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格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第一章「アーセル王国」編
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第四話「ギルド」


 門をくぐり、街中を歩いていく二人と一匹。


 街の真ん中には一本道があり、城まで繋がっている。道の両脇には様々な店が立ち並び、大通りの真ん中で交わる様に道がある。その先には住宅や酒場などがあり、表では出来ないような商売も行なわれていたりする。


 辺りをキョロキョロと見渡しているスレッド。その横でゆったりと歩いているライア。周りの人々は田舎者の様なスレッドと魔物であるライアを遠目から眺めている。

 その姿にミズハは苦笑しながら提案する。


「まずはギルドに行くべきだろう」


「ギルド?」


「ギルドとは、冒険者を統括している組織で、冒険者としての登録やクエストの受注などの様々なサポートを受けられるんだ」


 街のあちこちを説明しながら、ギルドへ向かっていった。






 アーセル王国には国土の中心に首都があり、その周りに七つの都市が配置されている。各都市にギルドの支部があり、首都にあるギルドが七都市のギルドを統括している。


 首都モルゼンのギルドは、かなりの大きさを誇っていた。レンガ造りで、そこに紋章術によって強度を高めている。多少の攻撃程度では傷一つ付けることが出来ない。

 以前冒険者同士の喧嘩が起った際、ボロボロに破壊された。その後も喧嘩は絶えず、その度に建物のどこかが必ず破壊されてしまったのだ。


 それを教訓に現在のギルドが建てられている。


「……人がいっぱいだ」


 建物内に入ると、正面にカウンターが並んでいる。壁沿いには掲示板があり、何枚もの張り紙があり、様々な種族がそれを眺めていた。

 中にはスレッドと同様に魔物を連れている者もいる。彼らにとって魔物は相棒であり、共にクエストをこなす仲間である。ギルド側もそれを理解して、あまりに大きすぎない魔物であれば建物内に入れることを許可している。


「ギルドには種族関係なく冒険者として登録できるんだ。まあスレッドにしてみれば、これだけの人を見るのも珍しいだろう?」


「ああ、街に入ってから興奮しまくりだ」


 ギルドでも辺りを見渡し、注目を集めている。中にはクスクス笑っている者もいた。スレッドの行動は明らかに田舎者の動きだった。


「こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか?」


「私は依頼品の納品で、彼は冒険者としての登録だ」


 入口近くで立ち止まっていると、ギルド職員の女性が近寄ってきて、笑顔で要件を尋ねてきた。


 本来ギルド職員が全員に毎回尋ねるわけがない。多い時には百人を超える冒険者がいる場合もあり、その全てに対応することは珍しい。

 なら何故彼らには話しかけたのか。

 それは、スレッドが田舎者丸出しで見渡していたからだ。あまりにギルド自体が分かっていないようだったので、話しかけたのだ。


 ミズハは懐から銀色のカードを取り出し、職員に提示する。


「ミズハ・カグラ様ですね。納品でしたら5番のカウンターとなります。そちらの方は登録ですので3番のカウンターとなります。ご案内いたしますね」


「ありがとう。スレッド、終わったら待合で合流しよう」


「ああ、では行ってくる」


 ミズハは一人で5番のカウンターに向かい、スレッドとライアは職員に案内されながら登録をしに行った。


 ちなみに、ライアはスレッドの指示に吠えることなく大人しくしていた。ギルドとはいえ、あまり騒がしくするのは問題だとミズハに忠告されたためだ。






 案内されたカウンターには金髪の美人が笑顔で迎えてくれた。


 カウンターの前の椅子に座り、カウンターを挟んで向かい合う。椅子の横ではライアが床に伏せている。終わるのを待っているようだ。


「登録を担当させていただきます、シェリーです」


 ほんわかとした声と笑顔はスレッドもついつい見惚れてしまった。だが、すぐに我を取り戻し、真顔で説明を受ける。


「では、こちらに必要事項をご記入ください。読み上げと代筆は必要ですか?」


「大丈夫」


 渡された紙に名前や出身を記入していく。


 冒険者によっては読み書きが出来ない者もいる。学び舎に通わず、農民から冒険者になった者などはそれに当たる。

 そういった者の為にギルドでは書類の読み上げと代筆を行なっている。誰もが等しく冒険者になれるよう、そういったサービスを怠っていない。


 スレッドは、フォルスに一般的な常識と簡単な読み書きを習っていた。学ぶことと経験することでの違いによる戸惑いはあるものの、予備知識があった分それなりに早く順応した。


 しばらく記入していると、再び分からない項目が出てきた。


「……この移動方法とは?」


「それはですね、クエストなどへの移動方法を書いていただいております。魔物使いや移動に魔物を使用する方などは魔物を郊外に預けますので、魔物の把握も兼ねてご記入いただいております」


「なるほど」


 説明を聞いて、暫く考える。

 スレッドの移動は、基本徒歩である。しかも、空を歩くことが多い。

 ライアを連れているが、魔物使いというわけではない。ついでに言えば、ライアは乗ることが出来るほど大型ではない。変化させられれば乗ることが可能かもしれないが、今のところその段階まで達していない。

 だが、空を歩くなど書いても仕方がない。


 移動方法は『徒歩』と記入する。


「これでいいですか?」


「はい、ありがとうございます」


 紙とペンを受け取り、シェリーは次の書類と銀色のカードを取り出した。カードをスレッドの正面に置き、次の作業に移る。


「では次に、こちらのカードに指を付けてください」


 言われたとおりに人差し指を押し付けた。

 すると、カードに文字が浮き上がってきた。そこにはスレッドの名前や職業、ギルドランク、ライアの名前なども記されている。


「こちらがギルドカードです。カードは冒険者としての身分証明となります。都市に入る際などに提示していただければ、入国料が無料になります。カードを紛失された場合、再発行には手数料が掛かりますのでご注意ください。また、この後幾つかの紋章処理を施しますので、受け渡しは明日になります」


 ギルドカードは特殊な素材で作られており、個人を登録することで自身の成長に合わせて情報が変化する仕組みになっている。

 しかし、特殊な素材故に強度が弱く、紋章をカードに刻むことで剣でも切ることが出来なくなる。


 シェリーはカードを奥の職員に渡し、スレッドに向き合った。


「それではギルドランクやクエストに関して説明させていただきます。スレッド様の現在のランクはFとなります。これはスレッド様だけでなく、登録された方全員がFから始めていただいております。そこからE・D・C・B・A・S・SSとなっています。ランクを上げるにはクエストをこなしていただき、そこで獲得できるポイントをそれぞれのランクで決まっている一定数集めていただきます。その後ギルドで申請することでランクを上げることが出来ます」


「ランクを上げる際の審査とかは無いのか?」


「ランクCまではございませんが、それより上に上がる際に実力試験がございます。B以上は実力がない者ではこなせないほどの難易度になりますので、ギルドの信頼問題にも関わってきます。その為ギルドで審査させていただいています」


「ふむふむ」


 説明を頭の中で反芻する。シェリーは書類を指さしながら説明してくれるので分かりやすい。


 ある程度間をおいて、説明が開始する。


「クエストにもランクがございます。基本的にギルドランクと同ランクまでのクエストまでしか受けることが出来ません。クエストを成功させますと報酬とポイントが与えられます。そちらについては受注する際に職員より説明があると思います。また、他の方とパーティを組む場合、パーティ内で一番低いランクの一つ上まで受注できます。その場合、クエストランクよりギルドランクが下の方はポイントが半分になります。ご注意ください」


 長い説明を終え、一息つくシェリー。疲れているようだが、笑顔だけは絶やさない。


 だが、次の瞬間笑顔が真顔へ変わる。


「最後に。冒険者という仕事はとても危険なものです。クエスト達成のためとはいえ、無理はしないでください、ね♪」


「あ、ああ」


「ワフゥ……」


 真顔から更に一転、満面の笑みで忠告される。花のような笑顔にスレッドは顔の筋肉が弛んでしまう。

 ミズハとの出会いのクールさは一切感じられなかった。スレッドも男であるということだ。


 そんなご主人にライアは呆れたような鳴き声が自然と出ていた。


「それでは、貴方に戦神アルサムの加護がありますように」


 そう言って手を振るシェリーに見惚れながら、ミズハが待つ待合に向かった。やれやれといった感じで、ライアは首を振りながらスレッドに着いていった。



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