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格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第五章「魔女の試練」編
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第九十四話「条件」


 カロリーナは指を軽く動かし、空中に紋章を描く。紋章は即座に発動し、本棚にある本が一人で動き出す。幾つかの本が宙に浮き、カロリーナの元までやってきた。


「…………どういう原理?」


 ひとりでにカロリーナの手元までやってきた本の動きに、ブレアは目を見開いて驚愕していた。


 紋章術でこのような動きをさせるものは見たことが無い。たとえ全く新しい術式であっても、それなりに読み取ることが出来る筈だ。


 しかし、今の動きをブレアは全く理解できなかった。


「これかい? これは風の紋章の応用さ」


 感じることもできないほどの空気の動きで本を動かす。ほんの僅かな力だけを制御する力は伝説とまで言われていたことを実感させた。


 その中の一冊を掴み、目的のページを開いてミズハとブレアに見せる。


「これを見て御覧」


 示された個所を見てみると、そこには理解できない記号が並んでいた。


「…………すまん、読めない」


「古代文字っぽいけど、分からない」


 古代文字が多少だが読めるブレアでも、目の前の記号を読むことは出来なかった。


 二人の言葉を聞き、カロリーナはしまったとでもいうような顔をした。


「悪い悪い。これじゃあ読めないね」


 そう言って再び指を動かし、本の上に紋章を描く。発動した紋章の力によって二人にも本の内容が読めるようになる。


「…………なあ、ブレア」


「…………なに、ミズハ」


「…………紋章ってこんなに万能なのか?」


「…………そんなわけない」


 あまりにも便利に紋章術を操っていくカロリーナに呆れる二人だった。呆れる二人をどうしたのか思いながら首を傾げるカロリーナがとても印象的だった。






 本題の先に今の紋章術の説明を軽く受ける。それによると、今使用したのはカロリーナが独自に開発した紋章であるという。


「…………どんだけ」


「ほっときな。さっさと本題に入るよ」


 呆れた様なブレアの視線を無視して、カロリーナは話を進めていった。


「昔にも『竜の血』を飲んだ人間がいる。そして、助かった者も」


 本には『竜の血』を飲んだ者の物語が記されていた。

 ある時、一人の冒険者がドラゴンとの戦いで、武器に付着した血を舐め、膨大な魔力を手に入れた。冒険者はドラゴンに打ち勝ち、『竜の血』による毒で死のうとしていた。


 しかし、持っていた薬で毒が中和された。


「その薬があれば…………」


「だけど、そう簡単にはいかなかった。続きを読んでみな」


 カロリーナが指し示した個所を読んでみる。


 毒を中和した冒険者は、確かに身体は回復した。だが、心は違った。

 冒険者は『竜の血』によって既に精神が破壊されていた。どれだけ薬で毒を中和したところで既に壊れた心は元に戻らない。


 ただ毒を中和するだけでは、スレッドを助けることはできないのだ。


「…………無理、なのか」


 絶望が頭を過ぎる。諦める気はないが、それでも心が折れそうになる。


「諦めるには早いよ。私は難しいとは言ったが、無理とは言ってないよ」


「どういうこと?」


「確かに薬だけでは回復させるのは難しい。だけど、紋章術を併用すれば結果が違ってくる」


 薬だけでは回復できない。それなら、紋章術を使えばいい。


 本によると、当時は紋章術が今ほど盛んではなかった。冒険者も薬だけで治療を行ない、他の治療とは併用しなかった。


 確実ではないが、可能性としては高い。だけど、失敗すればスレッドは決して助からないとカロリーナは語る。


「どうする? 確実ではないが、治る見込みがある。それに賭ける覚悟はあるかい?」


 助からないかもしれない。それでも挑戦するかの覚悟を問うた。


 対するミズハとブレアは、しっかりとした覚悟を持って答えた。


「絶対に助ける。そうスレッドと約束したんだ」


「決して諦めない。苦しくても、真っ直ぐ前に進む」


「…………いいだろう。力を貸してやるよ」


 二人の強い意志を感じ取り、カロリーナは力を貸すことにした。






「それで、報酬は…………?」


 カロリーナに協力してもらえることにはなったが、報酬などで条件は大きく変わってくる。

 あまりにも多額では、今すぐ治療を頼めない。逆に安過ぎれば、治療できるのか疑問に思ってしまう。


 二人は固唾を飲んでカロリーナの言葉を待った。


「そうだね…………金貨50枚ってところか。ちなみに、後払いで構わないよ」


「…………本当にそれでいいのか?」


 カロリーナが提示した金額に戸惑う。


 金貨50枚というのは、決して安い金額ではない。一流の冒険者でも貯めるのに時間が掛かってしまう。


 しかし、スレッドを治療してもらうには格安すぎる。本に記されている材料などを確認すると、値段にして提示された額の数十倍する可能性もある。


「勘違いしているようだね」


「勘違い?」


「私が行なうのは、薬の調合と治癒の紋章術の補助。薬の材料はあんた達に集めてもらうよ」


 『竜の血』の毒を中和させる薬はかなり特殊な材料を使用する。一般の市場には出回らず、採取するのさえ難しい。たまに市場にでても、あまりに高過ぎて二人には手が出ない。また、入手先に冒険者であっても手に入れるのが難しい材料もある。


 その全ての材料を集めるのは、ミズハとブレアの役目である。


「なるほど。だからこその価格」


「そういうことさ」


 幾つかの材料はカロリーナが用意してくれるが、基本的には二人が収集する。集めた材料をカロリーナが調合し、薬を使ってスレッドを治療する。


 こうしてスレッドを助けるため、二人の材料集めは始まった。



ちょっと納得いかない部分もありますので、後日手直しします<(_ _)>

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