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格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第一章「アーセル王国」編
22/202

第二十話「戦いの後」

 魔物との戦いが終わった。


 キングラードルが倒れたことで、負けを悟ったのか、レッドラードルは自分達の領域に帰っていった。


 外壁の外に転がっている死体は騎士団とギルドで回収された。特にキングラードルに関しては個体数が少なく、情報が欲しい両者がどう取り扱うかを長時間話し合っていた。

 またキングラードル討伐の報酬として、キングラードルの身体の一部が素材としてスレッド達に贈られることとなった。


 街の外の修繕も進み、街は徐々に活気を取り戻していった。






「呼び出してすまんのう」


「いえ、大丈夫です」


 戦いが終わった数日後、スレッドはミズハと共にギルドに呼ばれていた。


 今回戦いに参戦した冒険者は、活躍に応じて報酬が与えられることとなった。あの混乱の中、正確な戦果を把握することは難しいが、ギルドの職員は徹夜で働きっぱなしだ。


 そんな事務処理が終わりに近づき、これから最大の功労者達に話をすることとなった。


 ギルドに到着したスレッドとミズハは奥の部屋に案内され、一人ずつリカルドと話をする。


 ちなみ、ライアは宿屋で眠っていた。力を使い過ぎて、少しでも回復するためにエコ活動に勤しんでいた。


「今回戦いに参加した冒険者に報酬を与えているのじゃが、お前さん達に対する報酬に関しては難しくてのう」


 リカルドの説明によると、外壁の外で戦っていた六人は他の冒険者達とは討伐数が大幅に違い、報酬をどうするべきか悩んでいた。

 既にスレッド達以外の三人への報酬は支払い終わっていた。彼らは今回のことは人助けとし、多くの報酬を受け取らなかった。その代わり、キングラードルの爪二個を報酬として受け取った。


 その後、他の冒険者への報奨金や街の復興などに資金を使ったため、討伐分の報酬が直ぐには支払えない。支払えても、額が少なくなってしまう。


「お金の代わりにランクの加算ポイントで補いたいのじゃが、構わんじゃろうか? 残りのお金は用意でき次第支払おう」


「……まあ、構いませんよ」


 報奨金の半分をポイントで補う形となった。これでスレッドのギルドランクは大幅に上昇することになった。


「キングラードルの報奨金ともなると莫大過ぎてのう……所で一つ聞きたい。お前さん、フォルス・T・バーストバインドという人物を知っておるかのう?」


 リカルドが述べた名前に反応する。


「……俺の育ての親です」


 嘘をついて誤魔化すことも出来たが、何かに感づいているギルドマスターに嘘をつくのも戸惑われた。


 スレッドの言葉を聞いて、一瞬驚くものの、直ぐに笑みをこぼした。


「やはりか。そんな気はしておったが、その通りだったとはのう……道理でお前さんの纏っている雰囲気に懐かしさを感じたわけじゃ」


「爺さんを知っているんですか?」


 しみじみと懐かしむように語るリカルド。


「古い友人じゃよ。お互い冒険者だった頃、よく一緒に暴れ回ったものじゃ」


「爺さんはそれなりに有名だったと言ってましたが……」


「それなりに、か。あやつらしいわ。確かに有名じゃ。合体紋章ユニオンスペルを提唱した紋章術師じゃったからのう」


 リカルドの語る真実に驚きを隠せない。


 冗談が好きで、スレッドに悪戯すること数えきれず。はっちゃけた爺さんとしか見えなかった。


「そんなにすごい爺さんには見えなかったけどなー」


「まあ実力はさほどなかったが、あやつはかなりの知識を持っておったからのう」


 フォルスは研究者の間では有名だが、冒険者の間ではあまり知られていない。

 紋章術だけでなく、医療など様々な分野で知識の深かったフォルス。その知識を冒険者として活かし、戦ってきた。


 しかし、本人の実力はそれほどでもなかった。ランクもAが最高であり、それ故冒険者の間では無名だった。


「爺さんには生きる術と戦い方を教わりました」


「なるほど。しかし、お前さんが合体紋章を完成させていたとはのう」


「!? 知っていたんですか?」


「はっはっは、わしはギルドマスターじゃ。何でもお見通しじゃわい」


 明言はしなかったものの、リカルドはスレッドが合体紋章を使えることを知っていた。合体紋章を使えるならば、キングラードルを倒せたのも頷ける。

 しかし、リカルドは最後までどうしてスレッドが合体紋章を使えるのかを知っているかを教えなかった。


「それでフォルスは元気か?」


「……先日亡くなりました」


「そうか……あやつは逝ったか」


 フォルスが死んだことを知り、リカルドは驚きと悲しみを露わにする。だが、直ぐに穏やかな表情で友人の死を悼んだ。

 リカルドの脳裏には、若き日の思い出の日々が思い起こされていた。






 暫くして、次の話へと移った。


「本来ならばキングラードルを倒したならば、ランクSSでも構わないのじゃが、さすがにDからSSまで上げるわけにはいかん」


 戦いの功績でランクを上げた者は数多くいるが、最下位から最上位まで一気に上がった者はいない。

 前例がないからというわけではないが、あまりにも無理があり過ぎるのだ。


「そこまで上げなくてもいいです。あまり目立ちたくないですからね」


「ランクはBになる。手続きは一階の受付で名前を告げ、これを見せれば大丈夫じゃ」


 リカルドは己のサインが入った書類を渡した。書類には、スレッドを特例でランクBに昇格させることが記載されている。


 スレッドとしてはランクが上がり過ぎず、あまり目立ち過ぎないのは有り難かった。


 今回のことで、スレッドの名前は有名になった。さほど多くの者に姿を見られたわけではないが、それでも名前は知られてしまった。

 あまりにも特例過ぎるのは、何処かで必ず恨みを買ってしまう。


 ランクに関する話が終わり、スレッドはリカルドに願いを申し出る。


「お願いがあるのですが」


「ん、なんじゃ? わしに出来ることなら大抵のことは叶えてやるぞ」


「俺に関することは内緒にしてもらえますか? 特に爺さんや合体紋章については人には知られたくないので」


 リカルドには知られてしまったが、出来るだけ隠しておきたい。

 フォルスに隠すように言われたこともあるが、リカルドの話を聞き、多少は有名であったことを自覚し、知られると面倒だと言う感情が出てきた。


 襲いかかってくることはないだろうが、強引に話を聞きに来たり、合体紋章の教えを請いに来るものがいるかもしれない。


「ふむ、確かにその方が良いじゃろうな。知れば、利用しようとする者も現れるじゃろう。分かった。それに関してはこちらで情報は操作しておこう」


「ありがとうございます」


 情報操作の確約を貰い、頭を下げる。


 その後は他愛無い昔話や冒険者としての心得を聞き、会談は終了した。実に有意義な時間だった。


 次にミズハの会談となり、ミズハもランクBへと昇格することとなった(リカルドはミズハにランクAへの昇格を提示したが、ミズハは自身が今回戦果を上げていないことなどを考え、自分からランクBを所望した)


 受付でランク昇格の手続きを行ない、二人は宿へと戻ることとした。



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