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格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第五章「魔女の試練」編
92/202

第九十話「戦友」

間もなく百話に到達します。

まだまだ先は長いですが、百話記念にリクエストか何かしたいですが、

出来るだろうか(-_-;)


まあまだ到達していないのに、先のことを考えても仕方ないですね。


では本編をお楽しみください。


 クエストを達成し、首都ガンガールドに戻ったミズハとブレア。その足でギルドに向かい、クエスト達成の報告を行なった。


 その後幾つかのクエストを達成させ、次の情報を得るためアーセル王国へと向かっていた。


 ガタン、ガタン。


「お客さん、もうすぐですぜ」


 馬車の御者が後ろに向かって声を掛ける。馬車の中にはミズハとブレアしかいない。ミズハは手に持った刀を整備し、ブレアはカロリーナ著の本を読んでいた。


 現在ミズハが使用している刀は、以前ジョアンから報酬で頂いた紋章武器である。刻まれた紋章は風。以前使用していた刀ほど良い刀ではないが、それでもミズハの能力に耐えうることが出来るほどの頑丈さを持っている。


「久しぶりだな」


「うん……ここから始まった様なもの」


「そうだな…………」


 馬車の外を眺めると、少し先にアーセル王国首都モルゼンの外壁が見える。

 二人は少々感傷に浸っていた。この国は彼女たちとスレッドが出会った場所であり、パーティを組んだ国である。


 どうしても思い出が蘇ってくる。


「…………感傷に浸ってる場合じゃないな」


「…………うん」


 ここに帰ってきたのは、思い出に浸る為じゃない。スレッドを助けるため、希望を胸に戻ってきたのだ。


 二人は迷いのない表情で街を見つめていた。






「少々こちらでお待ちください」


 モルゼンのギルドに到着したミズハとブレアは、受付でリカルドへのアポイトメントを取ろうとした。

 たとえ知り合いとはいえ、リカルドはギルドマスターだ。会いたいからといって簡単に会えるものではない。まずはアポイトメントを取り、許可が下りてからになる。


 だが、二人が受付に到着すると、なぜかアポイトメントが取れていた。奥の部屋へと案内され、目の前には飲み物まで用意されている。


 ガチャ。


 しばらくすると、部屋の扉が開いた。視線を向けると、リカルドが杖をつきながら部屋に入って来るところだった。その後ろには秘書の女性が控えている。


「お待たせしたようじゃのう」


「いえ、大丈夫です」


「そんなに待ってない」


 いつも通りの態度な二人に、リカルドは心の中で安堵する。

 リディア共和国でスレッドが倒れ、二人が落ち込んでいると思っていた。仲間を一時的とはいえ失うことは辛いものだ。リカルド自身も冒険者時代に多くの別れを経験してきた。


 しかし、二人の顔に悲壮感はない。しっかりとした強い意志が見受けられる。


 二人の体面に座り、その後ろに秘書が立っている。


 世間話もそこそこに、本題に入る。


「どうじゃ、進展は?」


「一応、治療が出来そうな人物の目星はつけたが、居場所が分からないのです」


「この人」


 そう言ってブレアが差し出したのは、ジョアンに無理を言って借りてきたカロリーナの書いた本だった。


 リカルドは本を手に取り、懐かしむように表紙を眺めていた。


「…………やはり、ここに辿り着いたか」


「ご存知なのですか?」


 声からはカロリーナが知り合いであるように感じられる。昔を思い出していたリカルドだが、すぐに我を取り戻し、話を進める。


「うむ。フォルス、カロリーナ、そしてわし。若い頃はパーティを組み、よく無茶をしたものじゃ」


 カロリーナはリカルドやフォルスの元仲間で、冒険者として活躍した。強引なカロリーナに熱血のリカルド、二人が暴走していくのを冷静なフォルスがフォローする。全く性格の違う三人だったが、意外と上手くいっていた。


「あやつなら、スレッドを助けることが出来るかもしれないのう」


「それほどの人物なのですか?」


「…………性格は少々アレだが、腕は確かじゃ」


 リカルドにしては珍しく口ごもった。昔の色々を思い出すと、カロリーナで大丈夫かと一瞬だが考えてしまった。直ぐに思いなおし、大丈夫だろうと保証する。


 紋章術師としては最高レベルであり、薬や毒の知識も豊富だ。国が保管している以上の資料なども保有しており、必ず治療法を見つけることが出来るだろう。


「それで、今は何処にいらっしゃるのですか?」


「あやつは自由な奴だからのう…………わしでも今どこにいるのか分からんのじゃ」


 カロリーナはフォルスと同様に騒がしい場所が嫌いで、冒険者を止めた後は人里離れた場所で暮らしている…………らしい。

 らしいというのも、数年前にリカルドがカロリーナから一度連絡を受けて以来消息不明である。


 リカルドでも直ぐに連絡することは難しい。


「そうですか…………」


「残念」


 もしかしたらと少しだけ期待したが、駄目だったようだ。


 手掛かりが途切れてしまい、二人はどうするかと考えていた。そこにリカルドが諦めるのは早いと次の手を考える。


「確かにどこにいるのか分からんが、もしかしたら分かるかもしれん」


「本当ですか!!」


「わしの知り合いに占い師がおってのう。そやつならカロリーナの居場所を占えるかもしれん」


 占いと聞き、二人は少しだけ怪訝な表情を浮かべる。

 別に占いが悪いわけではない。二人も女性であり、占いには興味がある。


 しかし、探し人を探すのに占いというのはどうにも信用できない。


「ん? 何、心配はいらん。探し人ならあやつほど占い師はおらん」


 二人を安心させるように微笑み、リカルドは秘書から一枚の書類を受け取り、そこに自分のサインを書いていく。その書類をミズハに手渡した。


 その書類は、占い師に対するリカルドの紹介状だった。


「これがあれば、優先的に占ってもらえるだろう」


「ありがとうございます」


 ミズハとブレアは嬉しそうに立ち上がり、頭を下げてすぐさま部屋を後にした。そのドタバタにリカルドは苦笑していた。






「…………リカルド様」


「ん? どうした?」


「そんな有名な占い師、いたでしょうか? 私は全く知りませんでしたが」


 リカルドの後ろで控えていた秘書が尋ねる。彼女は秘書としてモルゼンの様々な情報を収集している。

 そんな彼女でも、そんなに実力のある占い師の存在を知らなかった。


「……カロリーナを探すならば、あやつ以上の者はおらんじゃろう。後は、彼女達の運次第じゃな」


 視線を窓の外に向け、いたずらっ子の様な笑みを浮かべる。秘書には何のことか、最後まで分からなかった。



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