか?」


「無茶言わない。カロリーナみたいなことは出来ない」


 カロリーナが使用していた紋章術で色んな事が出来ると思っていたミズハ。対してブレアはあんなことは早々出来ないと言い放つ。


 確かにブレアも紋章術に関しては天才だ。大体の紋章に関して扱うことが出来て、応用に関してもセンスがある。


 だが、カロリーナはブレアの一歩も二歩も先にいる。才能という面でいえばブレアと同等かそれ以上であり、更には経験もある。

 いずれはブレアもカロリーナの域に達することが出来るだろうが、今はまだ経験が足りない。


「つまり、サラマンダーをどうにかするしかない、ということか」


「そういうこと」


 この状況を打破するしかない。


「火山で無ければ、問題ないんだが……」


 サラマンダーが強くなっているのは、火山の力である。そのアドバンテージさえなければ、サラマンダーに苦しめられることはない。


「…………場の属性を変える。時間は5分。その間に頼める?」


 ブレアが大胆な発言をする。場の属性を変えるなどそう簡単に出来るものではない。


 しかし、ミズハはブレアの言葉を疑うことなく、頷いた。どのようにして属性を変えるのか、ミズハには想像もつかないが、ブレアが変えるというのだ。

 信じるのが仲間だ。


「了解。ブレアも頼んだ」


 お互いの拳を合わせて、二人は作戦を実行した。






 空に浮いたまま、ブレアは複雑で巨大な紋章を展開していく。集中し、一つの紋章を完成させていく。


「…………」


 辺りからの熱気と集中から来る精神的な疲れで額から汗が流れる。


 ゆったりとした動きで紋章を描いていく。この紋章は正確さが必要だ。少しでも術式を間違えると、術が暴発してしまう。


「式を分解…………再構成」


 幾つもの紋章を展開させ、その構成を紐解き、巨大な紋章に組み込んでいく。頭の中で式を構築しながら、慎重に紋章を完成させていく。


 そして、きっかり5分後紋章は完成した。


「アイスグラウンド」


 次の瞬間、辺り一面が氷で覆われた。さすがにサラマンダーまでは凍りつかせることは出来なかったが、それでも場の属性である炎を変化させることはできた。


「はあ、はあ…………」


 場の属性を変化させるには、大量の魔力が必要だ。ブレアの魔力は殆ど消費され、ゆっくりと氷の上に降りた。


「ミズハ、お願い」


 最後の魔力を振り絞り、宙に浮いているミズハの刀に氷の紋章術で属性を付与する。


「はあああ!!」


 ブレアの紋章術が解除され、サラマンダーの上空から落ちていく。刀の切っ先を下に向け、サラマンダーの背中に刺し込んだ。


「ぐぎゅゅぅぅ!!」


 先ほどまでのサラマンダーならば、簡単に回避することが出来ただろう。

 しかし、辺り一面が氷となり、能力の落ちたサラマンダーでは逆に動きが悪くなった。


 刀は簡単に胴体を貫通し、刀に付与された氷の紋章術がサラマンダーを氷漬けにしていく。


 やがてサラマンダーの叫び声は聞こえなくなり、二人の勝利が確定した。



いかがだったでしょうか。

だいぶ大急ぎで書いたので、誤字脱字があるかもしれません。

指摘していただけるとありがたいです。


間もなく百話。百話までいったら、何かしたいところです。

それまで頑張って執筆していきたいです。

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