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格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第四章「武術大会」編
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第八十五話「謎の石像」

「コールドブレス」


「…………」


「クゥゥン……」


 ブレアが発動させた紋章術がスレッドの身体を凍らせた。氷漬けになったスレッドをミズハとブレアは静かに眺めていた。ライアは悲しそうにスレッドに向かって鳴き声を上げる。


 時の紋章術によって時間を止めたスレッドだが、時間を止めた分だけ危険が多い。敵が近づいても動くことが出来ないのだ。

 それならば身体を氷で覆い、攻撃を届かなくすればいい。


 ブレアが施した氷は下位の紋章術程度ではびくともしない。更に氷の中に紋章を刻み込み、攻撃に反応して反撃の紋章術を放つ。


 スレッドが安置されている場所は、首都から東に数キロ離れた森の奥である。この森は凶暴な魔物がおらず、穏やかな森である。

 リディア共和国では神聖な森とされ、部族の人間以外立ち入ることを禁止している。


 ではなぜ、スレッドがこの森で安置されることを許されているのか。

 その理由は、ある人物の力によるものだった。


「大丈夫、必ず治るさ」


 付き添いのミラが二人を励ますように声を掛けた。






 マドック、そしてラファエーレによって引き起こされた事件は、マドック死亡で幕を閉じた。


 リディア共和国の長老たちはこの事件をもみ消そうとしたが、各国の要人の前で引き起こされた事件を無かったことには出来なかった。

 魔族の力を借りて各国を脅したことは問題であり、後々禍根を残すことになる。


 そこで長老たちは各国に賠償金を支払い、リディア共和国にある幾つかの鉱山を差し出した。


 更に長老たちは自分達の権力を返上し、この事態を解決したとされるミラを暫定的な代表に選出した。


 最初ミラは代表になることを拒んだ。マドックは鎧の男に殺され、エリックを倒したのはスレッドだ。

 ミラは自分が解決したとは微塵も思っていなかった。


 だが、他に候補がいない。主要な人物は今回の責任を取り、中堅が今のリディア共和国を引っ張っていけるとは思えない。何かしらのカリスマが必要なのだ。


 ミラが選ばれたのは、イメージ戦略の一環である。


 こうしてミラが代表に選ばれ、国を救ったスレッドを森に安置することを許可した。






「それで、治療法は見つかったのかい?」


「…………まだ、見付かっていない」


「…………」


 いつもとは違う真面目な表情で尋ねるミラにミズハが答える。何処となく元気がなかった。


 事件の後片付けが終わり、ミズハとブレアはすぐさま治療法を探した。リディア共和国の国立図書館の資料を片っ端から漁り、リカルドを通じてギルドの資料や情報網を使って探したが、結局見付からなかった。


 それでも二人は諦める気はない。必ず助ける。スレッドと約束したのだ。


「…………この大陸のどこかにあらゆる薬を扱う魔女がいると聞いたことがあるよ。もしかしらスレッドを助ける方法を知っているかもしれない」


「本当か!? そいつは何処に!!」


「さあね、そこまでは分からない。だけど、可能性はあるんじゃないかい?」


「ありがとう」


「礼ならいいよ。助けられてのはあたい達だからね」


 嬉しそうにお礼を述べるブレアに手を振りながら応えるミラ。いつもの不敵な表情ではなく、どこか照れ臭そうだ。


 希望の糸が繋がった。とても細い希望だが、それでも前に進むことが出来る。


「ライア、スレッドを頼む」


「ガウ!!」


 ライアの頭を撫でながら、スレッドの守護を頼む。

 穏やかな森とはいえ、魔物は存在する。こちらから手を出さなければ攻撃をしてこないが、何があるか分からない。


 スレッドを魔物から護る者が必要だ。


 氣獣であるライアならば、森で長期間暮らすことが出来る。護衛には最適の存在だ。


 二人は氷の中で眠るスレッドを見上げた。


「行ってくる」


「行ってきます」


 挨拶をして、二人は森を後にした。二人は決して振り返ることが無かった。






「これは…………」


 ミラに後片付けなどを押しつけられたダニエルは、今回の被害について各場所を回っていた。

 本来ならミラが行なう予定だったが、事務仕事は面倒だと仕事を放り出した。


 リディアの代表となり、様々な煩わしさから解放されたかったようだ。

 仕方なくダニエルが仕事を引き継ぎ、国中を見て回る。


 そして、マドックの執務室で隠された扉を発見した。そこには最近動かされた形跡があり、何かがあると探索が開始された。


 奥には様々な罠や仕掛けが存在し、探索は難航を極めた。そして、ダニエル達は最奥へと辿り着いた。


 そこは儀式場だった。奥に祭壇があり、周りには独特な装飾が施されている。

 祭壇には人を象った像の下半身があり、破片が周囲の地面に転がっている。何者かによって破壊されたようだ。


「…………最近破壊されたようです」


「なぜ破壊されたと思う?」


「…………分かりません。何かしらの紋章が刻まれていたことは確かですが、あまりにも細かく砕かれているので、解析するのは難しいです」


「そうか……すまないが、引き続き解析を続けてくれ」


「了解しました」


 部下に解析を任せ、上半身の無い像を見上げる。


「……何か意味があるのか」


 今の時点でその答えを知る者はいなかった。






 旅の支度を終えたミズハとブレアは、ミラに聞いた魔女を探すために一旦バルゼンド帝国で情報収集し、その後アーセル王国に向かうこととなっていた。今もリカルドがギルドを通じて情報を収集している。

 アーセル王国で収集した情報を纏め、方針を決定する予定だ。


 街の入口には、二人の他にミラとダニエルが見送りに来ていた。


「こいつは餞別だ」


 そう言ってミラが差し出したのは、大量の金貨が入った袋だった。餞別というには多すぎるほどの量だ。


「こんなには受け取れない」


「大丈夫。これにはスレッドが優勝した分の賞金も含まれている。これでも少ないくらいさ」


「本来ならこれの二倍は渡すはずでしたが、これからのこの国のことを考えるとこれが限界なのです。申し訳ありません」


「これで十分」


 申し訳なさそうに謝るダニエルにブレアは首を横に振る。

 旅には確かにお金が必要だが、それでもこれだけ貰えれば十分だ。それにミラ達の気持ちが嬉しかった。


「スレッドのことは任しときな。あの場所には誰も入らせないから」


「頼んだ」


 お互いに握手を交わし、四人は笑顔で別れた。そしてミズハとブレアはバルゼンド帝国に向けて出発した。


 二人は真っ直ぐ前を見据え、進んでいく。決意を持って進む二人の姿はとても綺麗に見えた。


「…………」


 そんな二人の後ろ姿を見つめながら、ミラはこれから先の、それほど遠くない未来のことを考えていた。

 その考えがこの大陸を大きく動かしていくとは誰も想像していなかった。



第五章へ続く……



一応改訂作業が終了しました。


第一章のみ数話増やし、他はそのままの流れで訂正しました。

読み返して気付いた点を直し、書き忘れを増やしました。

特にライアの能力追加は賛否両論あると思います。

ただ、書いていて変身できる動物がなかなか思いついていません。

そこで、もしこういうのがいいのではというのがありましたら、

ぜひご連絡ください。


そして、前回読んでいて、第四章で「ヨルゲンはどこに行ったの?」

と思った方は多いと思います。


……えー、実は読み返して、作者自身がヨルゲンの存在をすっかり忘れておりました(-_-;) 申し訳ございません!!


とりあえず気付いた点を修正しましたが、他にもまだまだミスはあると思います。

気付いたら訂正しますし、他の章でも増やしたい話数もありますが、

これからは第五章を書いていきたいと思います

……まだ構成が出来ていませんが。

ついでに他作品の続きが思い浮かんでいますが。


タイトルは後ほど入れていきます。


とにかくお待たせしました。

これからも頑張りますので、応援よろしくお願いいたします<(_ _)>

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