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格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第五章「魔女の試練」編
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第九十五話「ファイラル山」


「ついにここまで来たな…………」


「うん…………」


 目の前に見える山を前にして、二人はしみじみとこれまでを思い返していた。脳裏にはこれまでの大変な冒険が浮かんでいた。






 カロリーナの協力を確約させた二人は、早速薬の材料の採取に向かった。


 各国を巡り、様々な場所に訪れた。山に森、果ては海に潜って材料を採取したこともあった。簡単に手に入ったものもあれば、入手するだけで数週間掛かったものもある。

 その間にクエストをしながらも、何とか順調に材料を集めていった。


 そして、遂に最後の一つまで集まった。


 二人は最後の材料『コロムの葉』を採取するために、北ハイロウの北に位置する活火山、ファイラル山に挑もうとしていた。






 ミズハとブレアの視線の先には、紅く燃える山がそびえ立っている。辺りは燃える様に熱く、そこに立っているだけで汗が噴き出してくる。


「熱いな…………」


「熱い…………」


 二人も熱さを我慢しながら、登山の準備を進めていた。


 火山を登る前には下準備が必要だ。防具を耐火性の物に変え、特に靴は決して燃えない物を選ぶ。


 ファイラル山はハイロウでも有名な活火山だ。地面の下にはマグマが流れており、あちらこちらから煙が上がっている。頂上付近ではマグマが噴き出し、植物は殆ど自生していない。


 また、危険な魔物も多い。火山という厳しい環境で育った魔物は、強靭な肉体を持ち、凶暴な性格をしている。


 そんな危険な活火山にしか「コロムの葉」は自生していない。


 ここまでの道のりは少々難しいものがあった。

 ファイラル山は北ハイロウにあり、南ハイロウから入るには厳しい審査が必要だ。また、審査だけで数カ月掛かってしまう。


 それではいつまで経ってもコロムの葉を取りに行くなど出来ない。


 そこで二人は一旦リディア共和国に入り、そこから北ハイロウに入った。リディア共和国から北ハイロウに入国する際も幾つかの審査があったが、南ハイロウから入国することに比べれば簡単に入国することが出来る。


 準備が整えた二人。進み出す前にブレアはミズハを止め、紋章を展開させる。


「…………アイスミスト」


 ブレアが紋章を発動させると、細かな氷が霧の様に二人の身体を纏う。冷気が周囲の熱さを中和させる。これだけでも動きが全く違ってくる。


「よし、行こう」


 気合いを入れ、二人はファイラル山に入っていった。






 ザン!!


 迫りくる魔物にミズハの刀が振り下ろされる。空から襲いかかってきた炎を吐く鳥、ベルバボは身体が二つに分かれた。その行方を確認することなく、ミズハは次の魔物に対処する。


「アイスショット」


 ブレアの紋章術で幾つもの氷が空を飛んでいるベルバボに直撃する。数匹が墜落し、他のベルバボが警戒しながら旋回していく。


 更に数匹倒した後、ベルバボは逃げる様に巣へと帰っていった。


「ふう…………」


「疲れた」


 ベルバボとの戦いが終了し、二人は辺りを警戒しながら武器を納める。


 二人は山の中腹に来ていた。

 ファイラル山には山道が無い。本来人が入らない場所であり、冒険者以外は立ち入り禁止とされている。


 その為、進む先を遮る大岩や多くの魔物が二人の進行を阻んできた。これまでも数度の戦闘があり、大分二人にも疲労の色が見える。


「カロリーナの話では、確かもう少し先に『コロムの葉』があるとはずだが」


「後少し。頑張ろー」


 ブレアの気の抜けそうな掛け声で進もうとしたその時、二人の視線の先にあるものを見つけた。


「…………女の子?」


 そこには一人の少女が座りこんでいた。






「お父さんが病気なの」


 山で出会った少女、ララは父親の病気を治すためにやってきたのだと言う。


「それじゃあ、ララも『コロムの葉』を?」


「うん。お医者様がその葉っぱがあれば、病気を治すことの出来る薬を作れるって」


 ララは母親が医者と話をしているのを盗み聞き、この山に生えている「コロムの葉」があれば薬を作れることを知った。


 そこで、母親には内緒で「コロムの葉」を手に入れるためにここまでやってきたのだ。


「一人でここまで…………運が良い」


 話を聞き終え、ブレアは思った感想を述べる。少女一人でこの危険な山を登ってきたのだ。一度も魔物に出会っていないのは奇跡に近い。


 ここでミズハ達に出会ったのは、本当に運が良い。


「お姉ちゃん達も『コロムの葉』を採りに行くんだ。ララの分も採ってきてあげる」


「本当!!」


「任せなさい」


 目を輝かせながら喜ぶララに約束する。絶対に手に入れなければならない理由がもう一つ出来た。






 安全な場所までララを送り届け、二人は再び「コロムの葉」採取に向かった。時間は掛かってしまうが、子どものララをそのまま山の真ん中で待たせるわけにはいかない。


 ファイラル山には殆ど植物が生えていない。マグマが飛び出す様な厳しい環境では植物は生きていけない。更に残った植物も魔物に食べられ、見える限りでは植物など無いように見える。


「……本当にあるのか」


 特殊な手袋で高温の岩を避けながら、辺りを探索していく。次々と岩を避けていくが、草一本も見付からない。

 本当にこの場所に「コロムの葉」があるのか不安になってくる。


「…………ウインド」


 ブレアは風の紋章術を使用して、辺りの岩を吹き飛ばす。吹き飛ばされた岩は遠くに落ちていく。


 岩が無くなったことで探索しやすくなったが、やはり植物は何も見付からない。


「移動してみるか」


「うん」


 この場所での探索を諦め、もう少し先に進んで見ることにする。


 カロリーナから聞いた「コロムの葉」の特徴は、気温が高くなければ生えてこない特殊な植物である。頂上に行くほど生えている可能性がある。

 だが、今の装備ではこれ以上行くのは危険である。紋章術で緩和させているが、それでも限界がある。


 現在でも汗が溢れだしており、頻繁に水を摂取しないと脱水症状で倒れているだろう。


 それでも、スレッドを助けるため、そしてララの為にも見つけなければならない。




 ドン!!


 『ッ!?』




 突然聞こえてきた大きな音のする方に視線を向け、二人は目を大きく見開き、動きを止めた。


 二人が見たもの、それは巨大な岩を頭に乗せ、怒りに満ちたサラマンダーの姿だった。



次の更新も少し遅れます<(_ _)>

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